毎日キッチンに立つ人にとって、便利で使いやすい調理道具は頼もしい相棒。暮らし系YouTuber・奥平眞司さんも調理道具には並々ならぬこだわりを抱いているが、その視点は決して使い勝手一辺倒ではない。美しさと機能性を兼ねそなえ、長く大切に使えるモノを愛する奥平さんが、いまもっともお気に入りのアイテムはなんだろうか。
厳選した3品の魅力とともに、日々の暮らしを楽しむ様子もつづってもらった。
心地よい「暮らしの音」を奏でるまな板
選び抜いた逸品を大切に使う。それが僕のポリシーです。キッチンアイテムも一つひとつ丁寧に吟味して購入したものばかりですが、なかでもお気に入りのひとつがヒノキのまな板です。台風の多い環境で育った、高知・四万十(しまんと)産の天然ヒノキが素材だから水切れがバツグン。
正確に言うと油脂分が豊富で水をよく弾くので、とても乾かしやすく清潔に保てます。ヒノキ特有の抗菌・抗カビ作用により長持ちするのも特長です。僕的には吊り下げやすい持ち手がついているのも、置き場所を選ばない点でツボでした。
まな板は見た目の優しさからもずっと木製にこだわっていて、アウトドアでメインに使うのもオリーブの木が素材です。こちらは堅く薄く、包丁のトントンという音も硬質な感じですが、ヒノキのほうはやわらかく響きます。朝のお味噌に入れるネギを無心にリズミカルに刻んでいると、まるで楽器を演奏しているよう、と言ったら大げさかな(笑)。
普段あまり音楽を聴かないのは、まな板と包丁が奏でる音やコーヒー豆を挽く音、炭酸がシュワシュワ泡立つ音といった、心地よい「暮らしの音」に耳を傾けていたいからです。
ヒノキの香りに陶然となる、天然の保温ジャー
曲げわっぱのお弁当箱も、「本当に買って良かった」と思える品のひとつです。曲げわっぱとは薄く切った一枚板を円形や楕円形に曲げて底をつけた木製の容器のことで、熟練した職人の技術が施された伝統工芸品です。大量生産ができないのでお値段はそれなりに高いのですが、きちんとお手入れすれば一生モノ。何回もお弁当箱を買い換えるよりもおトクだと思います。
いつものように時間をかけて調べたうえで、僕はこれをお弁当箱だけでなく、「お櫃(ひつ)」としても使おうと購入しました。曲げわっぱには天然木の力による優れた保温・吸湿機能があるからで、一人暮らしの保温ジャーとしてもちょうどよいサイズです。夜に土鍋ご飯を炊いて余ると、半分は冷凍し、半分は曲げわっばに。翌朝にいただくときはさすがに冷えていますが、ヒノキ材がほどよく水分を調節してくれるのでカチカチにはなりません。
何よりヒノキの良い香りがご飯にしっかりとついて、朝からうっとり(笑)。ふっくら感もそのままで、ひょっとしたら炊きたてより美味しいかも。温め直しても美味ですが、ひんやりご飯に納豆をかけて食べるのがマイブームです。
もちろんお弁当箱としても出番が多く、気が向けば自宅でとる昼食も詰めたりします。晴れた空を眺めながらお弁当をいただくと、家にいながら気分はすっかりアウトドア。リフレッシュ感の高いランチタイムになります。愛らしいフォルムも和むので、キッチンの目につく場所に置いてインテリアとしても楽しんでいます。
マドラーの用途を超え、お味噌汁に泡立てに
今年購入したキッチンアイテムの中で、出会ったときに最も衝撃を受けたのが「みそマドラー」です。通販サイトであまりに評価が高かったことから検索したのですが、マドラーというには斬新な形状に「なんだこれは?」と驚きました。僕には珍しく、ほとんど一目惚れのカタチで購入を決めたのは、デザイン学校時代に教わり、今も自分の軸とする「概念砕き」に通じるモノづくり発想に共感したのかもしれません。
使ってみるとまあ便利(笑)。先端の丸い部分をお味噌に刺して、くるっと回すだけで正確に同じ分量がとれます。この計量部分は両端に大小あり、大が大さじ約2杯、小が大さじ1の量です。計りとったら、そのまま鍋の中に入れて振り溶かすだけ。1人分のお味噌汁は少量だけに塩梅(あんばい)が不安定になりがちですが、これだといつもの味が手軽につくれます。和の朝食には欠かせないお味噌汁。愛知出身の僕はもちろん赤味噌派です。
計量部は泡立て器のような形状なので、卵液を混ぜたりドレッシングを攪拌するのにも使っています。箸で混ぜるよりしっかり溶ける気がしますね。ほかの料理をつくるときにも使えないか、いろいろ試しているところです。
我が家にお迎えしたキッチンアイテムは、どれも料理づくりのレギュラーメンバー。「これがいい」と選んだモノばかりだから、使えば使うほど愛着が増しています。