入社したばかりの新入社員を指導するとき、「指導に失敗して辞めてしまったらどうしよう……」と心配になる人もいるのではないでしょうか。マイナビで「OJTトレーナー研修」を開発・販売している同社・教育研修事業部の新山さんに、新入社員を指導する際に陥りがちな失敗や、その対策について教えていただきました。
他の新入社員と比べる
新入社員が失敗をしたとき、「○○さんはできてたよ」と他の新入社員と比べるような注意をしてはいけません。同期と比べることは「他人より劣っている」と言っているようなものですので、新入社員の自尊心を傷つけてしまいます。
新山さんによれば、「比べるべきは『本人の目標とする姿』であり、他人ではありません」とのこと。他人ではなく、本人の目標と比べて達成度を伝えるようにしましょう。また、とくに最初のうちは目標から遠いのが普通ですから、比べすぎず「前回より早くできた」「プロセスを改善できた」など、過去と比べて褒めることも重要です。そうすれば、新入社員の自信を育て、積極性の向上にもつなげることができます。
言うことに一貫性がない
「当たり前のことを聞くな」と指導しておきながら、新入社員が失敗すると「どうして先に聞かなかったんだ」と言うなど、指導に一貫性がないと、新入社員が身動きを取れなくなってしまいます。そうなると「どう動いても怒られるのでは」と委縮してしまい、積極性を奪う結果にもなりかねません。
指導計画を立てるときから、目指すべき姿としての育成目標をしっかり立て、そこからぶれないように指導していくことが大切です。また、ぶれない指導計画をつくるためには、「会社の経営理念や部・課の行動指針、目指すべき姿の明確化」に注目して目標を立てるとよいでしょう。そしてその目標を常に意識し、こまめに立ち戻るようにしましょう。
頭ごなしに怒る
新入社員の行動には必ず理由があります。結果だけ見て怒るのではなく、その行動の理由を理解するところから根気強く行い、寄り添いながら指導しましょう。結果ではなく、行動の理由について改善すべき点をフラットに指摘すれば、新入社員も考え方を理解することができ、素直に受け取りやすくなります。
また、行動の理由を理解する際に心がけるのとよいのが「傾聴」です。「傾聴」とは「相手の気持ちをきちんと受け取り、心を込めて相手の状態まで含め真剣に聴くこと」です。
傾聴のコツとしては
- あいづち(言葉・うなずきなど)
- 事実を返す(事実を受け止めて言葉で返す)
- 感情を返す(気持ちを受け止めて言葉で返す)
- 要約する(要約して自分の言葉で返す)
の4つがあります。
これらを意識すると、きちんと話を聞くことができ、新入社員も「自分のことを理解しようとしてくれている」と安心してくれます。頭ごなしに怒るのではなく、まずは冷静に傾聴し、行動の理由を明らかにしましょう。
短所ばかり指摘する
人材育成においては、短所を改善するより長所を伸ばす方が重要です。苦手なことを改善するよりも、得意なことを伸ばす方が、効率的で結果も出やすいからです。
指導する立場としては、間違いや苦手分野に目が行きがちですが、叱られてばかりの環境では新入社員のやる気もなくなってしまいます。新入社員の様子を普段からよく見ておき、長所を見つけて褒める、得意な仕事を任せてみるなど、長所を伸ばすような指導をしていきましょう。
異性に対してデリケートな注意をする
たとえば、男性社員が後輩の女性社員に対して「スカート丈短いんじゃない?」「胸元開きすぎだから気を付けて」などと注意すると、それが的確な指摘でも「ハラスメント」と受け止められてしまうことがあります。逆に、女性社員から後輩の男性社員に「男の子なんだからもっと頑張れ」「力仕事は男性がやってね」などと言うのも同様です。
服装の乱れなど、どうしても指摘しなければならない場合は、同性の社員にさりげなく伝えてもらうなどの配慮をするとよいでしょう。「どこからがハラスメントになるのか」という線引きは難しいものですが、相手の外見・性別に注目しすぎる発言は控えるなど、「相手が不快な思いをしないように」と心がけて接することが一番の対処法と言えます。
まとめ
新入社員を指導する際に陥りがちな失敗としては、
- 他の新入社員と比べる
- 言うことに一貫性がない
- 頭ごなしに怒る
- 短所ばかり指摘する
- 異性に対するデリケートな注意をする
の5パターンを挙げました。
新山さんによると、「いずれにしても、『相手がどう受け止めるかを常に考えて伝える』ということができれば避けられる失敗です」とのこと。
新入社員は知識も経験も少なく、不安を抱えながら働いていることがほとんどです。そんななかで、OJTトレーナーはもっとも身近で頼りやすい先輩ですから、トレーナーの対応により新入社員のやる気や伸び方が大きく変わると言っても、過言ではありません。上記のような失敗をしないよう、自分の新人時代を思い出すなどして新入社員の気持ちを考えながら、指導していきましょう。