みなさんは、「ダイエットの大敵」というとなにをイメージしますか? 炭水化物の他、「脂質」を思い浮かべた人も多いはずです。たしかに、脂質のとり過ぎは体にとってよくありません。でも、脂質にも体にとって重要な働きがあり、一概に「悪者」ともいい切れないのです。そして、ひとことで脂質といってもさまざまな種類があります。どうせなら、なるべく体にいい、それこそ「悪者」ではない脂質を選びたいものです。

  • 「あぶら」は悪者ではない! 体にいい脂質選びのポイント /パーソナルトレーナー、管理栄養士・西巻草太

    撮影場所協力/Chicken Gym(渋谷)

■脂質はさまざまな重要な働きを持つ3大栄養素のひとつ

脂質は、タンパク質、炭水化物と並ぶ3大栄養素といわれます。それだけに、わたしたちの体にとって重要な働きを持つものです。

その働きとは、まずはみなさんもご存じのように体のエネルギー源であること。また、皮下脂肪となって体を保護したり、体温を保ったり、細胞膜やホルモンの原料となるといった働きも持っています。さらには、ビタミンA、D、E、Kなど、あぶらに溶けやすい脂溶性ビタミンという種類のビタミンの吸収を高める働きもあります。

つまり、脂質の摂取量をまったくのゼロにしてしまうと、体にさまざまな不具合を招くことになる。ただ、そうはいっても、とり過ぎには注意が必要です。体のエネルギー源であるがゆえに、単純に太ってしまうからです。3大栄養素のうち、タンパク質と炭水化物は1gあたり4kcalですが、脂質はその2倍以上の1gあたり9kcalにもなります。

ですから、「太りにくい」など、デメリットがなるべく少ない脂質を意識的に選んで必要量を摂取することがポイントです。

■代表的な脂質の種類とそれぞれの特徴

脂質の主な構成成分は脂肪酸というもので、その種類によって、脂質は次のように分類されます。

【主な脂質の種類】
1.トランス脂肪酸
2.飽和脂肪酸
3.一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)
4.多価不飽和脂肪酸(オメガ3系、オメガ6系)

ひとつ目の「トランス脂肪酸」の脂質は、植物油を高温にする過程で生成される脂肪酸であり、マーガリンやショートニングなどに含まれます。このトランス脂肪酸の脂質には、善玉コレステロールを減らして悪玉コレステロールを増やしてしまうというよくない特徴があります。

ふたつ目の「飽和脂肪酸」の脂質にも注意すべきです。飽和脂肪酸の脂質は、さらに動物性と植物性のふたつにわけられますが、そのうち、肉や乳製品、卵など動物性飽和脂肪酸の脂質を過剰摂取すると、トランス脂肪酸の脂質と同じように悪玉コレステロールを増やして動脈硬化のリスクを高めます。

一方、同じ飽和脂肪酸の脂質でも、植物性のココナッツオイルやパームオイルは優秀な脂質です。とくに、その主成分の中鎖脂肪酸(MCT)を抽出したMCTオイルというものは、脂質のなかではエネルギーとして代謝されやすいという特徴を持っています。そのため、エネルギーを脂質から得て糖質を制限するダイエット法に向いています。

■体によくない資質の特徴は「常温で固体」

また、3番目の「一価不飽和脂肪酸」、4番目の「多価不飽和脂肪酸」の脂質も優秀なものです。一価不飽和脂肪酸の脂質としては、オリーブオイルや菜種油、アボカドの脂質などが挙げられます。

多価不飽和脂肪酸の脂質は、有名なDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を含む青魚の脂質や、トウモロコシ油、大豆油など。最近、スーパーでもよく見られる、エゴマ油やアマニ油もその一種です。

これら、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の脂質は、トランス脂肪酸や動物性飽和脂肪酸の脂質とは対照的に、コレステロール値を下げてくれたり血液をさらさらにしてくれたりするという働きを持っています。それだけ、動脈硬化といった血管疾患のリスクを下げてくれるというわけです。

ここまで、脂質の種類について解説してきました。「結局、どれがよくてどれが悪いの?」と混乱してしまった人もいるかもしれませんね。そういう人に、体にあまりよくない脂質の見抜き方をお伝えしましょう。

体にあまりよくない脂質には、基本的に「常温で固体」という特徴があります。マーガリンなどトランス脂肪酸の脂質も、肉の脂やバターなどの動物性飽和脂肪酸の脂質も、どちらも常温では固体です。それらをなるべく避けるようにすればOKです。とはいえ、先にお伝えしたように、体にいい脂質も高カロリーであることには変わりませんから、いずれにせよとり過ぎには気をつけましょう。

■格好いい逆三角形スタイルをつくる「サイドレイズ」

ただ、普段の生活のなかで、完全にすべてを良質な脂質に変えることは難しいですし、良質な脂質でもとり過ぎてしまう場合もあるでしょう。そんなときには、その分をエネルギーとして消費しなければなりません。そのためには、筋肉量を増やして基礎代謝を上げることが大切。そこで今回は、「サイドレイズ」という家トレを紹介します。

肩の筋肉である三角筋は、上半身のなかでは大きな筋肉であるため、鍛えればそれだけ基礎代謝を上げることができます。しかも肩の筋肉ですから、格好いい逆三角形のスタイルを手に入れることもできます。

  • 肩幅に足を開いて立ち、両手にダンベルを持って体の横に構える。

  • 肘を軽く曲げたまま、手の甲が上になるようにゆっくりと肩の高さまでダンベルを上げ、ゆっくりと元の姿勢に戻す。15回×3セットを目安に。

■代謝されやすいMCTオイルを使った「鯛のカルパッチョ」

脂質の多いドレッシングは、それこそダイエットの大敵といわれます。でも、代謝されやすいMCTオイルを使ったドレッシングなら安心。MCTオイルと低脂質高タンパクの鯛を使ったカルパッチョは、脂質をほとんど気にせずに食べることができます。野菜はスライスした玉ねぎやベビーリーフといった葉野菜などをお好みで用意しましょう。

【鯛のカルパッチョ MCTドレッシング】

●エネルギー約320kcal タンパク質22g
●使用する食材 
鯛(刺し身用)100g、お好みの野菜50g、MCTオイル大さじ3、レモン汁大さじ1、塩こしょう

1.鯛をスライスして皿に盛りつけ、野菜を散らす。
2.MCTオイルとレモン汁、塩こしょうをよく混ぜたドレッシングをまわしかけてできあり。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)、清家茂樹(株式会社ESS) 写真/櫻井健司