よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

今、もっとも熱いアクション映画スターと言えば、やはりジェイソン・ステイサムだと言っても良いだろう。男臭いルックスとキレ味抜群のアクションが魅力的な英国紳士である彼は、『トランスポーター』シリーズで新世代アクションスターとして世に認められた。我が国においても彼の主演作は次々と公開され、アクション映画ファンを存分に楽しませてくれている。

「すわ、ステイサム主演最新作か?」と思えるパッケージ。面白いアクション映画を期待したくなる

そんなステイサムにまったくよく似たルックスのフランス人俳優ロラン・コロンベールは“第二のジェイソン・ステイサム”と称され、人気急上昇中。そんな彼が主演を務めた未公開アクション『オートマチック』が我が国でリリースされたので、私は興味津々で鑑賞した。結果的に、これが未公開作品にしては結構面白い出来栄えだったため、満を持して紹介する。

元娼婦サラ(ナタリー・オーヴェル)が安ホテルの一室で殺害され、彼女の腹部に自動式拳銃=オートマチックが埋め込まれる。一方、汚職市長が牛耳る街で市役所職員として勤務する男ヤン・モロー(ロラン・コロンベール)も私服を肥やす権力者の指示に従って悪業に精を出す悪徳職員である。ある日、モローは何者かの罠にハメられ、大財閥ポンタムッソーに脅迫文書を渡してしまったことでトラブルに発展。その際、「銃を手に取るように……」という女の声がモローの脳裏によぎり、導かれるまま目の前のアタッシュケースの中に隠された自動式拳銃を手に取るや、自分の意思とは無関係に身体が銃と一体化し、見事なガン捌きでポンタムッソーと彼の私兵15人をいとも簡単に撃ち殺す。モローが握った銃は、実はサラの魂が宿った銃であると同時に、彼女の殺人事件の捜査を担当する余命いくばくもない老刑事リシャール(フィリップ・ビュレル)の想いが託されたものでもあった。モローは、運命に導かれながらも自身の身体の一部となった銃を武器に巨悪に真っ向から挑戦する……というお話。

冒頭からOPクレジットは、凝った映像表現で観る者を驚かせる。まずはドラッグを吸引し、卑猥な行為にふける男女がサイケデリックに登場。元娼婦サラが悪党丸出しの野郎に酷く痛々しい暴行を食らい、野郎の身体に数発の銃弾をブチ込むというハードなバイオレンスシーンが続き、トドメを刺すシーンとしてゴム手袋を装着した男が死んだサラの腹部に指先を突っ込んで銃を取り出すという少々グロテスクなシーンが観られる。初っ端から観る者に強烈なインパクトを与えるシーンのつるべ落としで、大きな期待を抱かせる。

銃の扱いに慣れていないためか、あまりカッコよくキマらないのがウィーク・ポイント

第1の見せ場は、サラの魂が宿った銃を手にしたモローがポンタムッソー一味と壮絶な銃撃戦を繰り広げるシーンだ。モローは自分の意思ではなく、サラに操られているかのように銃をブッ放しているため、ふらついた脚で回転するように撃つ姿は正直カッコいいとは思えないが、銃撃戦はスピーディーに描かれ、テンションの高いシーンとして仕上がっている。威勢良く連射されるマシンガンの銃弾が炸裂しまくり、敵は流血しながらバタバタと倒れ込み、モローの顔面は返り血にまみれ、バズーカー砲が倉庫を大爆破炎上させる。爆破シーンをはじめ、CGが使用されていることが丸わかりなのは、低予算B級アクション映画であることを考えるとご愛嬌なのだが、それでも派手なアクションシーンを演出することに成功していることを高く評価したい。

終盤はモローが自身の上司である極悪市長とその腹心どもを蹴散らすシーンで、モローと老刑事がタッグを組んで敵たちを一掃するべく大銃撃戦を繰り広げる。クライマックスは、モローが市長を追走して最終決着をつける。逃げる市長は道行く一般市民を無差別に撃ち殺し、公園で遊ぶ子供たちまでも血祭りにあげるといった極悪ぶりを最大限に発揮し、本作の持ち味であるバイオレンスのレベルもこのクライマックスでヒートアップしていることがわかる。

大迫力のクライマックスは必見だ

80分と短い上映時間内にアクション映画ファンが楽しめるシーンをしっかりと盛り込み、男臭い主人公のハードな活躍ぶり、悪の手によって腐敗した社会といったアウトローの世界は、まさに男性ウケすること間違いなしの男気系・男泣き映画だ。B級アクション映画ファンで面白くて気軽に楽しめる作品を楽しみたいという方にオススメしたい一作だ。

個人的には、ロラン・コロンベールがジェイソン・ステイサムに続き、世界に通用するアクション映画スターとして急成長することに強く期待している。いつか、ステイサムとド派手な大作アクション映画で競演する日が来ることを願ってやまない。

『オートマチック』

  • 2011年フランス映画
  • 原題:「Calibre9」
  • 出演:ロラン・コロベール、フィリップ・ビュレル、クリストフ・ラファグル、ナタリー・オーヴェル、フィリップ・ビュシエール
  • 監督・脚本:ジャン=クリスチャン・タッシー
  • 上映時間:80分
  • DVDレンタル開始日:2012/10/26
  • 発売・販売元:ミッドシップ

(C) Môrdred Films/Dark Factory 2011