職場や取引先で見かける「残念なおじさん」。彼らはなぜ、若者から見て"残念"と思われる言動をとってしまうのでしょうか。
マイナビニュースでは、仕事を持つ20~30代のマイナビニュース会員500名を対象に「中高年男性が残念だと思う瞬間」について調査。この連載では漫画にてさまざまなタイプのおじさん像を紹介した上で、『<40男>はなぜ嫌われるのか』の著者で男性学の第一人者・田中俊之氏にその背景を解説してもらいます。
今回は「ステレオタイプ凝り固まりおじさんの生態」です。
アンケートでは、残念だと思う瞬間について、若手社員から以下のようなコメントが寄せられました。
・「いまだに『女はかくあるべし』といった発言をいばってしていた」(男性/37歳/京都府/フードビジネス)
・「昔はとか、最近の若者はとか、平気で使うところが残念です」(男性/36歳/岩手県/医療・福祉・介護サービス)
・「言動が……自分が偉いというプライドが凝り固まっているのは残念すぎる」(男性/34歳/兵庫県/その他)
・「すぐに若者や新人の批判をする。まるで自分が初心者だった頃のことを忘れているよう」(女性/24歳/山口県/ガラス・化学・石油)
・「今の若者は常識がない、と昔の自慢話ばかりされた」(男性/33歳/埼玉県/海運・鉄道・空輸・陸運)
・「年上=偉いと思っているところ。注意すると逆ギレする」(男性/24歳/滋賀県/官公庁)
・「『最近の若いのは~』とか『自分の若い頃は~』と世代で一括りにする」(男性/37歳/香川県/その他メーカー)
・「どうせ若いから何もできないと言われる」(女性/30歳/神奈川県/教育)
・「最近の若者、女性などを一括りにして分かったようなことばかり言う。価値観が凝り固まってしまっていて、新しいものを受け入れられない人(なぜそれが出てきたのかなど考えず、真っ向から否定しかできない人)は話していて不快に感じる」(女性/24歳/山口県/ガラス・化学・石油)
・「人を年齢で判断するところ」(男性/33歳/東京都/フードビジネス)
・「中高年だからという訳ではないですが、やたら上から目線で女性を馬鹿にしたような言動に不快感を覚えました」(女性/37歳/鹿児島県/流通・チェーンストア)
・「年齢だけを絶対的価値観として高圧的な態度を取られること。自社なら諦めることもできるが、他社の人間に呼び捨てや高圧的な態度を取られることに対して良い気分にはなれない」(男性/32歳/東京都/化粧品・医薬品)
田中氏は、これらの寄せられた回答のように、自分自身の意見が凝り固まってしまっているおじさんに対し、以下のようにコメントしてくれました。
固定的な考えが、自分を不自由にしていませんか?
確かに、「男はこうあるべき」とルールを設定して、それに沿って生きていくのが好きだという男性はいるでしょう。しかし、同様に「男はこうあるべき」というルールが重荷になり、それに沿って生きるのがつらい男性もいるのです。言うまでもありませんが、これは女性でも同様です。
「多様性を認めるなら、ステレオタイプに凝り固まったおじさんも認めろ、結局、自分たちに都合のいい多様性しか認めないんだ」という主張を見かけることがあります。少し落ち着いてよく考えてみましょう。「男はこうあるべき/女はこうあるべき」というルールに違和感を抱く人たちは、それを他人から押しつけられることに反対しているだけです。
一方、「男らしさ」に固執する人は、自分の信じるところの「男らしさ」から外れる男性の存在を認めることができません。さらに言えば、「男はこうあるべき」というステレオタイプは、当然、「女はこうあるべき」というステレオタイプを伴う以上、このような立場では、「男らしさ」だけではなく、「女らしさ」の強要にもつながります。自由は重要な価値です。ただし、他人の自由を侵害しないかぎりで認められるもので、何をしてもいいというわけではありません。
固定的な「男らしさ」にこだわる男性に考えてみてもらいたいのは、それが他人の自由を侵している以上に、自分を不自由にしていないかということです。男性という性別が自分の生き方に、どのような影響を与えているのか。この問いに向き合うことは、単に職場での人間関係の見直しにつながるだけではなく、自分の人生をよりよく生きることにつながるはずです。
解説: 田中俊之
大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授。
社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。単著に『男性学の新展開』『<40男>はなぜ嫌われるか』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか!』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある。
漫画: 山本ゆうか
フリーランスのイラストレーター・漫画家として活動するワーキングマザー。
ウェブを中心に雑誌、書籍、広告の仕事で活躍している。情報処理学会会誌『IT日和』、チエネッタ『お隣さんの○○事情』イラスト担当中。