何かしら保険に入っておいた方がいいとは思うけれど、自分に保障は必要だろうか。独身で養う家族や子どもがいないと、保険に関してこんな疑問を感じることはないでしょうか。どの保険に入ればいいのかわからず、結局何も加入しないまま、もしくは、人に勧められた保険にとりあえず加入している……という「おひとりさま」は多いと思います。この先も独身で過ごす予定の人は、保険をどのように選ぶのがいいのでしょうか。

  • おひとりさまの保険、選び方のポイントとは? (※画像はイメージです)

おひとりさまに必要な保障とは

生命保険には大きく、「死亡保険」と「医療保険」があります。死亡保険とは、被保険者(保険の対象者)が死亡または所定の高度障害状態になった時、家族に保険金が支払われる保険です。一方の医療保険は、病気やケガで手術や入院、または通院した時に給付金が受け取れるものです。

一般的に死亡保障が必要になるのは、「自分が亡くなると経済的に困る人がいる場合」です。たとえば子どもがいれば、その子が成人して自立するまでには多額の教育費や生活費がかかります。そして、自分に万が一のことがあった時、遺族年金や貯金などだけでは、それらをまかないきれない恐れがあります。そこで、遺された家族が経済的に困窮しないようカバーしてくれるのが、死亡保険です。つまりおひとりさまの場合、例外的なケースを除いて死亡保障は必要ないということになります。

ただし、「自分の葬式代で親族に負担をかけたくない」という人は、300万円程度の死亡保障を確保してもいいでしょう。掛け捨ての定期保険であれば、保険料を抑えられます。

一方で、医療保障はどうでしょうか。誰しも病気やケガをすることはありますので、死亡保障のように「独身だから不要」とは言えません。民間の医療保険で手厚い保障を付ける必要はありませんが、最低限の医療保障を備えておくと、自己負担分の医療費をカバーするのに役立ちます。

民間の医療保険が必要最低限でいい理由は、みなさんが加入している健康保険のおかげで、病気やケガをして医療機関にかかっても、窓口で支払う自己負担は3割で済むためです。そのうえ、健康保険には「高額療養費制度」があり、医療費の自己負担には上限が設けられています。そのため、1カ月あたりの医療費の自己負担額は、多くても約9万円に抑えられるのです。

さらに、勤め先の健康保険組合によっては、組合独自でこれ以上に充実した給付を行うところもあります。一度、加入している健康保険組合のホームページなどで制度を調べてみるといいでしょう。

医療保険はどうかければいい?

医療保険にも様々ありますが、「お金が戻る」など貯蓄性のある商品ではなく、掛け捨ての定期タイプで十分です。また、保障を手厚くする必要はなく、入院と手術で給付金が受け取れるシンプルなものがおすすめです。入院給付金は、「入院したら日額○円」のように、入院した日数に応じて受け取れます(一時金で支払われるタイプもあり)。手術給付金は、「手術1回あたり○円」もしくは、「入院給付日額の○倍」のように支払われるものが一般的です。

入院給付金の日額は5,000円や1万円などが選べますが、いくらにすればいいのでしょうか。入院日額を高く設定すると、その分保険料も割高になります。一方、生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、直近の入院時の自己負担額を入院日数で割った1日当たりの自己負担費用は、1万円~1万5,000円が24.2%と最も多くなっています。また、入院中に個室を利用することも考えられますが、その場合「差額ベッド代」が請求され、これは自己負担となります。

さらに、入院する間は働けなくなり、収入減となる恐れがあります。長期入院となれば、その分経済的負担も重くなるでしょう。これら入院中の自己負担分や収入減、長期入院を考慮すると、日額1万円が安心です。ただし、20代、30代の若いうちは長く入院するリスクが高くないことを優先し、日額5,000円を選択しても問題ないでしょう。

また、医療保険には「1入院につき何日分まで給付金が支払われるか」という給付限度日数があり、一般的には、30日型、60日型、120日型などがあります。厚生労働省の「平成29年患者調査」によると、傷病全体における平均在院日数は、15~34歳で11.1日、35~64歳では21.9日です。このデータからすると、「30日型で十分」とも考えられますが、万が一にも長期入院となった場合を想定すると、「長く入院したのに給付は1カ月だけ」という事態になりかねません。そこで、限度日数は60日、後述するがん保険に加入しないなら120日あれば安心できるでしょう。

がんが心配ならがん保険も検討する

ちなみに、「いざという時に使える貯金がたくさんある」という人は、必ずしも医療保険に加入する必要はありません。反対に、病気やケガに備えるまとまったお金がないという場合には、医療保険は必須です。ただし、医療保険は万能ではありません。医療保険にかける保険料は最低限に抑え、どのような用途にも使えるお金、つまり「貯金」を少しでも増やす方が賢明なのです。

また、がんが心配な場合は、必要最低限の医療保険に加えて「がん保険」の加入を検討するのもいいでしょう。がん保険は、がんにかかった時の経済的負担を軽減してくれる保険です。がん保険に加入するなら、医療保険の給付限度日数は60日型を選択していいでしょう。がん以外の病気の入院日数は短い一方、がん保険の多くは入院日数が無制限となっているためです。

自分に最適な保険を選ぼう

おひとりさまの場合、「死亡保障は不要、医療保障は必要最低限に」が生命保険の基本的な考え方になります。保険料とのバランスも考慮しつつ、必要な保障を見極め、自分に最適な保険を選びましょう。