職場や取引先で見かける「残念なおじさん」。彼らはなぜ、若者から見て"残念"と思われる言動をとってしまうのでしょうか。
マイナビニュースでは、仕事を持つ20~30代のマイナビニュース会員500名を対象に「中高年男性が残念だと思う瞬間」について調査。この連載では漫画にてさまざまなタイプのおじさん像を紹介した上で、『<40男>はなぜ嫌われるのか』の著者で男性学の第一人者・田中俊之氏にその背景を解説してもらいます。
今回は「プライベート詮索おじさんの生態」です。
アンケートでは、残念だと思う瞬間について、若手社員から以下のようなコメントが寄せられました。
・「結婚や子どもに関することにしつこく踏み込んでくる」(女性/36歳/大阪府/医療・福祉・介護サービス)
・「付き合っている人はいるかと聞かれる」(男性/34歳/愛知県/輸送用機器)
・「個人的な連絡先を聞いてくる」(男性/30歳/新潟県/食品)
・「恋愛のことについていろいろ聞いてくる」(女性/29歳/北海道/医療用機器)
・「プライベートな話をやたらしてくるのは不快に感じる」(女性/33歳/千葉県/フードビジネス)
・「周囲の人の服装や髪型にコメントしてくること」(女性/26歳/栃木県/公益・特殊・独立行政法人)
・「結婚をすすめてくる」(女性/33歳/大阪府/その他)
・「やたら近寄らないでほしいのと、プライベートまでいろいろ聞いてくんな」(女性/35歳/埼玉県/不動産)」
田中氏は、これらの寄せられた回答のように、プライベートをズカズカと詮索するおじさんに対し、以下のようにコメントしてくれました。
恋愛の話題に対する世代ギャップがあるのです
同じ会社で働く人であれば、仲が良かろうが悪かろうが、「おはようございます」や「お先に失礼します」ぐらいの挨拶はしますよね。返事をしてくれなかったり、そもそも挨拶をする気がなかったりする人には、嫌な感じがするはずです。SNSでの過激な発言がもてはやされる世の中では、「挨拶は非合理的で生産性がない」とか言い出す人もいそうですが、業務上のやり取りを円滑にする上でも、ちょっとしたコミュニケーションは大切でしょう。
誰でも共通の話題として持ち出せるのは天気です。今年ほどひどい暑さが続けば、「暑いですね」と言えば、「本当に暑いですね」と同意を得られるのは間違いありません。このやり取りを交わした後に、もう少し話を膨らまそうとしておじさんが持ち出してしまいがちなのが、恋愛や結婚といったプライベートに関わる話題なのです。
僕も1975年生まれの40代なので実感として分かるのですが、とっくにバブルが崩壊していた1990年代後半でも、『東京ウォーカー』や『TOKYO 1週間』(2010年休刊)といった雑誌を参考に、若者はせっせとお金を使ってデートをしていました。その上のバブル世代はもっと恋愛が「当たり前」の空気だったことだと思います。
いまの若い世代は、恋愛に興味がないわけではありませんが、「誰もがするもの」という雰囲気ではありません。ですから、天気の話と同じテンションで、おじさんから「彼氏いるの?」と聞かれるのは不愉快なのだと思います。ようするに、これは昔からあるジェネレーション・ギャップの問題として理解できます。
もちろん、おじさんはそのギャップを認識し、自分にとっては「当たり前」でも若者は違うかもしれないと理解するべきです。ただし、誰でも年をとるのですから、「新しいものが正しく、古いものは間違っている」という価値観は、いつか自分の首を絞めることになります。若者の側にも、こんな話題だったら共通点が見つかるかもと思ってもらえたら、おじさんは助かります。
解説: 田中俊之
大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授。
社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。単著に『男性学の新展開』『<40男>はなぜ嫌われるか』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか!』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある。
漫画: 山本ゆうか
フリーランスのイラストレーター・漫画家として活動するワーキングマザー。
ウェブを中心に雑誌、書籍、広告の仕事で活躍している。情報処理学会会誌『IT日和』、チエネッタ『お隣さんの○○事情』イラスト担当中。