諸君、私はNokia 3210が好きだ
筆者が最初に使い始めた海外端末はEricssonのものであったが、半年ほどで破損させてしまい買い換えることになった。当時(1999年)はNokia、Motorola、Ericssonの3社が海外シェアを15%程度と仲良く3分していた時代であり、またNEC、Sony、Panasonicなど日本メーカーも海外ではまだまだ強かった時代でもある。今より種類は少ないものの携帯ショップのショーウィンドウには様々な端末が並んでおり、どれを買おうか悩む中で筆者の目に留まったのは発売されて間もない新製品、Nokia 3210だった。
デザインが好きだ
Nokia 3210はNokia伝統のストレート形状ながらもアンテナが本体に内蔵されており、すっきりしたデザインが特徴だった。またボディーカラーも赤や緑、黄色などカラフルであり、当時黒やシルバーが主流だった携帯電話の中では一際目立つものだった。Ericssonも同様にカラフルな端末を出していたもののNokiaが優れていたのはXpress-on Coverの採用で、ボディーがワンタッチで着せ替え可能だったのだ。このため迷うことなくこのNokia 3210を購入したが、これが筆者とNokiaの初の出会いであった。
直感的な階層式メニューが好きだ、Xpress-on Coverが好きだ
初めて使ったNokia端末だが、直感的に操作できる階層式メニューは英語のマニュアルに難儀した筆者にとってはありがたいものであった。基本操作だけ覚えれば他の操作も全て同等に行えるのだ。またXpress-on Coverは街中でちょっと気に入ったものを見つければその場で気軽に交換ができる楽しみがあった。使いやすく楽しい、このようなメーカーは他にはないと思えたもので、次に買い換えるときもNokiaにしようと思うようになっていたのである。
諸君、私はNokia 8210が大好きだ
その次に買い換えたNokia 8210は手のひらに乗る小型サイズでアンテナレス、ディスプレイは5行で、赤外線を内蔵しデータ通信対応など当時としては最先端の端末と言える1台だった。驚いたのはNokia 3210より機能が大幅に増えたにもかかわらず、同様の階層式メニューのためマニュアルを読むことなく全ての操作を覚えることができたことだ。Nokia 8210は使い勝手のよさから海外でも大ベストセラーとなるのだが、筆者もこれを使い始めてから完全にNokiaの虜になってしまったのである。
Nokiaの精錬された新機種が絶妙なタイミングで出ると心が踊る
その後はNokiaのシェアが徐々に上がり、他社を大きく引き離すことになる。香港の携帯ショップでもNokia端末の割合が少しずつ増えていった。Nokia 8210のボディーを金属としたプレミアムモデル「Nokia 8850」が発売されたときには「借金してでも欲しい」と思わせたものだ。また8210の後継機としてデザインが精錬されたNokia 8250や8310など次々と「今の端末を買い換えたい」と思わせる端末がリリースされていった。Nokiaは新機種投入のタイミングが絶妙であり、「次はどんな端末が出てくるのだろう」と常に期待を持たせてくれたのだ。ハイエンドのCommunicatorシリーズやスマートフォンとして初登場したNokia 7650などは、香港では新聞や雑誌に大きく取り上げられ芸能人がこぞって使うなどいずれも超話題の商品となり、筆者も興奮しながらそれらの機種を買い求めたのであった。
8210の後継となる8250(左)や8310(中)。このスタイルはその後Nokiaの主流となり、カラー液晶やカメラ搭載端末も出てきた(6610i、右) |
Nokiaの顔でもあるCommunicator初のカラーモデル、Nokia 9210やS60スマートフォン初代のNokia 7650は香港でも大きな話題となった |
開発コンセプトで、デザインで、ポリシーが見えてくる様は感動する
こうしてNokia端末を使い続け、買い換えていくうちに筆者にはNokiaの製品開発コンセプトがなんとなく感じられるようになっていたのだ。新しい機種が発表されデザインが大幅に一新されても、ボタンの配置やカラーリングなどは使いやすさが工夫されていたり、デザイナーの思想などがうっすらと伝わってくるように感じられた。自動車など歴史の長いメーカーの製品同様に、製品ポリシーが見えてくるとますますそのメーカーの製品を見ることが面白くなるわけだ。
Nokia専門販売店の迅速さは胸がすくような気持ちだ
またNokiaの専門販売店である「Nokia Store」や修理センターである「Nokia Care」のスタッフの接客態度や知識の豊富さにも感銘を受けることが多かった。Nokiaは香港では現在「1時間修理」を基本としているが、これは他のメーカーは追従できていない。新製品をきっちりした応対で販売し、故障しても迅速な対応をしてくれる。こんなところからもNokiaをさらに好きになるようになっていったのだ。
この地上に存在するありとあらゆるNokiaが大好きだ
一企業の香港駐在員であった筆者だが、Nokiaに興味を持ち好きになればなるほどNokiaを見ることが面白くなっていった。展示会に行きたい、ショップに朝から駆けつけたい等、仕事をしている時間すらもったいなくなるようになるまで興味を持ってしまい、気がつけば退職し現職(携帯研究家及びライター)に転じることになったのである。日本ではほんの数機種しか発売されていないNokiaだが、海外では年間20機種以上もの新製品を発売している。筆者は今でも出てくる製品それぞれに製品ポリシーを感じ、感銘を受け続けている。次回はこのNokiaの魅力をさらに詳しくお伝えする。