人生の後半にさしかかり、このまま家族を持たない可能性が高いと思ったとき、確認しておくべきことは?
これまでに手に入れたものは何?
「隣の芝生は青い」という諺がある。同じようなものを持っているのに、人のものの方が良く見えるという意味だ。人が持っているのに、自分には手に入らないものがあるとしたら、なおさら、うらやましく感じるのが人間というものかもしれない。
しかし人間、数十年も生きていれば、皆ずいぶんといろんなものを持っている。取材や家計相談を通して様々な立場の人とお会いしてしみじみと感じることだ。そして、自分が持っているもの、すでに手に入れたものの価値を客観的に把握している人は実は意外と少ない(つまり、自分ではその価値に気が付いていないのに、まわりの人の中には、それをうらやましがっている人もいるかもしれないということだ)。
前置きが長くなったけれど、人生の中盤で、自分が持っているものを確認することは、とても重要なことだと考える。目に見えるもの、見えないもの両方だ。例えば……。
仕事における人間関係
プライベートにおける人間関係
家電、服、小物、趣味の道具など、自分の収入で手に入れたモノ
住んでいる場所や、立場により得ている環境
金融資産や不動産
わかりやすいのは、目に見える(3)のモノと、数字で把握できる(5)の資産だ。しかし、(3)や(5)を手に入れるための基盤となるのは、(1)、(2)の人間関係。そして日常生活への影響が大きいのは(4)の環境だ。
頭で思いめぐらすだけではなく、できれば、箇条書きにして書きだしてほしい。いろいろなものを持っていることを確認できるはずだ。買ったときのことや、引っ越ししたときのことなど、過去のシーンとその時の気持ちも思い出すことだろう。今、これらのものを持っているわけだ。
さて、人と比べるのではなく、自分自身の率直な気持として、これらに満足しているか、納得しているか、今後も持ち続けたいのか、整理したいのかを考えてみたい。
また、ちゃんと活用しているのかも検証したい。例えば、(4)の環境だ。そこそこの家賃を払って、よい環境の場所に住んでいながら、勤務先への往復だけになっているかもしれない。勤務先の福利厚生が充実しているのに、よく調べもせず利用していないかもしれない。新しいものを手に入れなくても、すでに持っているものの活用法次第で充実した時間を過ごせるかもしれないのだ。
今持っているものを維持する、いくつかは処分して大事なものを残す、しっかり判断したい。
これから手に入れたいものは?
まだまだ人生は続いていく。これから、付け加えたいものはなんだろうか? それについても考えてみたい。疎遠になっている実家との関係を修復する、長期間の海外旅行を計画する、仲間を呼べる家を買いたいなど。そして、こういった気持ちや行動を支えるものとして、いくらかのお金が必要になる。
「これからも、おひとりさまかも」と思っている人に、必ず実行してほしいのが、手持ちの資産の確認と整理だ。あちこちの金融機関に預けているなら、わかりやすく、目的別に整理したい。イザというときのお金と、将来のためのお金に分ける。連載第4回『「おひとりさま」にオススメの"銀行口座"の活用法とは?』も参考に。
また、勤務先の福利厚生はもとより退職金制度の確認、ねんきん定期便で公的年金がいくらもらえそうかの確認も必要だ。日常の生活費として、最低限、いくらあれば生活できるかも把握しておきたい。忘れてならないのが、今後の住まいをどうするかということ。連載第14回『賃貸と持ち家、おひとりさまにはどっちがふさわしい!?』も参考に。
前半で挙げた5つの項目だが、これは、ひとりで人生の後半を生きていく場合にも重要なことだ。
(1)仕事における人間関係
仕事と収入の確保のために、付かず離れず、維持していく必要があるだろう。
(2)プライベートにおける人間関係
親や兄弟との関係を見直すと同時に、友人・知人の存在は重要だ。
(3)家電、服、小物、趣味の道具など、自分の収入で手に入れたモノ
本当に必要なモノを見極めたい。
(4)住んでいる場所や、立場により得ている環境
今住んでいる場所にずっと住みつづけるかどうか? 仕事以外にも、ボランティアなどにより地域社会の中に自分の場所を見つけることも考えてみたい。
(5)金融資産や不動産
人並みではなく、自分の望む生活のために必要な資金が確保できているかがポイント。
紙に書きだしてみると、何となく考えているよりも、ずっと具体的に確認することができる。まだまだ先は長いが、おおまかな方向を意識しておきたい。
(※画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
ファイナンシャルプランナー 坂本綾子
20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。