はじめまして、ライター兼イラストレーターの田中ひろみです。これからお遍路紀行を書かせていただきます。よろしくお願いします。
なぜ私がお遍路に行きたいと思ったかというと、それは私が仏像大好きなことからはじまる。連載第1回目の今回は、仏像好きになった理由について説明したいと思う。
私は大阪出身で、奈良や京都が近いところに住んでいた。それで学校の遠足や行事では、奈良や京都の神社仏閣に行く機会が多かった。また仏像好きな伯父がおり、独身で暇だったせいか、やたらと私に仏像を見せに連れて行ってくれた。子供にとって仏像はとくに興味深いものでもなく、どれも同じに見えたものだ。けれども、歴史物の少女マンガの影響で日本史好きになった。日本史の時間は、とくに熱心に勉強していた。
大人になって東京に移り住み、本職はイラストレーターだが、歴史好きが高じて江戸の史跡巡りの本『うさぎちゃんのわくわく江戸散歩』(双葉社)という本を出す事ができた。するとその本を読んだカルチャーセンターの講師から、文化講座の講師の依頼がきた。そうして、かれこれもう6年間江戸史跡巡りの講師をしている。講師の仕事として史跡巡りをしていると神社仏閣に行く機会は多い。お寺に行けば、当然仏像にも数多く出合った。お寺の住職さんに「仏像の髪の毛は"螺髪(らほつ)"といって長い髪がぐるぐるとほら貝のように一つ一つ巻かれるんですよ。仏像の髪は青いんです。また頭のコブは、智慧が盛り上がっていると言われています」などとお話を伺い、「へえ~」と感心はしたものの、まだ仏像に対しては特に興味は沸かなかった。
ところが十数年ぶりに訪れた京都の三十三間堂に行き、1001体もの千手観音達に圧倒され、突然、仏像に対し恋に落ちてしまった。自分でもなぜ突然そうなったのかはよくわからないが、多分子供の頃から仏像をたくさん見て蓄積された"仏像熱"みたいなものが飽和状態になり一気に発火したのではないかと思う。まぁ恋に落ちるのに、明確な理由を説明するのは難しいもの。今まで何も感じなかった仏像が、私の心の奥にずんずん入り込んでいった。それからというものは、仏像に関する本を読みまくり、仏像に関する知識を深めていった。
仏像のモデルはお釈迦さまと言われていて、お釈迦さまが亡くなって500年後に仏像は作られたそうだ。そのためにお釈迦さまを実際に見たことある人は誰もおらず、「お釈迦さまは、こういう人だった」という話がもはや人間ではないような特徴として伝えられた。例えば、お釈迦さまは、身長が4.8mもあったと伝えられている。普通の人間の約3倍である。その他、髪の毛や眼が青かった(髪が青いなんてマンガでしか見たことない)、多くの人々を苦難から救いあげるため、指の間には水かきのようなものがある、など超人的な特徴が伝えられ、それが今日の仏像の特徴にもなっている。また仏像も釈迦を模した仏「釈迦如来像」しか存在しなかったが、次第に様々な種類の仏像が作られていき、今ではいくつかの位に分かれている。
そういうことも、知れば知るほど面白く、仏像は奥が深い。私はあちらこちらのお寺に出かけては仏像を見て歩いた。今もスケジュール帳にその日しか公開されない秘仏の予定をぎっしりと書き込まれている。そうやって仏像対する"愛"を温め、いろんな人に語り、最近では小学館から『仏像、大好き!』という本も出すことができた。また仏像の理解を深めることで、仏教や数多くの伝説に名を残す弘法大師・空海に興味を持つようになっていったのだ。
さて次回は、もう少し私自身の話で「私が弘法大師・空海に魅かれる理由」です。