暮らしを楽しむコツのひとつは、あえて料理に手間をかけるなど、「ちょっとした不便さ」を愛おしむこと。そう語る暮らし系YouTuber・奥平眞司さんにとって、火を起こすことから始まり、寝床づくりに料理と、何もかも一人でおこなうソロキャンプはこのうえなく楽しいレジャーだという。
「贅沢なひとり時間」を満喫するのにおススメのキャンプ道具をはじめ、一人キャンプの魅力やこだわりを本人がつづった。
火打石で焚き火を起こし、芳醇なコーヒーを味わう
僕はキャンプが大好きです。誰かと一緒に行くのももちろん楽しいですが、一人で過ごすキャンプもまた格別です。自転車に荷物を積んで気の向くまま、最近では山梨の道志村、東京なら奥多摩のキャンプ場によく行っています。
着いてまずすることは焚き火の火起こし。麻の紐をほどいてフワフワにすると、そこに火打石で打ちつけた火花を落とすという、原始的な起こし方です。あえて火打石にこだわったのは、手間がかかるほど面白いからです。火打石はネット通販で購入できますが、もちろん着火剤でも全然構いません。火が起きると枯葉や小枝を見つけて投げ入れる手間も楽しんでいます。赤々と燃え上がる瞬間は、何度見ても美しいですね。
ひと息ついたらさっそくコーヒータイム。僕にとって美味しいコーヒーは、キャンプの楽しみの1つとして欠かせないものです。重宝しているのは豆を挽くミル。手挽きですが挽き具合が細かく調整でき、ガツンと濃い味にしたいときは極細、あっさり風味なら粗挽きと、気分によって使いわけています。谷川のせせらぎや風の音をぼんやり聴きながら、淹れたてのコーヒーをすするのは最高の贅沢。シンプルで無骨な風合いも気に入っています。
キャンプを満喫するためのマストアイテム
燃料を使う料理には、焚き火のほかにガスも使用。愛用しているのはミニサイズのカセットコンロです。かなりコンパクトなのでバックの中でかさばることもなく、手軽さから毎回の必携品になりました。焚き火では豪快に直火の焼き肉や、目玉焼きなどのフライパン料理、コンロでは火の調整が難しいカレーやシチューといった煮込み料理をつくることが多いですね。あれこれと工夫することが楽しく、毎回違うメニューにチャレンジしているので、火加減が自在なカセットコンロは頼もしい相棒です。
木の手触りがやさしいキャンプ用テーブルは、広げると一人には充分な大きさ。4人くらいまでゆったりと食事ができます。使い勝手のよさに「キャンプだけに使うのはもったいない」と思い、家でもお客さまをおもてなしする時に活躍しています。木材なので色合いが深みを増すなど、経年変化も愉しめます。
テントの明かり取りにはLEDランタンを使っています。手のひらサイズと小型ながらかなり光量が強く、大きめのテントでも隅々まで照らし出してくれます。また、夜の調理は手元が暗いことが悩みでしたが、このランタンを近くに置くとくっきり見えるので助かっています。吊しやすい輪っかがあり、スマホ充電もできるので便利。明かりの色も三種類に変えられるので、夜は温かみのある色にして、虫の音を聴きながら更けゆく夜を楽しんでいます。
日常使いの品をキャンプに共用する面白さ
コーヒーミルにコンロ、テーブルにランタン。僕のこだわりキャンプアイテムに共通する点は、実はどれも、日常的に家でも使っているということです。例えば、動画の撮影に照明はとても重要ですが、このランタンには機材として充分なポテンシャルがあります。ベッドサイドの明かりとしても最適です。コンロは鍋などの卓上調理に、テーブルはおもてなしのときに。もちろんミルも普段使いしています。
ほかにはアウトドア用の燻製機を共用、またテーブル代わりの収納ボックスも中身を空にしてキャンプ場に持っていきます。なぜだか「日常のものをキャンプ場で使う」ことが好きなんですね。効率的にモノを使えるという利点もありますが、キャンプという非日常の場で、いつものお気に入りに囲まれることに面白さを感じているのかもません。
一人キャンプの魅力は自分の思うがまま、贅沢に時間を使えることです。基本的に携帯は見ず、焚き火をじっと眺めたり、周囲を探検して小川を見つけたりしていると、いつのまにか仕事のこともすっかり忘れてしまいます。日常をリセットしてパワーをチャージする。そんな一人キャンプの時間が、僕にとってのご褒美です。