前回は、ビジネスシーンにおける英語力向上の必要性についてお話しました。私が仕事でお会いする人の中には、TOEIC 900点を取得していてもなお、英語力に伸び悩んでいる方が多くいらっしゃいます。「会話ができないのだ」と思って英会話スクールに通っている方もいるでしょう。
今回は、英会話スクールに通っているのに英語が上達しない理由についてお話していきたいと思います。これから英会話スクールに通おうとしている方にも是非読んで頂きたいと思います。
英会話スクールは「練習試合」~基礎練をせずに試合に臨む社会人~
英会話はスポーツと同じです。野球がうまくなりたい人が、週に1回の練習試合だけでうまくなるでしょうか? せいぜい現状のレベルを維持できるかどうかといったところでしょう。
野球選手は日々練習をしています。時にはバッティング練習をし、時には守備練習をします。その上で練習試合をして試合感を養い、さらなる課題を見つけます。そしてまた練習する。この繰り返しで野球がうまくなっていくのです。
英会話も基本的には同じだと考えます。英会話スクールはいわば、練習試合です。週に1回、英語で会話するという練習試合を行っているのです。第二言語習得論という研究分野がありますが、その分野では「英語力を向上させるためには大量のインプットと少量のアウトプットが重要」ということが常識になりつつあります。
週1回の練習試合に臨むためには、日々自分でトレーニングすることが極めて大事なのです。英会話スクールの先生にどういう生徒が成長するのですか? と聞くと、皆同じことを言います。「レッスンだけではなくて家で自習している人」です。基礎練習を行わずして練習試合に臨んでも、上達は見込めません。
どんなに忙しい人でも、好きな子に会うためだったら時間を作れる
スポーツにおける基礎練習は、英語学習でいうとレッスン以外でも自主的に学習することを意味しますが、そのためにはレッスン以外で時間を作る必要があります。
とはいえ、日々忙しい中で時間を作るのは難しいと感じている方がほとんどかと思います。「ただでさえ仕事で疲れているのに仕事終わりに英語の自習なんてできない」「仕事が忙しいので時間を作れても電車に乗っている時間だけ」弊社にカウンセリングにいらっしゃるお客様も、最初はみなさんこのようにおっしゃいます。
本当にそうでしょうか? どんなに忙しい人でも、好きな人と会うためだったらなんとしてでも時間を作りますよね? 英語学習も同じように考えてみてください。時間がないのであれば、必死で作ってみてください。1日1~2時間程度であれば、誰もが時間を作ることが出来るはずです。
「圧倒的当事者意識」を持つ者が、ビジネスも英語も制す
「高いお金を払って英会話スクールに通っているのだから、きっと先生が英語力を上げてくれる」「週に1回通っていれば徐々に英語力は上がってくるはず」。英会話スクールに通っている多くの人は、無意識のうちにこんなことを思っていませんか?
マッキンゼーに入社した当時、英語のテレカンで議事録すら取れなかった私は、なんとかしなければとマンツーマンの英会話レッスンを受講しました。マンツーマンレッスンでは、英語で論理的に話す練習やコンサルタントとして使う可能性が高いフレーズを教わるなど、ビジネスに特化した形のレッスンをしてもらっていました。
半年ほどマンツーマンのレッスンを受けましたが、正直、英語力が伸びた実感は全くありませんでした。それもそのはずです。「週に1回、それもビジネスの実践の場で活用できる英会話を学んでいるのだからそのうち上達するはず」私自身が他力本願でした。こんな考えで上達するのであれば、英会話に悩まされる人はいないでしょう。私は、英語が分からなければ仕事の成果が出せないというプレッシャーの下に置かれたことで、他力本願だった自分自身に気付き、やっと当事者意識を持って英語学習に臨むことができるようになったと思います。
「圧倒的当事者意識」これは、今の会社を一緒に立ちあげた副社長の山碕の出身会社リクルートでよく使われる用語だそうです。「圧倒的当事者意識」とは、「仕事のスタンスとして、他責にせず、当事者として取り組む」という考え方だそうですが、英語学習もまさに同じことが言えます。せっかく英会話スクールに通うのであれば、「圧倒的な当事者意識」を持って日々の"基礎練習"をやり遂げてみてください。
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次回は具体的に英語力を向上させるための方法をお伝えしたいと思います。
執筆者プロフィール:岡田 祥吾(おかだ しょうご)
株式会社GRIT 代表取締役社長
大阪大学工学部を卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案等、数々のプロジェクトに従事。同社を退社後、株式会社GRITを創業。2カ月でビジネス英語を身につけるコーチングプログラム「TOKKUN ENGLISH」を運営。