OJTトレーナー業務の大半を占める「教える」という行為ですが、「ティーチング」「コーチング」の2種類あることはご存じでしょうか? 知っている人も、それぞれの違いをうまく説明できる人は少ないかもしれません。前回に引き続き、マイナビで「OJTトレーナー研修」を開発・販売している同社・教育研修事業部の新山さんに、OJTトレーナー業務で非常に重要な「ティーチング」と「コーチング」の違いとその使い分けについて教えていただきました。
ティーチングとは「指示を与える」こと
「ティーチング」とは、答えをそのまま教えることです。新入社員は知識も経験も浅く、とくに入社直後は何をしていいのか分からないことがほとんどです。業務全体の流れや各業務の内容を分かりやすく、丁寧に教える必要があります。ティーチング3つのポイントを見てみましょう。
1. WHY/WHAT/HOWを明確に伝える
まず、業務を正しく伝えるためには「なぜこの作業をするのか(WHY)」「何をするのか(WHAT)」「どのようにするのか(HOW)」を心がけながら説明することが重要です。ただやり方を伝えるだけでは、作業の目的が分からず、どんなミスに気を付ければいいかが分かりませんし、逆に目的だけ伝えて方法を大まかにしか伝えていないと、作業をきちんと行うことはできません。まず教えるときには「WHY・WHAT・HOW」を明確に伝えましょう。
2. 指導し実行した後にきちんとフィードバックする
また、教えた後のフィードバックも欠かせません。教えっぱなしにせず、作業の様子もきちんと見た上で、良かった点・改善すべき点を伝えましょう。また本人に、教えた通りにできたか、やっていくなかで疑問点はなかったか、失敗してしまったところはないかなど聞き取りを行って、作業中にも意識を高く持っておくよう指導するのもよいでしょう。
3. メリハリを意識する
ティーチングにありがちな失敗は「聞き流されてしまうこと」です。きちんとメモを取らせる、重要な点は復唱させる、簡単なクイズを出して理解度を確認するなど、緊張感を持って積極的に取り組んでもらえるよう、適度なメリハリを付けて指導していきましょう
コーチングとは「導く・支援する」こと
「コーチング」とは、知識や経験をもとに自分で答えを出させるよう導くことです。新入社員が知識や経験を蓄えていくと、それをもとに自分で考えて行動できるようになっていきます。しかし、まだ知識が十分でなかったり整理されていなかったりすると、うまく行かないこともあります。この場合は一から教えるよりも、ヒントを与えるなどして答えを出せるよう導くことで、より大きな成長を促すことができます。実際にコーチングを行うポイントとして以下の5つのポイントが挙げられています。
1. 新入社員を認める
2. 信頼関係を築く
3. 可能性を信じる
4. 考えさせ、気づきを与え、答えを導き出す
5. 協力して目標達成を目指す
まず、新入社員のことを認め、信頼関係を築くことで、「信頼されている」「自分でもやってみよう」というやる気を起こさせます。そして、その可能性を信じることで「自分でやってみていいんだ」「頑張ってやってみよう」と、新入社員が積極的に業務に取り組める環境を作りましょう。こうすることで、教えられることを待っている受け身の姿勢から抜け出し、自律した人材に育っていきます。
信頼関係が築けたら、「答え」ではなく「ヒント」を与えるように方向転換し、自分で考えさせるようにしましょう。その際、あまりに悩んでいるようなら声をかけるなど、新入社員の様子をきちんと見ていることも大切です。最終的に自分で答えにたどり着けるよう、適度にフォローしながら導いてあげましょう。このように協力して目標の達成を目指すのが、コーチングです。
成長段階に合わせてバランスよく混ぜていく
では、ティーチングとコーチングはどのように使い分ければよいのでしょうか。
ティーチングとコーチングは、新入社員の状況に合わせて柔軟に使い分けるのが理想ですが、おもにティーチングは初期、コーチングは終期に多く行っていくことが望ましいと言えます。
ただし、新山さんによると、どちらかだけに偏りすぎてもよくないのだそうです。「近年はコーチングがもてはやされていますが、『自分で考える』と言っても、考え方や言語を知らなければ考えることはできません。知識が足りないうちにコーチングを始めてしまうと、『こんなことも分からないの?』などと"問い詰める"作業になってしまい、新入社員の自尊心を下げてしまいます。ティーチングとコーチングを混ぜて行う方がよい段階もあるので、バランスを取りつつ使い分けることが重要です」
まとめ
今回は、OJTトレーナー業務で重要な「教える」という行為について
- ティーチングとは「指示を与える」こと
- コーチングとは「導く・支援する」こと
- ティーチングは初期、コーチングは終期など、バランスよく混ぜて使う
という3点をご紹介しました。
教える際には、ティーチングとコーチングの違いを理解し、新入社員の業務レベルを見極めてうまく使い分けることが重要です。普段から新入社員のことをよく見て、日々の指導に活かしていきましょう。