1番札所の「霊山寺」を出て、私は途方にくれた。「どっちにいけばいいんだろう」。私のイメージでは歩きのお遍路の人が何人もいて、そういう人達について行けばいいのかなと思っていたのだが、他にいたお遍路の人は自家用車か観光バスで来ているらしく、歩いている人が全く見当たらない。看板も見当たらない。
仕方ないので持ってきた地図を取りだし、どっちに向うべきか考える。2番札所は1番札所と同じ道路沿いにある。地図で見る限り、とっても近い。なので、車がびゅんびゅん通る道を1人で歩く。道沿いにはお店も何もない。だが、やはり地図の通り近かったので、11時半に1番札所を出発して、12時前には無事到着した。
2番札所「極楽寺」は長命杉が有名
2番札所「日照山 極楽寺(にっしょうざん ごくらくじ)」は、行基菩薩が建てたというお寺。赤い山門が目立つ。行基菩薩が建てた後、弘法大師さまが27日間、無量寿の秘法を修められ、最後の日に阿弥陀様が現れたといわれている。弘法大師さまがその阿弥陀さまの姿を彫刻するとその像が光り輝き、近隣の魚が捕れなくなったので光を遮るため山を築いたことから、日照山という山号がついたと言われている。
ここは、1番札所と違い人はまばら。階段を登ったところに樹齢1100年以上と言われる巨木の「長命杉」がある。なんとこの杉は、弘法大師さまが自らお植えになったと伝えられている。幹に触れば長寿になって、触った手で自分の悪いところをさするとその部分が治ると言われている。私は幹を触ってみた。これで長生きできるかな。
本堂は階段を約50段上ったところにある。本堂と大師堂で、お線香とロウソクを供し、お札を収めてお経を読む。お線香に火をつける時、風でなかなか火がつかず、ライターをつける親指が熱い! チャッカマンみたいな、火をつける所が長いライターを持ってくればよかった、と後悔する。それから、納経帳に御朱印(ごしゅいん)をいただくために、納経所(のうきょうしょ)に向う。納経とは、文字のごとく「お経を納める」ということで、写経(お経を書き写したもの)や読経(お経を読んで納める)のこと。御朱印とは簡単にいえばスタンプラリーみたいなもので、そこに行ったということを示すものなのだ。
極楽寺の納経所は、お遍路グッズの売店の中にあった。そこで300円を払って寺名や本尊明を墨で書いてもらい、御朱印を捺してもらう。そしてご本尊の絵が描かれた御影(みえ)の短冊をいただく。この御影を八十八カ所ぶん貼って掛軸にする人もいるらしい。売店にはちらし寿司が売られていた。おいしそう。お昼を食べていなかったのでここでひと休みしようかなと思ったが、急がないと今日の宿泊を(勝手に)予定している6番札所「安楽寺」までたどり着けないかもしれない。不安になって、安楽寺に電話してみる。そもそも、どこまで歩けるかわからなかったので宿泊の予約も何もしてないのだ。
「もしもし、今日なんですが、女性1名で泊まれますか? 」
「はい、大丈夫です。歩きですか? 今どちらに? 」
「極楽寺です」
「えっ、まだ極楽寺ですか!? 夕飯は18時を予定しますが、それまでにたどり着けますか? 」
「……なんとかがんばります」
本当にたどり着けるのかと不安を抱えつつも電話を切り、足早に3番札所「金泉寺」へ向った。