よいこのQ&A
Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!
今回は、低身長者と着ぐるみに身を包んだクレイジーなヤツらとのおかしな競技バトルを『ジャッカス』シリーズ風味に仕上げた、ドキュメンタリー風コメディーを紹介する。
とにかく『ジャッカス』シリーズと良い勝負をするおバカっぷりが主な見どころだが、下品なシーンや発言が随所にチラホラときたものだから、呆れてしまうこと間違いなし。でも、世のおバカ映画大好きなボンクラどもなら存分に楽しめてしっかりと笑えるのだ。
伝説的な低身長ポルノスターがガンとの闘病の末、死亡。彼の遺言は「莫大な遺産が欲しければ小人軍団と着ぐるみ軍団に分かれてバトルしろ」ということで、賞金100万ドル欲しさに低身長者たちとヘンテコな着ぐるみ野郎どもが集合。そして、史上最低のおバカなバトルの火蓋が切って落とされた……という内容。いや~低俗丸出しだ。
低身長者も着ぐるみ野郎もみな個性的だが、とりわけ着ぐるみ野郎はクセ者揃い。中には低身長者を小バカにするような発言をするドアホもいる。コレ、クソ真面目な人やPTAとか教育にうるさい頭カチカチ人間が観ると「良心がキズついた」とか「こんな映画の上映やソフトリリース反対のクレーム電話でもしてやろうか?!」とか思うはず。まぁ、そんなことはどうでも良いとする。
とにかく競技内容がハチャメチャでバカの限度を通り越しているのだ。
牛乳を15分間で何杯飲めるか?!というバトルでは低身長者も着ぐるみどももみんな揃ってゲロ吐きまくり。このシーンの最後に低身長の女はドデカい屁をぶっこくが、彼女のケツに要注目だ。コレは一度観たら驚くこと間違いなしのある意味で最高のシーンなのである。屁をこいた結果どうなったかは観てのお楽しみだが、目と脳裏に焼きつくこと間違いなしの名シーンと言い切りたい。
次はロデオ大会だが、競技場の真ん中あたりに小さなテーブルを置いて椅子に座ってトランプで遊んでいる低身長者と着ぐるみたちに向かって闘牛が勢いよく突っ込んでくる……観る者をヒヤヒヤさせる衝撃的な展開の連続だ。
ロデオ会場でのんきにトランプで遊んでますが、この後……! |
ガチで闘牛が突っ込んできます |
バカ競技の中でも、「エッチ」というそのものズバリなネーミングの「どこまでふざけとんねん!!」という種目がある。その内容は、バーにいる女を「ヤラせてくれ~」とストレートに口説いてしっかりとセックスを遂行できれば1ポイント獲得できるというもの。本作が持つ低俗レベルを一気に底上げするどうしようもなさだ。
まともなバトルと言えば、校庭での競技シーンで観られる二人三脚をはじめとする学生の運動会や体育祭みたいなモノぐらい。
格闘技ファンにはチョイ嬉しく思えるシーンもある。地下格闘技大会に潜り込んでオクタゴンというケージ(金網)で囲われた舞台で低身長者と着ぐるみ野郎が闘うという内容。低身長者同士が戦う、いわゆる「ミゼット・プロレス」というものが実際に存在したが、このシーンはミゼット・レスラーと、まれに見かける着ぐるみレスラーによるバーリトゥード、MMA、総合格闘技が展開される。とはいえ、プロの格闘家やレスラーではないため、格闘色の強い技や打撃は一切ナシ。でも、それなりに格闘はやっていたという感じ。
そして痛々しいシーンといえば、ゲーター・レスリングだ!! ホンモノのゲーター(=ワニ)を相手に闘う(ワニの口を縛れば良い)という内容。挑戦者はもちろんワニの着ぐるみに身を包んだゲーター叔父さん。なんかオヤジギャグみたいなバトルだが、結果的には痛いだけではすまないことになる。ゲーター叔父さんの身に何が起こったのかは観てのお楽しみ。
ウサギちゃんとワニさん。可愛げは……皆無 |
競技とは関係ないが、シャワー室での低身長者による全裸バトルも観られるが、股間におもいっきりボカシが施されていたりというように低俗レベルはますます激しくなる一方だ。
本作は単なるおバカや下品、低俗な要素だけで成立しているわけではない。低身長者がハンディキャップを背負っていることに対する心境を吐露するシリアスかつ真面目なシーンも観られ、観る者の良心に強く訴えかけるメッセージをしっかりと描いているのは良いが、それも結局は女がムダにエロい色気を振りまいて台無しに……。
キャストの顔ぶれに関しても知名度の高い役者は、ゲーリー・コールマンぐらい。そう、かつて70年代後期から80年代中期にかけてTV放送され、我が国日本でも大人気となった『アーノルド坊やは人気者』のあの人である。残念ながら約2年前にお亡くなりになったが、亡くなる1年前に出演した役者人生最後の1本である。本人役で出演しており、劇中では低身長者を露骨に軽蔑する若い白人野郎に対し、闘争意識もあらわに殴りかかる勇ましい勇姿を魅せつけているのだ。彼の最後の活躍をじっくりと見届けることをオススメする。
他にも元バスケットボール選手(シカゴ・ブルズ)のスコッティ・ピッペンやアメリカポルノ映画界のビッグネームであるロン・ジェレミーも出演しており、印象に残ること間違いなしの活躍ぶりに要注目だ。
とにかくおバカと下品と低俗にまみれた本作。屁はプープーこきまくるし、女は乳房をさらけ出すし、下ネタ連発、気分を悪くさせる差別的発言……エロ・グロ・ナンセンスの三拍子が揃った最低映画であることに間違いはない。でも、おバカ映画ファンにとっては嬉しくてたまらない大爆笑作品であることを断言する。
『小人軍団VS着ぐるみ軍団 ~史上最低のクソ決戦~』
- 出演:リチャード・ホーランド、マーク・ハプカ、ゲーリー・コールマン
- 監督:ロン・カールソン
- 上映時間:85分
- 発売日:2012年1月27日
- 販売:ティー・オーエンタテインメント
- 価格:3,990円
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ささき・たかゆき
「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する
タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子
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