人生、ほんとに先のことはわからない。うん十年生きてきた実感だ。ずっとおひとりさまだと思っていた人が、急展開で家族を作って2人になる、あるいは3人になることは十分にありえる。さて、そのときは、どうすればいい?
お互いに告白しよう、収入、借金、貯蓄額
ずっとおひとりさまかもと思っていた人が家族になるということは、勢いに乗っているか、あるいは冷静に強い決断をしたはずだ。社会人になりたての若い頃よりも経験を積み、人を見る目だってあるはずだから。ならば、その勢いや強さで、一気にお金についての擦り合わせもしてしまおう。お互いの収入、借金、貯蓄額を確認したい。自分のことは教えずに相手のことだけ知ろうとするのはフェアではないから、互いに告白するのがいいだろう。
うーん、ちょっと抵抗あり? まあ、おいおいと…。などと考えていると、一向に進展しない。決心が必要だけれど、最初にこのハードルを越えておいた方が、あとあとこんなはずじゃなかったと思わずにすむ。そもそもお金のことを正直に話せる関係のほうが、風通しがよく、仲良く楽しく暮らしていけるというものだ。
細かいことまでは必要ない。税込みの年収、月々の手取り収入とボーナスの目安、貯蓄額は、源泉徴収票や給与明細、預金通帳などで把握できる。もし借金があるなら、その理由、金利を確認したい。
相手に借金があることがわかったときは、関係解消もありうるだろう。それは仕方がない。相手が借金を抱えていても、借りた理由に納得がいく、きちんと返している、返済が終わる時期がわかっている、相手を信頼することができるなら、一緒にやっていくことができるだろう。
逆に自分が借金を抱えていたら、ウソをついてはいけない。一緒に暮らしていれば、いつかバレるし、そのときは信頼を失くしてもっと大変なことになる。
一緒に暮らしている人間関係は、一世帯とみなされて、社会保障の単位になる。ましてや、きちんと入籍した関係なら、税金の計算をするときも別居の他人とは違う扱いとなり、お金の面でも運命共同体的なところがあることを自覚しておこう。
お互いに仕事を持って忙しく、子どももなく、比較的自由に暮らしている場合は、おひとりさまが2人して、ひとつ屋根の下で暮らしているような感覚を持つケースもあるかもしれない。しかし、社会的な立場は、おひとりさまのときとは違うことをしっかり把握しておきたい。
キャッシュフローを確認してみよう
収入や貯蓄額の確認ができたら、今後、どんな暮らしをしたいかも話し合いたい。2人の共有名義で家を買いたい、何人子供が欲しいなど、大きなお金が必要な計画があるなら、今後のキャッシュフローの確認をした方がいい。今年1年だけではなく、今後30年などの長期にわたって収支や貯蓄額がどうなっていくかをシミュレーションするのがキャッシュフロー表だ。シミュレーションのツールは、「知るぽると:金融広報中央委員会」のサイトなどに無料で利用できるものがある。
出来ちゃった結婚は幸せの始まり
おひとりさまから家族になったとき、お金の面でもっとも注意が必要なのは、子どもが生まれるケースだ。30代後半から40歳前後で子どもを授かると、一般的な子育て世帯よりも、教育費のかかる時期が10年ほど後ろにずれることになる。定年退職の時期や、セカンドライフを見据えながら、教育費を捻出し家計管理をする必要がある。しかし、子どもの存在は、お金のやりくりの苦労を忘れさせるほどすばらしいものだ。これまで、おひとりさまだった人が、出来ちゃった結婚により家族を作るとしたら、これはとても幸せなことではないだろうか。また、結婚後に子どもを望む場合も、もちろんお金のシミュレーションは必要だが、お金がかかるから、やっぱりやめておこうというのは、もったいないと私は思う。
お金はやりくりするためにある
私ごとで恐縮だが、私には年の離れた子どもが2人いて、育て方も、かけている教育費も、かなり違う。時代も、家計や仕事の状況も変わり、親である私たち夫婦も年をとったわけだから、これは仕方のないことだと思っている。仕方がないというと消極的なイメージだか、それぞれの時期に、出来る範囲で、納得のいく選択をしているということだ。
おひとりさまが長かった人は、その間も大事な人生の時期であり思い出である。その過去の上に立って、今度は家族になったのだから、モデルケースや、もっと早く家族になった人と同じような生活、家計のやりくりにこだわる必要はない。自分たちの方法で判断してやりくりすればいい。教育費も生活費も、かけようと思えば、たくさんかけることはもちろんできる。しかし、今の日本は、そこそこの品質のものを安上がりに手に入れる環境も整っている。おひとりさまから家族へといっても、家計状況は一世帯ごとに違っているはずだ。2人のお金の情報をしっかり擦り合わせて、自分たちに納得のいくやりくりを検討したいもの。どうぞ、お幸せに!
<著者プロフィール>
ファイナンシャルプランナー 坂本綾子
20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。