お金のことって面倒だなと思っている人、細かいことは抜きにして、次の5つの用語と、その意味するところを知っていると、賢明な判断ができるはず。ぜひ押さえておいてください。

覚えておくと便利なマネー用語

これまで、おひとりさまが知っておきたいお金の知識について、貯蓄、保険、税金、年金などのテーマでお伝えしてきた。人間だから細かいことは忘れてしまったりするものだ。しかし、次の言葉と意味は、ぜひ記憶にとどめておいてほしい。

(1)『複利効果』

お金を定期預金に預けたとき、付いた利子の扱いに、単利と複利があるのは、ご存じだと思う。念のため簡単に説明すると、付いた利子を受け取るのが単利、受け取らずに元本に足して、それをまた預けるのが複利だ。時間をかけてお金を増やしたいときには複利を選んだほうが有利。単利なら時間がたっても元本の額は変化しないが、複利は利子が元本に組み入れられるので、だんだん元本そのものが大きくなる。利子も元本となるのでこれにも利子が付いて増えていく。これを複利効果という。

複利効果は、金利が高いほど、時間が長くなるほど大きくなる。仮に30歳の人が、30年間預けたとすると、どうなるだろうか?

  • 金利3%で30年間、単利……元本の90%の利息が付く。つまり元本と利息を合わせると1.9倍に

  • 金利3%で30年間、複利……元本の約143%の利息が付く。つまり元本と利息を合わせると2.4倍に

このように差が付くのだ。しかも、単利は元本とは別途、普通預金に振込まれるので使ってしまう可能性がある。複利なら元本に組み込まれるので使うことができず維持される。

使うと言っても、1年あたりの利息額はそれほど大きくないので、あまり使いがいはないはずだ。それなら忘れて元本に足していった方がいい。預金に限らず投資信託などによる運用についても同様だ。投資信託では、資産そのものの値上がりに加えて、利益から分配金を出す。この分配金をなるべく出さずに元本に組み入れていくタイプの方が複利効果が高いということだ。

自分の資産を託している商品が、単利なのか複利なのかはしっかり意識しておきたい。

(2)『企業年金』

公的年金に不安を感じている人は多いが、勤務先の企業年金について把握している人は案外、少ないようだ。現在60代以上の会社員は、退職時に退職金をもらって、残っている住宅ローンを返済したり、また老後の生活費にあてることができた。大企業に勤めていた人なら、公的年金に加え、そこそこの企業年金を受け取れる人も多い。企業年金は勤務先の福利厚生のひとつで、一括して受け取れば退職金、年金形式で受け取れば企業年金になる。日本の公的年金が崩壊したり、なくなることはないだろう。逆に、なんとか収支を維持して継続していくためにこそ、一人あたりの受取額は減ることになるだろう。つまり、企業年金や自分での資産形成が重要になる。勤務先の企業年金の仕組みや将来受け取れそうな額について必ず確認しておきたい。

企業年金が、「確定拠出年金」という会社が増えている。確定拠出年金は、退職後に受け取る退職金や年金のためのお金は会社が出して積立ててくれるが、それをどの金融商品で運用するかは自分で決めるというものだ。何を選んだかで将来の受取額が大きく異なってくる。しっかり考えて商品を選択したいが、仕事が忙しい、運用のことはよくわからないという人もいることだろう。そんな場合は、バランス型の投資信託(日本のみならず海外の株式や債券にお金を分散して投資する)でなるべく手数料(信託報酬)の安いものを選択しておこう。

(3)『ライフプラン』

ライフプランを立てようと言われても、おひとりさまの場合はしっくりこないかもしれない。ライフプランを立てる際のライフイベントとして代表的なものには、結婚、出産、子どもの成長にともなう進学、退職などがある。中でも、まとまったお金がかかる重要なライフイベントは、教育、住宅、老後で、ファイナンシャル・プランナーの世界では、これを人生の3大資金と称する。

しかし、この3つ、よく見れば、教育以外はおひとりさまにも関係がある。逆に言えば、おひとりさまがしっかり意識しておかなければならない項目は、住宅と老後ということだ。このふたつを中心に、今後の予定を考えて自分なりのライフプランを立ててみてはどうだろうか。30代の人は老後と言われても……と思うかもしれないが、40代に入ったら少しは意識してほしい。いつ頃、どんなことをしたいか、しなければならないか。1年に1度くらいは、来し方を思い出し、行く末を考えてみたい。

(4)『住生活基本法』

日本には今、空き家がたくさんあることをご存じだろうか? 人口が減少し、少子高齢化が進んでいく中で、住宅のあり方が議論されている。住まいの問題はおひとりさまにも大きな課題だ。新聞やニュースの不動産関連の記事にはこまめに目を通して、自分と関連するサービスなどがないかを確認したい。住生活基本法に基づいて様々な計画が立てられ実行されている。例えば中古住宅の売買がスムーズにいくような整備が行われている。住においては、これからの20~30年でかなり大きな変化が起きるかもしれない。今のうちからウォッチして、ライフプランと合わせて、自分にとってよりよい選択ができるよう情報を蓄えておきたい

(5)『バランスシート』

1年に1回は、資産と負債の確認をしたい。仕事で財務などを担当する人なら簡単だ。そうでない人も、企業のバランスシートほどちゃんとしたものでなくても、資産と負債を洗い出して、プラスの財産がいくらかを確認してみよう。住宅ローンを抱えていない限りは、おひとりさまのバランスシートがマイナスになることはないと思うが、プラスの財産が年とともに増えていくように、つまり資産形成を意識して過ごしたい。お金をしっかり貯められるかどうかは、細かく家計簿をつけているか、節約しているかも多少は影響するだろうが、資産形成という意識があるかどうかによる差の方が大きいのではないかと思う。その際の手がかりが毎年のバランスシートだ。

あれこれ書きましたが、お金のことをしっかり意識しつつ、楽しく過ごすのが一番ですね。

(※画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。