ようこそコメントアートの世界へ! 華麗な職人技に酔え!

こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

今回ご紹介するのは、ニコニコ動画最大の特徴であるコメント機能を使って華麗な妙技を見せるコメントアートの世界。

ヘビーなニコニコユーザーなら誰しも一度は"コメント職人"に遭遇したことがあることでしょう。限られた機能(文字色や大きさの変更・表示時間の変更など)をフルに活用し、動画内に凝ったイラストを描き出す職人たちの技は、楽しい動画をさらに盛り上げてくれる芸術作品。

しかし悲しいかな、ニコニコ動画のコメントは新しいコメントが投稿される度に流されてしまい、美麗な職人技もいつかは消えてなくなってしまいます。

そんな中、投稿者コメント機能(動画投稿者だけができる特別なコメント機能のこと。他のコメントと違って投稿者本人が消さなければいつまでも残る)を使って神業としか言えないアートを作り上げたうｐ主たちに出会いました。

今回の一押しは、そんなコメントアート作品の中でも僕が一番感動したこちらの動画。現在再生数は27,000回ほどですが、この100倍ぐらい再生されるべきだと真剣に思います。

「メルト」のメジャーデビューも記憶に新しいryo氏による珠玉のバラード「初めての恋が終わる時」の歌詞からヒントを得て創作した物語を、なんとうｐ主自ら投稿者コメントでPV風に仕立て上げた恐るべき作品。

……なお、投稿者コメントには投稿制限数が設定されているため、うｐ主はいったん別の動画に投稿者コメントを書き込み、それをキャプチャーしてつなげるという手法を採っているとのこと。技術もすごいけど、その努力はもっとすごい!

物語の内容は、夢を追う高校生の男女による切ないラブストーリー。楽曲の盛り上がりに合わせた演出が神懸かっており、さらにストーリーがこれまた歌詞にぴったりとハマっていて、ラストシーンでは僕も思わず目頭を熱くしてしまいました。

うｐ主は他にもいくつかのコメントアート動画を投稿しており、どれもすさまじい完成度でいったいどうやっているのか検討さえつかないのですが、続いてはそんなうｐ主によるこちらの動画。

かつてニコニコ動画のMAD界を席巻した人気アニメ「マクロスF」のワンシーンを、全部投稿者コメントで再現するという驚異的なコメントアート動画(そして今度はフルカラー!)。

これにはもう、言葉すらありません……。タグに登録されている「謎の技術」という言葉が、この動画を見た視聴者の気持ちを的確に代弁してくれています。

さて、続いての動画は、別のうｐ主による作品です。歌詞をめちゃくちゃかっこよく投稿者コメントで表現したこちらのPV動画。

「Bad Apple!!」という曲名については聞き覚えがないという方も多いかと思いますが、これはニコニコ動画で大人気のゲーム作品「東方」シリーズから生まれた楽曲で、別にそれ自体は詳しく知らなくても動画は問題なく楽しめますのでご安心ください。東方シリーズについてはとてもここでは書ききれないので、そのうち改めてご紹介しようと思います。

音楽系の動画が多数を占めるニコニコ動画では、コメント職人の中でも「歌詞職人」と呼ばれるクリエイターがもっともメジャーなジャンルとして知られています。とはいえ普通は曲に合わせて動画下部に歌詞をタイミング良く表示していくぐらい(それも十分すごい技術)なのですが、このうｐ主の手にかかれば歌詞を表示するというただそれだけのことでさえ芸術的な作品になってしまうのです。

ちなみに、この動画の投稿者コメントはキャプチャーしたものではなく直接書き込まれたもの。ということはつまり、たとえば動画をダウンロードして別の環境で見たとしても、ただまっくらな画面に曲が流れるだけになってしまうわけです。文字通り、ニコニコ動画でしか見ることのできない芸術――お見事としか言いようがありません。

お次は歌詞職人による動画を2作品続けて。

書き忘れていましたが、これまでご紹介してきた動画はいずれもニワン語と呼ばれる特殊なスクリプト機能を使って制作されており、投稿者による「ニコスクリプト公開」というタグが追加されなければその技術の中身が視聴者には公開されることはありません。

なので、もし「ニコスクリプト公開」タグがついている動画を見つけたら、そっと「投稿者コメント」の欄をのぞいてみてください。うｐ主の努力の跡がほんの少し垣間見えるかもしれませんから……。

ということで、投稿者コメント動画ばかりご紹介してきましたが、それというのも投稿者以外のコメントはここでご紹介してもすぐに流れて消えてしまうから……というのは冒頭に書いた通りです。

しかし、世の中にはそこらへんをちゃんとわかっていて、コメント職人の美技をそのまま保存して動画としてアップしてくれる人もいるのです。コメント職人はもちろんすごいのですが、そうやって見逃した人のために尽力してくれる人もまた、ニコニコ動画の宝ですね。

言わずと知れたニコニコ動画を代表するメドレー動画「組曲『ニコニコ動画』」が200万再生を達成したとき、本家動画内はお祭り騒ぎになり、ものすごい勢いでコメントが殺到。その中で投稿された職人たちの技はあっという間に流されて消えていってしまいました。

この動画には、今はもう懐かしい2年近く前のお祭りがそのままの形で保存されています。最近ニコニコ動画を見始めたという方にとっては、どこか新鮮な気持ちで見ることができるのではないでしょうか。

ニコニコ動画内で「コメント動画」タグが付けられている動画は7月17日現在で275件。たったそれだけしかないのです。いかに職人の技術が真似のできないレベルなのか――ということがよくわかったところで、今回はこれまで。

また次回の記事でお会いしましょう!

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P)　※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。