よいこのQ&A
Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白ければ何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!
記念すべき第1回は元プロレスラーがS.W.A.T.リーダーに扮していろいろやらかします
S.W.A.T.……と言えば、往年の海外刑事ドラマ『特別狙撃隊 S.W.A.T.』(75~76)がもっともメジャーであり、そのリメイクである映画『S.W.A.T.』(03)もヒットした。
S.W.A.T.を扱った作品は他にも多々存在する。今回は、アメリカで大人気のプロレス団体WWEで大活躍し、引退後は役者活動に専念しているスティーヴ・オースティンがS.W.A.T.のリーダーに扮し、大暴れする娯楽アクション『スティーヴ・オースティン S.W.A.T.』を取り上げたい。
テート(スティーヴ・オースティン)が隊長を務めるS.W.A.T.チームはロス市警史上最強と囁かれるほど。あるスーパーマーケット強盗事件で人質を負傷させてしまった上に店内をムチャクチャにしてしまった彼らは、上司より無給停職処分を食らわされ、再訓練とFBI教官からの講習受講を命じられる。講習受講後にチームは訓練場所である廃墟に赴く。だが、この廃墟ではロシア人強盗団とイタリアン・マフィアが"あるモノ"を巡って相対していた。チームの存在に気づいた悪党どもは、チームの1人ブランコを殺害。これを機に最強S.W.A.T.とロシア・イタリア悪党連合軍のサバイバル・バトルロワイヤルが繰り広げられることに……。
人質の安全? 二の次です!(キリッ
序盤で覆面男数名が銃をブッ放してのスーパーマーケット強盗事件発生からテンポの良い作品だと期待が高まる。そして、S.W.A.T.チームが店内に入り込んでからがスゴい! テート隊長は敵の一人をボコボコにしながら棚に陳列されている商品をメチャクチャにするわ、人質救出&敵逮捕のために遠方から人質の頭をめがけて商品を投げつけるわ……最強チームと言っても、人質やお店の安全を一切考慮せず、ただ身体を張って暴れまくって事件解決というムチャ系最強チームなのだ! よく考えたら、元レスラーのオースティンや新世代黒人アクションスターのマイケル・J・ホワイトといった肉体派が隊員を演じているのだから、派手に暴れまわる様子は大きな見どころと言えよう。
このチーム、ムチャクチャなのは事件解決手段だけではない。メンバーの1人が、市民向けスピーチで「自動小銃を持たせてくれた市民に感謝」と伝えようとか言うわ、上司の指示で受講することになったFBI新人講習ではマジメに聞かない上に教官からの質問にはどう見てもふざけているとしか思えないような自分たちの持論を言いまくるわ……とにかく行動も言動も性格もハミダシのアウトロー的警官そのものであり、真面目なS.W.A.T.ではないことがよくわかった!
アクションのセオリーはきっちり踏襲(若干やり過ぎの感あり
ストーリーの本筋であるS.W.A.T.対ロシア・イタリア悪党連合軍とのバトルだが、はじめはS.W.A.T.チームも訓練目的のため実弾が込められていない銃器のみ携帯しているというピンチ状態。敵を何とか持ち前の腕力と格闘センスで蹴散らし、何とか実弾入りの銃を手にしてから……本格的なバトルのスタートだ。
マシンガン撃ちまくりの銃撃戦をメインとした見せ場が面白いが、ド派手なアクション演出ばかりを押し出しているわけではない。でも、敵のトラックの大爆破、車でのチョイとした追いかけっこ……といったアクション映画における三大要素である爆破・銃撃戦・カーアクションをしっかりと描いているのはよろしい。
中でもクライマックスのテートとイタリアン・マフィア側の最強用心棒タリファエロの格闘肉弾戦は圧巻!!タリファエロ役のキース・ジャーディンはレスラーではないものの、UFCをはじめ、日本ではパンクラスに参戦した格闘家。オースティンもジャーディンもプロ格闘技の経験者であるため、バトル内容も殴る蹴るに加え、抱え込んで叩きつける、腕ひしぎ逆十字、締め技……といった2人のキャリアを活かした格闘色の強いバトルに仕上がっているのが特徴的だ。アクション映画ファンだけでなく、プロレスや格闘技ファンにも非常にウケの良いシーンに仕上がっている。
キャラも立ってる! いろいろ立ってる!
面白いのはアクションやS.W.A.T.チームのキャラぶりだけではない。敵キャラにも注目して頂きたい!
まずは、ロシア人強盗団の女。これがまたクールビューティと呼ぶに相応しい美女! 敵キャラに魅力的な美女を用意したのは大正解! 黒いロングヘアー、黒いレザーのジャケットにロングブーツ……衣装もカッコいい! 敵キャラだけに高飛車な悪女っぽさがにじみ出るが、それ以上にやることは結構凶暴。人の首をへし折るのは朝飯前らしく、男勝り丸出しの見ている方が痛い攻撃を平然とした表情で繰り出してくれる。そんな悪女をイタリアン・マフィアの1人がセクハラっぽさを醸し出しながらも口説き、尻を揉みしだくシーンはインパクトが強い。是非リピート再生して観てもらいたい。
次は、マイケル・エクランド扮する"あるモノ"に深く絡む欺師ケニー。いじられキャラの上にゴチャゴチャと無駄口を叩きまくるコメディー・リリーフ的存在で、観る者を笑わせてくれる。だが、重要な役どころとしてそれなりに活躍ぶりを見せつけてくれる。
他にも二転三転する展開、最後の最後にあっと驚く結末が待ち受ける……といったエンタテイメント性を全面に押し出し、最後までじっくりと楽しめるように作られた傑作アクションだ。
(C) 2011 Hangar 14 Films Inc.
『スティーヴ・オースティン S.W.A.T.』
- 原題:「TACTICAL FORCE」
- 出演:スティーヴ・オースティン、マイケル・ジェイ・ホワイト、マイケル・シャンクス
- 監督:アダモ・パオロ・クルトラロ
- 上映時間:89分
- 発売/販売:アルバトロス
- 価格:3,990円
ささき・たかゆき
映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する
タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子