4回に渡ってNokiaに対する筆者の想いを伝えてきた本連載も今回で最終回である。やまない魅力にあふれたNokiaは今後どのような製品展開をしていくのだろうか? 最終回は今後のNokiaの製品展開を考察してみよう。

利用者が「欲しい」と思う製品を提供しつづけるのがNokiaの姿

今年もNokiaは精力的に新製品を発表し続けている。ローエンドからハイエンドまでまんべんなく製品を投入し続けるこのNokiaのスタンスからは、携帯電話市場全体を盛り上げようとするマーケットリーダーとしての役目も見えてくる。

調査会社IDCのレポートによると、今年第1四半期のNokiaのマーケットシェアは35.5%と、2位Motorolaの17.7%を2倍も引き離した。これはNokiaがシェア1位を目指したからではなく、利用者が欲しいと思える製品を絶え間なく市場に供給し続けたことの結果が引き起こしたものと筆者は考えている。以前の連載に書いたように利用者層を11にも区分することで、きめ細かな製品展開を行うことが可能となっており、それぞれの利用者層から絶大的な支持を得ているわけだ。これがNokiaの商品展開の「基本姿勢」であり、これが変わらぬ限り今後もNokiaの強さが変わることはないだろう。

Nokiaはテクノロジリーダーとして業界初の機能を搭載することも多い。たとえば非接触型IC「NFC」に対応したNokia 6131 NFCは商業端末としては世界初のNFC対応機である。またモバイルTV対応では、サイズが大きく高価なNokia N92のみがラインナップされていたが、今年2月には価格を引き下げサイズも小型化したNokia N77が発表された。モバイルTV端末はSamsung、LG電子の韓国勢がすでに製品投入では一歩リードしているが、N77のように高機能でかつ手ごろな価格とサイズの端末を投入することは、Nokiaがこの技術に本気で市場参入してきたことに他ならない。NFC、モバイルTVに対応した普及モデルの登場は、Nokiaがこの両技術を今後の重点技術に置いていることを表しているといえそうだ。

またインターネットと携帯電話の融合も、通信キャリアのサービス普及を待たずにNokia自身が積極的に推進している。Blogサービスや写真共有サービスへの対応アプリケーションを自らリリースするほか、EseriesのVoIP機能や各種Pushメールへの対応などは、携帯電話を「電話回線を利用してサービスを受ける道具」から「インターネットサービスと融合した小型デバイス」へと進化させるものだ。そういえばNseriesの一部もインターネットサービス機能を標準装備した「Internet Edition」というモデルが存在している。Wi-Fiの搭載もハイエンド端末では標準装備となっており、Nokiaの目指している道は単純な「携帯電話の高機能化」ではなく「手のひらに乗るコミュニケーション&情報デバイス」であろうと筆者は考える。

なお、もちろんのことながら、携帯電話を「電話」として使う利用者のことも忘れてはいない。この5月には新興市場向けのエントリモデルが実に7機種も発表された。エントリ初のカラー液晶搭載モデル「Nokia 1208」や、同じくエントリ初のBluetooth搭載モデル「Nokia 2630」などこのクラスでも魅力的な製品を続々と投入するあたりはさすがである。エントリーモデルでNokiaファンを作れば将来、上のモデルへ少しずつアップグレードしてくれる可能性があるわけで、ローエンドであっても気を抜かないNokiaの製品展開にもNokiaの強さが現れていると言えるだろう。

N77はN73(ソフトバンク705NK)と同サイズながらDVB-Hのモバイル放送に対応している

2630(左)はエントリモデルながらもBluetoothを搭載。1208(右)はエントリ初のカラー液晶搭載

拝啓、Nokia殿 - 一生ついていくことを誓います!

この連載を執筆している間も、筆者の居住する香港では「Nokia 8800 Sirocco Gold」「Nokia N95」「Nokia 5700 Xpress Music」「Nokia 5070」と、毎週のように新製品が投入されている。いずれも香港市場では連日のようにメディアが取り上げる注目モデルとなっており、N95のように10万円を超える価格ながらも発売日に完売してしまうモデルもあるくらいだ。5月以降は発表されているだけでもNokia N76、Nokia E61i、Nokia E90、Nokia 6290の登場が予定されており、これらの端末すべてが携帯ショップの店頭を賑わすに違いない。

18金メッキだが落ち着いた色合いで高級感のある8800 Sirocco Gold

デュアルスライドでメディアプレーヤーとして利用しやすいN95

このように飽きることなく新製品を投入し、それらすべてに特徴があるNokiaの端末を追い続けていくことは本当におもしろい。各端末それぞれの魅力もさることながら、Nokiaを通して海外の携帯電話市場の動向を垣間見ることもできるからだ。Nokiaが携帯電話を生産し続ける限り、筆者は永遠にNokiaを追い続けていくだろう。「Nokiaに一生ついていきます」。そう宣言して本連載を終了させていただくことにしよう。