今は生活できているけれど、もし働けない状態になったら? 病気になっちゃったら? 貯金は足りるのかな!? 「おひとりさま」の心配ごとは、法律と制度を知っておくと備えられることもあるかもしれません。
弁護士の上谷さくらさんによる、マンガ家・類さんのイラストでわかりやすく解説した書籍『暮らし・お金・老後… おひとりさまの心配ごと、すべて解決してください! 法律と制度を味方につければ、1人でも自分を守れる!』(Gakken刊)より、気になる心配事の解決ヒントをご紹介します。
全5回の連載、第4回は「老後の資金問題」のテーマです。
■定年後働けなくなり、老後の資金も尽きてしまったらどうすればいいの?
現在40歳です。このまま定年まで働いても、老後に必要と言われる2,000万円を貯められるとは思いません。また、病気などで働けなくなったりして、お金が尽きてしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
まずは状況を見てみよう
相談者:今は年収もそれなりにありますが、今後どうなるかはわかりません。定年まで働いても老後に必要といわれる2,000万円を貯められるか不安です。将来、お金が尽きてしまっても働き口がない場合などは、どうなるのでしょうか?
弁護士:定年まではしばらく時間があると思いますが、今、月々どの程度貯金されているのでしょうか?
相談者:今は月5万円以上の貯金ができていますが、両親も高齢になってきたので、仕送りも必要かと思っています。そうすると、だんだん貯金額も減っていくと思います。
弁護士:今の生活状況は、わりと自由にお金を使っていらっしゃるのでしょうか?
相談者:旅行したり、趣味の習い事もしたりしていますが、派手な生活はしていません。住まいは賃貸マンションです。
弁護士:今後の収入見込みや出費予定などを予想して、どう預貯金していくかは、ファイナンシャルプランナー(FP)の方などに相談されたほうがいいと思います。そのうえで、もし、お仕事もなくて老後にお金が尽きてしまったら、生活保護を申請すべきかと思います。
相談者:おひとりさまを満喫していたくせに、生活保護なんて、と言われそうで不安です。
弁護士:どんな生活スタイルでも、事情があってお金に困ることはあり得ます。フルタイムで働く予定でも、病気や事故などで働けなくなる可能性は誰にでもあります。
生活保護は国民の権利であり、そういうときのためにこれまで納税してきたのですから、努力してもどうにもならないときは積極的に申請してください。
法に照らしてみると…
憲法第25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。この理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とした「生活保護法」が定められています。
生活保護は、年齢や居住地、生活状況などによって、受けられる内容が異なります。具体的には、未成年の子どもがいる場合は教育扶助、病気がある場合は医療扶助、借家の場合は住宅扶助など、適した内容の生活保護が受給できます。健康で働く気持ちもあるのに、仕事が見つからないということであれば、ハローワークに相談し、収入を得る道を探りながら、生活保護を受給する方法もあります。「いざというときは生活保護があるから大丈夫」という安心材料にしてほしいと思います。
あなたを守ってくれる法律
憲法
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
生活保護法(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
■『暮らし・お金・老後… おひとりさまの心配ごと、すべて解決してください! 法律と制度を味方につければ、1人でも自分を守れる!』
混沌とした先行きの見えない世の中で起こりうる、おひとりさまのトラブル事例を「仕事」「恋愛・結婚」「生活」「家族」「老後」といったテーマ別に紹介。解決のための法律や制度を、マンガイラストをまじえてわかりやすく紹介する
2022年9月29日発売、A5判・206ページ、定価1,540円(税込)。
著者:上谷さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。桜みらい法律事務所所属。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。著書に『おとめ六法』(KADOKAWA)がある。
イラスト:類
新潟県在住のマンガ家。愛猫たちとのドタバタな日々を描いたマンガ『茶トラのやっちゃんシリーズ』や、パン屋さん応援コミック『がんばれ!コッペパンわに』(ともにKADOKAWA)が大人気。Twitter@ruuiruiruirui