パナソニックは、Vieureka(ビューレカ)プラットフォーム事業への取り組みについて説明。これまでの小売店舗、建設現場への導入に加えて、パナソニックおよびパートナーを通じて、新たに介護施設向けおよび公共/施設向けソリューションを提供することを発表した。今後、パートナーの連携を強化することで、製造現場などへの導入も促進し、今後3年で10億円規模のビジネスを目指す考えだ。
Vieurekaプラットフォームは、カメラ端末側で映像をAI処理するIoTエッジコンピューティングを実現するもので、本体でAIによるデータ処理が可能な「Vieurekaカメラ」と、カメラ上で実行されるアプリケーションを遠隔地から管理できるクラウドベースのマネジメントソフトウェア「Vieureka Manager」、アプリケーションを開発するための「ソフトウェア環境」で構成されている。2017年6月に発表して以来、これまでに、店舗でのマーケティング用途、工場での従業員の行動管理などで活用されている。2019年4月からは、パートナープログラムを開始し、現在、42社が参加している。2020年4月には、Vieurekaカメラの新機種として「VRK-C301」を発表。新たにGPUを搭載したことで、性能を3.3倍に向上させ、ディープラーニングにも対応できるようにしている。
新たな社会インフラになろうとするIoTカメラ
パナソニック テクノロジー本部事業開発室エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当の宮崎秋弘氏は、「Vieurekaは、カメラによるセンシングに着目した事業。映像として蓄積するのではなく、映像からデータを解析して、そのデータを蓄積し、活用することで、世界のいまをデータ化する新たな社会インフラを創造するものになる」とし、「だが、データを活用したソリューションはパナソニック1社では実現できない。プラットフォーム型の事業とすることで、パートナーと連携し、様々なシーンに利用できるように新たなサービスを創出していきたい」としている。
IoT.kyotoが開発した「Vieureka顔認証ベーシックパック」では、Vieurekaカメラで人物検出を行い、クラウド上の認証技術を活用して顔を認証。電子錠やフラッパーゲートなどの外部機器と連携して、入退出管理が可能になる。同社では、目的に合わせてオプションをチョイスするセミカスタムメイドIoTパッケージとして「IoTスターターパック」を用意。そのなかに、Vieureka顔認証ベーシックパックをラインアップした。
IoT.kyotoを展開するKYOSOのエバンジェリストである辻一郎氏は、「Vieureka顔認証ベーシックパックでは、電子錠と連携することで入退室管理を行えるようになった。当社でも、指紋や静脈認証を用いた電子錠システムを導入した経緯があるが、システムが100万円以上と高価であること、オフィスが複数ある場合は、施設ごとに指紋などを登録しなければならず、さらに投資コストも膨らむという課題があった。さらに、認証デバイスは電子機器であるため、アルコールなどによる消毒が困難であり、新たな社会環境のなかではその点も課題となっている。Vieureka顔認証ベーシックパックを活用することで、非接触であり、統合管理が可能で、安価な人物認証基盤を実現できる」とした。
2020年3月からシンガポールのコワーキングオフィスのチェックインシステムに試験導入しており、Vieureka Managerによる遠隔管理機能によって、日本からも遠隔監視が可能であるほか、AWSが提供する認証サービスとの連動など、AWSとの親和性も評価しているという。
「iPadの内蔵カメラを使用して顔情報を登録。どこのオフィスに入室できるようにするかを設定するだけで済む。認証はAWSが提供するAmazon Rekognitionサービスを活用。制御はすべてクラウドで行うことになる。リアルタイムで顔認証の結果を表示し、ログも取得できる。認証ではじかれた登録されていない人の顔の情報も残すことができる」という。
Vieureka顔認証ベーシックパックの価格は50万円。電子錠などとの外部機器連携は個別見積になるが、「既存の認証システムの半額以下で導入できる」としている。
また、同社では、Vieurekaプラットフォームを活用して、駐車場の満空状況をVieurekaで推論するソリューションの開発を進めており、「海外において商談を進めている」とした。
インバウンドやケアサービス、現場にも拡がる活用事例
一方、AIやIoTの研究開発を行うアプリズムでは、国籍推定サービスを開発。ディープラーニングのモデルを活用して、リアルタイムで日本人、中国人、韓国人の国籍を推定。国籍とともに、年齢、性別などの属性分析が可能になり、それをもとにした店舗での最適な商品の品揃えなど、マーケティングに活用できるようになるという。
パナソニック テクノロジー本部事業開発室エッジコンピューティングPFプロジェクト 主務の茶木健志郎氏は、「これはインバウンド需要に対応するために開発したものであり、2020年6月から、β版サービスの提供を開始している。コロナ禍で状況は変化しているものの、空港の店舗などへの導入が検討されている。Vieurekaプラットフォームを活用することで、アプリの開発コストが大幅に軽減でき、新規案件の獲得にもつながっている」という。
また、パナソニックのスマートエイジングプロジェクトとして展開している介護業務支援サービス「LIFELENS」においても、Vieurekaプラットフォームを活用。カメラ映像によるセンシングと、シートセンサーのデータを連携することで、介護施設における見守りをリアルタイムで実現しているという。
介護事業を展開するHITOWAケアサービスでは、LIFELENSを10棟660室に導入。夜間巡視業務が91%も削減でき、入居者の生活リズムの見える化も実現できたという。
企業における教育向けの活用事例として、画像処理技術などを開発しているモルフォの事例も紹介した。新入社員研修の一環として、Vieurekaカメラから収集したデータをもとに、同社のディープラーニング推論エンジンを活用した人物追跡デモシステムを開発したという。
そのほか、自動認識技術の研究開発などを手掛けるビーコアは、カラーバーコードで仕掛品在庫がどこに、どれぐらい滞留しているのかを可視化するソリューションを提供。ITサービスのブレインズテクノロジーも、生産現場における異常検知を行うVieurekaソリューションを提供している例を示した。
「42社のパートナーから様々な提案をいだいている。公表できる段階で発表していきたい」(パナソニックの宮崎氏)と述べた。