よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

キャッチコピーからすると、パペット・モンスターが敵役だと思われそうだが、ワルはジンジャーデッドマンの方

『ジンジャーデッドマン』(05)の3年ぶりの続編である本作は、前作で監督を務めたチャールズ・バンドからシルヴィア・セント・クロワにバトンタッチし、バンドは製作のみを担当。ちなみに、クロワは共同で脚本も執筆している。

ケルヴィン(K-ヴォン)はB級映画の帝王である父親から相続した映画スタジオを運営しているが、あまりにも酷い映画ばかり制作しているために資金が底をついてしまう。スタッフや役者たちの不平不満は爆発し、ついに場内大乱闘にまで発展。そんな折、ポリー(ミシェル・バウアー)という女性スタッフがクッキーの箱を差し入れとして持ち込んでくる。中には殺人クッキーのジンジャーデッドマンが入っていた……。ジンジャーデッドマンはスタッフを次々と殺傷し、たまたまスタジオ見学に来ていた慈善団体のボランティア美女へザー(ケルシー・サンダース)と車椅子の青年トミー(ジョセフ・ポーター)も巻き添えを食らうハメに。ジンジャーデッドマンによる残虐行為を食い止めるべく、このスタジオで制作されていたB級映画のキャラクターであるパペット・モンスターたちが立ち上がる……というお話。

冒頭にて、前作を観ていない方にも楽しんでもらうためにダイジェスト映像が流れるのが良心的であり、内容も前作とまったく無関係の新たなるストーリーであるため、唐突にこの第2弾から鑑賞しても問題なしである。

特撮をはじめ、前作より少々パワーアップしていることがわかるが、特におバカ描写に全力が注がれているのが最大の特徴である。

とにかく下品極まりない下ネタが随所に散りばめられている。まずは、4体からなるパペット・モンスターたちのネーミングとルックスからして露骨な下ネタだ。中でも、男性器の形をした卑猥かつ気持ちの悪い"バイブ男爵"や頭に排泄物がこびりついた"クソミソボーイ"などはその真骨頂。おバカ映画ファンにとっては垂涎モノの設定だ。

見せ場であるスラッシャー映像もしっかりと用意されており、ホラー映画ファンの期待に応えるべく見応えのあるシーンがしっかりと描かれている点が素晴らしい。特に、ジンジャーデッドマンがチェーンソーでオッサンの手首をチョンパして血まみれになるシーンは、本作におけるスラッシャー描写の中では痛々しさと血生臭さが味わえる最高のシーンだと言える。

パペット・モンスターの1体である「"パイ"レーツ」。パイを強調していて卑猥に思えるが、エロス要素なしの単なるキモい存在

本作を盛り上げてくれるのは、ジンジャーデッドマンとパペット・モンスターだけではない。スタジオ見学に来た車椅子の青年トミーの変貌ぶりに注目して欲しい。前半部では映画マニアぶりをいかんなく発揮したキモオタ君という立ち位置で観る者の笑いを誘うが、中盤では映画スタジオに恨みを抱く悪役となってケルヴィンとヘザーを恐怖に晒す。

クライマックスは待ちに待ったジンジャーデットマンとパペット・モンスターとの最終決戦となるが、凄まじい攻撃や必殺技を繰り出しての直接対決ではないというのが最後のツッコミどころとなる。最終的にどのような形で決着をつけるのかは観てのお楽しみだ。ちなみに、ヒントを言えば、原題である「GINGERDEADMAN:PASSION OF CRUST」の「PASSION~」はジム・カヴィーゼルがイエス・キリストを演じた『パッション』(04)の原題をもじったものだから、キリストにまつわるエピソードがそのまんまネタにされているということ。

前作同様に上映時間は短いため、お手頃で観易いのが良い。おバカ映画ファンであると同時に残酷スラッシャー系ホラー映画ファンがお気に入りという究極の悪趣味最低映画ファンには強くオススメしたい。また、前作を観て面白く思えたという方はこの第2弾と我が国では同時リリースされた第3弾『ジンジャーデッドマン サイテー絶叫計画』(11)とぶっ通しで楽しんでいただきたい。

『ジンジャーデッドマンVSパペット・モンスター』作品概要

  • 2008年アメリカ
  • 原題「GINGERDEAD MAN2:PASSION OF CRUST」
  • 監督・脚本:シルヴィア・セント・クロワ
  • 出演:K=ヴォン、ケルシー・サンダース、ジョセフ・ポーター、フランク・ニコテロ、ブルース・デント、デヴィッド・デコトー、グレゴリー・ニコテロ、アダム・グリーン、ミシェル・バウアー
  • 上映時間:72分
  • DVD発売日:2012/08/31
  • 発売:エプコット
  • 価格:3,990円
ささき・たかゆき
「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する

タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子