職場や取引先で見かける「残念なおじさん」。彼らはなぜ、若者から見て"残念"と思われる言動をとってしまうのでしょうか。

マイナビニュースでは、仕事を持つ20~30代のマイナビニュース会員500名を対象に「中高年男性が残念だと思う瞬間」について調査。この連載では漫画にてさまざまなタイプのおじさん像を紹介した上で、『<40男>はなぜ嫌われるのか』の著者で男性学の第一人者・田中俊之氏にその背景を解説してもらいます。

今回は「責任なすりつけおじさん」です。

  • 連載「オフィスに出没! 残念なおじさんの生態」のワンシーン
  • 連載「オフィスに出没! 残念なおじさんの生態」のワンシーン

アンケートでは、残念だと思う瞬間について、若手社員から以下のようなコメントが寄せられました。

・「自分のことは棚に上げて人を批判し、上司や部下などのことも考えずに言いたいことを言い放題な人」(男性/32歳/愛知県/海運・鉄道・空輸・陸運)
・「言い訳ばかりして自分は悪くないアピール」(女性/29歳/北海道/医療用機器)
・「何でもかんでも部下のせいにする」(男性/35歳/東京都/その他)
・「自分の責任の仕事を責任を持ってやらない」(女性/38歳/埼玉県/建築・土木)
・「出世から取り残されたおじさんがやたらミスに敏感で、職場で何かある度に『自分は関係ないアピール』がすごい。その人のミスなときも腹がたつが、誰から見ても関係ないとわかる案件でさえも、声高に『俺じゃないからね』と言うのを聞くたびにイラっとする」(男性/34歳/神奈川県/コンピューター機器)
・「自分で出した指示に対し、何か不手際があるとそのことを忘れて責める。『私が責任を持つから』ということだったのに、責任をなすりつける」(男性/38歳/埼玉県/その他)
・「自分のミスをさりげなく人のせいにする。自分の仕事を減らそうとして、若手に面倒な仕事を振りまくる。その若手が仕事に追われているのを尻目に、自分は定時きっかりに帰る」(男性/34歳/神奈川県/輸送用機器)

田中氏は、これらの寄せられた回答のように、責任をなすりつけるおじさんに対して以下のようにコメントしてくれました。

大きな権力には責任が伴うものです

率直に言えば、近年の日本では、おじさんが少々叩かれすぎなのではないかと感じています。確かに、社会的地位の高い中高年男性が、自分を取材した女性にセクハラをしたり、子どもを医大に裏口入学させたりというニュースについては、擁護する余地がありません。強く批判されるのも当然です。

しかし、加齢に伴って体臭がキツくなってしまうことや、若者の流行についていけないことなどは、いつかは誰もが通る道です。おじさんに対する筋の通った批判と単なる嘲りは、しっかり区別をしなければなりませし、後者の場合はむしろ無邪気にそうした中傷をする人の方こそ、責められなければならないと思います。

さて、本題に入ります。上司は部下よりも大きな権力を持っています。全体の業務を円滑に進行させるため、時には部下があまり乗り気でなくても仕事をやらせなければなりません。権力を行使すること自体がハラスメントなどということはありえず、正しく使うかどうかが問題です。

それでは、権力が正しく使われるための前提とは何でしょうか。それは、大きな権力をふるう以上、それに伴って大きな責任を持つということです。こうしたルールがあるからこそ、安心して部下は上司に従えます。

上司は権力によって部下に仕事をさせているのですから、その責任は本人だけではなく、部下の行為にも及んでいます。部下のミスで最終的に責任を取らなければならないのは上司なのです。こうした権力と責任の関係を踏まえれば、責任をとらずに権力だけを行使しようとする責任逃れおじさんは、会社をダメにする存在だと言っても過言ではありません。

解説: 田中俊之

大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授。
社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。単著に『男性学の新展開』『<40男>はなぜ嫌われるか』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか!』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある。

漫画: 山本ゆうか

フリーランスのイラストレーター・漫画家として活動するワーキングマザー。
ウェブを中心に雑誌、書籍、広告の仕事で活躍している。情報処理学会会誌『IT日和』、チエネッタ『お隣さんの○○事情』イラスト担当中。