よいこのQ&A
Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!
ロシア製アクション映画といえば、上映時間が2時間を越える力作が多かったりする。 ロシア・アメリカ・ドイツの三国合作のB級娯楽アクション『SOLDLIER ソルジャー』は、なんと上映時間は90分にも満たないお手頃作品なのである。
ロシア軍特殊部隊アレクセイ(アレクセイ・チャドフ)は内務省高官サヴェーリから秘密指令を命じられた。それは、法では裁けぬマフィアどもを闇に葬るという極秘ミッションだった。アレクセイは"SOLVA=愛"というコードネームを与えられ、次々と悪党を消し去っていくが、"ヴァンパイア"と称される大物マフィアから、実はこのミッションが「サヴェーリが自身の政敵を抹殺するための陰謀」であったことを知らされる。アレクセイは組織から追われる身となり、愛する恋人カリーナも敵の人質になってしまう。信じていた正義に裏切られたアレクセイは、孤高の戦士となって巨大組織に真っ向から闘いを挑む……というお話。
90分以内の上映時間で見せ場のアクションシーンが満載で、観ていて飽きない作り方が実に素晴らしい。
まずは、アレクセイと2人の兄貴が在籍していた軍隊による爆破と銃撃戦が観る者をスカッとさせる。これぞコンバット・アクションの醍醐味という感じ。
続いて、アレクセイは怪傑ゾロに憧れている警官の兄貴に再会し、メキシコ料理店に入るが、この店が違法なギャンブルをやらかしているということで店内で大銃撃戦をド派手にやってのける。悪が蔓延るお店がムチャクチャになるが、破壊の美学すら感じられるド迫力のアクションシーンは最高だ。
その後はアレクセイがサヴェーリの指示通りに標的を暗殺しまくる。高所にスタンバイして遠方にいる標的を撃ち抜くスナイパー・アクションだけでなく、追っ手から逃れるべく突っ走るといった身体を張ったアクションもチラホラ観られるため、銃器や火薬に頼っているだけのアクション演出だけではない点も良きポイント。
途中でアクションは一旦お休みとなり、ロマンティックなシーンがしっかりと用意されている。アレクセイはカリーナという女性と出会い、恋に落ちる。純愛風のラブシーンが一気に情熱的なラブシーンに変化するが、シーンに相応しい音楽を巧妙に挿入し、大いに盛り上げているのが印象深い。また、クラブでダンスが苦手なアレクセイにカリーナが積極的に誘うシーンも実に微笑ましくて好印象。
その後はアクションが再開し、クライマックスに向けてヒートアップ。走行中の車が火を噴き、宙を浮きながら横転。カーチェイスではアレクセイがハンドルを握りながらもマシンガンをブッ放し、敵を追い詰める。爆炎で引火し、火ダルマになった男2人にトドメを刺すべく銃撃するという凄惨を極めたバイオレンス、アレクセイと怪傑ゾロ兄が自宅で飲みながらくつろいでいる最中に襲撃されて大ドンパチ……とにかく物量アクションを出し惜しみせずに盛り込んでいるのだ。
怒涛のクライマックスの末に、果たしてどんな結末が待っているのだろうか……。アレクセイは陰謀を暴いて無事に帰還できるのか?! 人質となった恋人カリーナを無事に救出きるのか?!
もう一つ特筆したいのはキャスティングだ。主人公アレクセイをアレクセイ・チャドフが演じているが、怪傑ゾロ大好き警官の兄貴をアレクセイの実兄アンドレイ・チャドフが演じている。実の兄弟が兄弟役を演じているが、劇中でも仲が良いね~。それにしてもアンドレイ兄貴…なかなかのアウトロー風熱血刑事を好演している。自分が逮捕された犯人が釈放され、自分が警察側から必要とされていないと感じられて即辞職するなんて…なんかチョイ格好良いじゃないか!!主役である弟を喰う勢いすら感じられるナイスなキャラクターとして印象深い。
とにかく未公開B級アクション映画にしては、なかなか見所満載で気楽な気持ちで楽しめる。監督&脚本のユルゲン・スタール、当然日本ではお馴染みではないフィルム・メーカーではあるが、彼の見せ場作りの巧さと観る者を楽しませるための工夫を大きく評価したい。 まぁ、ストーリー展開や設定は定石通りでありきたりのため、これと言って珍しいモノはない。だからこそ安心して楽しめるし、細かいことをゴチャゴチャ言わなければ文句なしに楽しめるのだ!!
『SOLDLIER ソルジャー』予告編
SOLDIER ソルジャー 投稿者 EarthGate
- 原題:「SOLVA」
- 出演:アレクセイ・チャドフ、アンドレイ・チャドフ、カリーナ・ハイデケル
- 監督:ユルゲン・スタール
- 上映時間:88分
- 販売:アースゲート
- 価格:5,040円
- 発売日:3月16日
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ささき・たかゆき
「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する
タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子
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