介護保険で受けられるサービスはいろいろあります。そのサービスも時代に合わせて変化していきますが、現在はどのようなサービスを受けられるのでしょうか。また、いざ自分たちが介護が必要になったとき、期待するような介護が受けられるでしょうか。
当然至れり尽くせりを望めば、多大な税金が必要となり、次世代の税負担を重くしてしまいます。しかし、介護制度が不十分であれば、やはり次世代の人たちの介護負担が大きくなります。そして税金だけでなく、手持ち資金の額も介護の質に大きく影響します。現在のサービス内容から、未来のあるべき姿を考えてみましょう。
介護保険制度のサービスの種類を知ろう
介護保険のサービスは、「在宅サービス」「地域密着サービス」「施設サービス」に大別できます。有料老人ホームや軽費老人ホーム、養護老人ホームなどは施設ではなく、居宅とみなされて必要なサービスを受けられます。有事の際に要介護認定の申請をし、要支援1~2または要介護1~5と認定されれば、認定の度合いに応じたサービスが受けられます。
ただ、受けられるサービスは複雑に入り組んでいます。下記の表を見ると、非常に細かく分類されていて、一見しただけではわかりにくいと思われる方が多いのではないでしょうか。
なぜこのように細かく規定されているのでしょうか。現実のニーズのためでしょうか。拠出できる国や市町村の予算の関係でしょうか。特に「地域密着型サービス」は複雑化しています。
平成30年4月から「地域包括ケアシステム」を深化・推進するため、法改正が施行されます。地域密着サービスの詳細欄を見ると、介護へのニーズの複雑さも見えてきます。
上記介護保険サービス一覧1~3までの特記事項
※(1)市町村が指定・監督を行うサービス
※(2)都道府県・政令市・中核市が指定・監督を行うサービス
※(3)有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)・養護老人ホーム・一部のサービス付き高齢者向け住宅の入居者を対象として行われる介護サービス
※(4)利用者ができるだけ自立した生活が送れるよう、「通所」を中心として、短期の「宿泊」や「訪問」を組み合わせ、日常生活の支援や機能訓練を行うもの
※(5)介護専用型特定施設(有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホームなどのうち、入居者が要介護者とその配偶者に限られる)のうち、入居定員が29名以下のもの
※(6)利用者ができるだけ自立した生活が送れるよう、入所定員29名以下の特別養護老人ホームが、要介護者に日常生活支援や機能訓練、療養上のケアを提供するもの
※(7) (4)のサービスに加えて看護師等による訪問看護も組み合わせることによって、介護と看護の一体的なサービスを受けられるもの
※予防 介護予防サービスがあるもの
※(8)厚生労働省は2024年までに廃止し、2018年より新設の介護医療院に移行
※(9)地方公共団体・医療法人・社会福祉法人などの非営利法人
※(10)介護予防のうち、ケアマネジメントのみ
ヘルパーに頼めるサービス、頼めないサービスとは
具体的にどのようなものが介護制度の中の介護としてみなされ、どのようなサービスが頼めないかに関し、厚生労働省は細かな規定を定めていません。それだと個々の現場でトラブルが頻発してしまいますので、市町村で独自のルールを設けているケースもあるようです。
介護を受ける場合は、その人に最も適したケアプランが作成され、そのプランに沿って介護がなされます。ただ、ヘルパーが関与できる介護の範囲は限定的です。本人に直接関する「身体介護」と「生活援助」のうち、食事や入浴、洗顔など日々繰り返される必要事項に限られています。
介護保険事業は給付タイプだけでなく、予防事業もあります。なるべく要支援や要介護にならないための予防事業のうち、一般介護予防事業(介護予防普及及び啓発事業・地域介護予防活動支援事業・地域リハビリテーション活動支援事業)はすべての高齢者が利用することができます。
健康寿命を延伸させることが大切
介護と聞くと、20代や30代の方はいまいち身近に感じにくいかもしれません。ただ、若くして介護が必要となる可能性はゼロではないですし、親御さんが要支援や要介護状態になることも考えられます。遅かれ早かれ、誰もが大なり小なり介護を必要とすることになるでしょう。
厚生労働省が発表した「平成25年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性は86.61歳となっています。また、「健康寿命」は男性71.19歳、女性74.21歳で、その差は男性で9.02歳、女性で12.40歳となっています。
健康寿命とは、介護などに依存することなく自立した生活ができる生存期間を指します。平均寿命からこの健康寿命を差し引いた期間は、何らかの支援が必要となる可能性があため、健康寿命を一日でも長くさせることが重要なのです。
自分の問題として考えると、介護保険制度もより理解でき、またその問題点も見えてくると思います。
■ 筆者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。