現金ではないお金を使う場面が増えている。クレジットカードや電子マネーだ。最近は、即時決済のデビットカードも使いやすくなってきた。これら複数の支払い手段を適当に使っていると、お金の収支を把握しづらくなり混乱の元。でも上手に活用すれば、お得な上に、お金の管理がラクになる。現金以外のお金の活用法は?

目的別にカードを分けよう

おひとりさまで、お金の収支をちゃんと付けている人はどれくらいいるだろうか? 家族がいて、いついつまでに家を買いたいとか、子どもの教育費を貯めなきゃというはっきりした目標があれば、自然とお金の使い方は引き締まり、収支を付ける動機付けにもなるが、先行きがまだ見えず、何となく日々を過ごしているおひとりさまは、お金の使い方もつい流されがちになるのではなかろうか?

そもそも、おひとりさまは家族持ちと違い、支出項目も少なくて済むので、細かい収支を把握しなくても、そう困ることはない。

そこで、無理やりにでも、お金を使う目的=支出項目を意識したい。その際、項目で支払い手段を決めてカードを活用すると、自分で付けなくても収支の把握がラクにできる。

使うカードは、3種類。

  • クレジットカード…1枚。支出項目が多い人は2枚持ちもあり

  • 電子マネー…1枚。支出項目が多い人は2枚持ちもあり

  • デビットカード…1枚

各カードは原則、1枚。つまり、そのカードの支出合計が、その項目の合計だ。

例えば、クレジットカードではケータイ料金や1人暮らしの人は水道光熱費など毎月かかるものを支払う。多少の波はあるが、毎月ほぼ一定額のはず。いつもより金額が高めのときは、何かを使い過ぎているということだ。通話料が高くないか? ケータイ料金の明細などを確認したい。衣類、靴やカバン、パソコン、家電、旅行代金など、日常の生活費ではない特別支出も、このクレジットカードで支払う。クレジットカードの支払額がグンと飛び出している月は特別支出があったということだ。詳細はクレジットカードの利用明細書で確認できる。クレジットカードの利用でポイントを貯めている人は多いはず。毎月かかる料金と、金額の高い特別支出で確実にポイントも貯まる。

通勤の交通費や、通勤時のちょっとした飲み物、コンビ二の利用などは電子マネーで支払う。こちらは、月いくらまでという予算を決めておき、その範囲内で収めるように意識する。この時、注意したいのが、クレジットカードからのオートチャージだ。電子マネーの残高が一定額以下になると自動的にチャージされるので便利だが、予算を超えても使えるので気をつけたい。できれば現金でチャージしたほうが、予算を守れる。

さて、デビットカードを使っている人は、まだあまり多くはないだろう。日本の銀行が発行するキャッシュカードは、ほとんどがデビットカードとしての機能を備えていて、ジェイデビット加盟店であれば、暗証番号などを入力することで、銀行口座から即時決済で支払うことができる。さらに、最近、普及してきたのがカードブランドのデビットカードだ。例えば、VISAデビットカードは、VISA加盟店でクレジットカードと同様に利用でき、代金は即時、銀行口座から引き落とされる。ジェイデビットは日本国内だけだが、VISAデビットは海外でも利用できる。

クレジットカードで支払う特別支出を、デビットカードに置き換えると、毎月かかる支出と、特別支出とを分けることができる。また、デビットカードは銀行口座の残高の範囲内でしか利用できないので、クレジットカードで買ったものの、実はお金が足りず、引落しのときにあわててしまうことも防げる。デビットカードでは、キャッシュバックキャンペーンを行う銀行もあるので(銀行により内容は異なる)、活用すれば、お得な買い物もできる。

カードを上手に使って、お金の流れを把握しよう

あとは、現金で使う項目を決めておけば、自分で収支を付けなくても、大まかなお金の流れを把握することができる。現金での支出は、日常雑貨や食費などが多いのではなかろうか。つまり、お金の流れはこうなる。

給料が振り込まれる

 ↓

  • クレジットカード経由…ケータイ料金など毎月の支出と特別支出

  • 現金引き出し…電子マネーに予算分をチャージ(通勤まわりの支出)

  • 現金引き出し…日常雑貨、食費などの現金支出

  • デビットカードを使った場合は、即時、引き落とし…特別支出

銀行の預金通帳(インターネットバンキングなら入出金履歴)と、クレジットカードなどの明細を見れば、ほぼお金の流れを把握できる。自分のお金の使い方がわかっていると、もっと貯蓄を増やそうとか、大きな買物をしようというときに適切な判断ができる。連載の第5回「自分の目でお金の記録をしっかり見る」も参考に、クレジットカードなどを、収支管理のツールとしても使いこなしたい。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。