毎日の食事は栄養の面でも家計の面でもなるべく自炊を心掛けたいもの。暮らし系YouTuber、奥平眞司さんがつくる、手間を惜しまず丹精を込めた料理をマネするのはハードルが高そうだが、そのこだわりから料理のヒントがきっと得られるはず。食材選びからおもてなし料理のコツ、料理を輝かせる器づくりまで、さまざまな食の楽しみ方を本人が語る。
食材は地産地消で。プロのおすすめを調達
毎日の暮らしの中で特に大切なのは食生活です。僕が食べる物の大切さを意識したのは中学生の頃。ひどい肌荒れとニキビに悩まされ、外に出るのも嫌だったことから、なんとか治したいと思い、試行錯誤しました。塗り薬やスキンケアはあまり効果がなく、一番効いたのがバランスのよい食事です。野菜をたっぷり、肉や魚もしっかり。一人暮らしを始めてからはできるだけ自炊を心がけ、苦手だった料理も少しずつ好きになっていきました。
食材の多くは基本的に自宅近くで調達しています。野菜はオーガニックにこだわった時期もありましたが、専門店が少なく、場所も遠い。いつの間にか探すことがストレスになり、そうなると料理も楽しくありません。今は近所の個人商店や地元野菜を扱う「地産マルシェ」などが行きつけです。こうしたお店の良さは、食材の新鮮さはもちろん、店員さんと会話ができること。珍しい野菜の調理法を聞いたり、旬のおススメを教えてもらったり。プロのアドバイスはとても参考になります。このごろは赤紫蘇を大量に買って、オリジナルの赤紫蘇ジュースをたくさん仕込んでいます。
調理のときに意識しているのは、とにかく丁寧につくること。僕はけっこう焦りがちなのですが、慌ててつくったものはやっぱり美味しくないと失敗を重ねてわかりました。ゆっくりと愛情を込めて食材に向きあう時間が、より味わいを深くしてくれます。
ゲストの顔を思い浮かべながら料理する、至福の時間
僕の部屋には家族や友人など、ちょくちょく人が訪れます。外に食事に行くことはめったになく、たいていは手料理でおもてなしします。自分のためにつくる料理と、人にふるまう料理は少し違います。いくら得意な料理でも、お客さまが嫌いなものや食べられないものは出せません。そのために事前にLINEなどで連絡をとり、食事の嗜好をリサーチしています。また、「自分がこうされたら嬉しい」ということをできるだけ考えるようにしています。
1人で料理をして食べることももちろん好きですが、だれかのために料理をする楽しさにはかないません。「これを出したら喜んでくれるかな」とその人の顔を思い浮べ、たとえばケーキの材料を揃えるためにいくつものお店をハシゴする。そんなプロセスも含めておもてなしを楽しんでいます。「もっと喜んでほしい」と思うにつれ、料理の腕もメキメキと上がりました。
吟味して購入した高機能オーブンで、お店に負けない自家製ピザをつくる。時にはパスタを粉からこね、パスタマシーンで麺を完成させる。こだわり抜いて選んだ道具は、家族や友人と楽しい時間を過ごすのにも活躍しています。美味しいものを食べながらゆっくり会話を楽しむのが、僕にとって至福の時間です。
食から器に世界が広がる。共通点は無心に楽しむこと
最近はシューマイなどの蒸し料理に興味があり、どんな蒸籠(セイロ)がいいか検討中です。また、丁寧に料理をつくるとそれを載せるお皿にもこだわりたくなって、自分でもつくるようになりました。週2回、陶芸教室に通い、今では食器のほとんどは自作です。陶芸も料理と同じように一つ完成させるたびに、「次はこんなお皿に挑戦したい」という欲が湧き、今は自分用のご飯茶碗をグレードアップすべく奮闘中です。
陶芸の良いところは、ひたすらろくろに集中することで無心になれるところ。終わると頭がリセットされて、すっきりする感覚が爽快です。それは料理も同じで、目の前の作業に専念しなければ、満足のいくものはできません。そもそも楽しむことととは、無心に熱中することではないでしょうか。料理も趣味の陶芸もそうですが、僕にとっては動画編集などの作業も、仕事というより夢中に楽しめるものです。楽しんでこだわり抜くことが、クオリティの高さにもつながると信じています。
「楽しく、無理せず、必要以上にがんばり過ぎない」が僕のモットー。自炊だって、つくりたくない日は外食にも行くし、バナナ1本で済ませることもあります。台所を片付けずに寝てしまう日もあります。できるだけストレスを溜めずに日々を送ることが、快適な暮らしを続けるコツだと思います。