よいこのQ&A
Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!
年明け一発目は南米チリの人気アクションスターで“ラテン・ドラゴン”の異名を取るマルコ・ザロールが主演したアクション作品を紹介する。
監督はエルネスト・ディアス=エスピノーサで、マルコとタッグを組むのは、『KILTRO』(06)、『ミラージュ』(07)に続いて3度目だ。『ミラージュ』は我が国で初めてリリースされたマルコ主演作。本作ではスタイルの良さ(身長は190センチで足も長い)と端正な顔立ちを活かし、洗練されたスーツを着こなすマルコが印象的だった。
”マンドリル”ことアントニオ・エスピノーザ(マルコ・ザロール)は子供の頃に両親を殺害され、叔父の男手1つで育てられた。両親を殺害した片目の男に復讐するべくチリ隋一の殺し屋となった彼は、その男の娘ドミニク(セリーヌ・レイモンド)を愛してしまう。愛と復讐の間で揺れ動くマンドリルの運命は……。
主人公マンドリルの理想かつ憧れのヒーロー像は、TVドラマ「ジョン・コルト」の主人公コルトであり、部屋にポスターをいっぱい貼りまくるほどの大ファンである。これにはきっかけがあった。マンドリルは育ての親である叔父に亡き父親の職業を訪ねるが、叔父は口をつぐむ。だが、どうしても父親の職業を知りたいと食い下がるマンドリルに、『TVドラマ「ジョン・コルト」の主人公コルトによく似た仕事をしていた』とだけ告げる。それ以来、マンドリルはブラウン管の中でカッコよく活躍する強い男コルトに惹かれ、格闘技や射撃の練習に励むのだった。
女を口説くのもかっこいいコルトにならい、マンドリルは仇の娘であるドミニクに接近。堅いガードにやや苦戦するも、なんとかデートに持ち込むことに成功する。2人のデートシーンは、アクション以外の最大の見せ場。純愛丸出しの、プラトニックな恋愛劇か……と思いきや最終的にはベッドイン。まあ、大人の男女だしね……と苦笑いだ。
肝心なマルコの格闘シーンは随所に散りばめられている。相変わらずキレ味抜群の身動きと華麗なる攻撃に加え、アクロバティックな技が冴え渡る。本作のマルコは格闘だけに頼ることなく、銃も扱う。ド派手な銃撃戦を展開することはないが、先述したスラリとしたスーツ姿で銃を片手に持つマルコは、ハードボイルドな魅力満載で男でもうっとりしてしまう。さらに、高層ビルの上部に存在するある一室の窓ガラスを突き破り、真下のプールに落下するという実に危なっかしいシーンも忘れ難い。
マンドリルは復讐を完遂できるのか? マンドリルとドミニクの恋愛はどうなるのか? は観てのお楽しみだが、未公開アクション映画としてはかなり面白い上に、マルコ主演作にハズレなしということを実感させられた。
ちなみに、マルコ・ザロールは今年公開のダニー・トレホ主演、ロバート・ロドリゲス監督のアクション映画『マチェーテ・キルズ』に出演が決まっている。ついに彼の勇姿を映画館の大きなスクリーンで観られる時が来るのだ。それまでに『ミラージュ』と本作を見て予習しておくとより楽しめること間違いない。今年は、マルコが日本のスクリーンで大暴れする“ラテン・ドラゴン”元年となるかもしれない。
ちなみに、『マチェーテ・キルズ』は『マチェーテ』(10)の続編で、メル・ギブソンやソフィア・ベルガラ、ジェシカ・アルバにレディー・ガガと、話題性たっぷりのキャストが勢揃いしていることもあり、日本でも話題になることは必至。ジョニー・デップとの交際が発覚したセクシー女優アンバー・ハードも名を連ねている。
『愛と復讐のマンドリル』作品概要
- 2009年 チリ&アメリカ
- 原題:「MANDRILL」
- 監督・脚本:エルネスト・ディアス=エスピノーサ
- 出演:マルコ・ザロール、セリーヌ・レイモンド、アレハンドロ・カスティーリョ、ルイス・アラルコン
- 上映時間:90分
- DVD発売日:2012/11/02
- 発売・販売:イレブンアーツ
- 価格:3,990円
ささき・たかゆき
「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する
タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子