パソナ・パナソニック ビジネスサービス(PBS)は、同社が提供する健康経営ソリューション「COMORE BIZ(コモレビズ)」において、パナソニックの高級オーディオ「テクニクス」の音響システムを採用した新たな空間ソリューションを開発。企業のオフィスやカフェのほか、今後の利用拡大が見込まれるサテライトオフィスなどに導入する。

  • 健康経営ソリューションのCOMORE BIZと高級オーディオのテクニクスが協業

    健康経営ソリューションのCOMORE BIZと高級オーディオのテクニクスが協業

パソナ・パナソニック ビジネスサービス 代表取締役副社長 岩月隆一氏は、「コモレビズが培ってきたエビデンスと、テクニクスの圧倒的な音質を組み合わせることで、唯一無二のユニークな価値が提供できるようになる。人間が持つ自然と一緒にいたいという本能を捉え、快適と感じる空間で、ストレスを削減し、集中力の向上を実現するワークプレースを提供できる」とする。

  • パソナ・パナソニック ビジネスサービス 代表取締役副社長 岩月隆一氏

職場環境に緑と音の心地よさを

オフィス空間に、テクニクスの高音質再生技術や音響解析、高精度チューニング技術を活用したサウンドシステムを採用することで、自然界のような音に包み込まれ、リラックスしながら集中できる快適な職場環境を構築。聴覚に働きかけることによって、生産性向上を図る空間を提案するという。

具体的な製品として、テクニクスのサウンドシステムを格納したボックスの上部に、コモレビズが提案する最適な「緑視率」に設計した植物を配した「オリジナルビルトインプランター」を開発。スピーカー本体を意識させず、天井から空間全体を包み込むような音場を形成し、独自に収音および編集した自然環境音のハイレゾ音源を、指向性を制御しながら高音質で再生する。

  • オリジナルビルトインプランター

  • プランターにテクニクスのサウンドシステムが格納されている

これにより、朝の時間帯には、上方から小鳥のさえずりが聴こえ、夕方には下方から虫の鳴き声が聴こえるといったように、自然環境にいるような時間の流れや空間の広がり、開放感、心地よさなどを実現できるという。

このオリジナルビルトインプランターは、6人が同時に座れる「オリジナルビッグテーブル」、4人が座れる「オリジナルミドルテーブル」、2人が利用できる「オリジナルハイテーブル」、ベンチタイプの「オリジナルベンチ」のほか、緑視率の補助的役割を果たす「オリジナルプランター」を用意する。

  • オリジナルビルトインプランターの使用イメージ

なお、「緑視率」とは、建築学会で使われている数値で、「人の視界に占める緑の割合で、緑の多さを表す指標」とされている。同社によると、ストレス軽減につながる最適な緑視率は、120度の視野の範囲に10~15%の緑があることで、まったく植物がない環境に比べて、11%のストレス削減効果があるという実証実験結果を明らかにしている。

テクニクスは「音と人の関係性」でオンリーワンへ

パナソニック テクニクスブランド事業担当参与 アプライアンス社 副社長 技術担当の小川理子氏は、「2014年9月に、テクニクスのブランドを復活させた。音と人との関係を大切に思い、音楽を愛するすべての人々に音楽の感動を提供し続け、世界中の音楽文化の発展に貢献することを目指しているのがテクニクスである」と前置きし、現在、テクニクスの製品として27機種を発売し、32カ国に販売展開していることを説明。「デジタルもアナグロも世界ナンバーワンとオンリーワンを目指し、人が中心となって、生きる幸せを感じることができる音づくりをしている」と語る。

  • パナソニック テクニクスブランド事業担当参与 アプライアンス社 副社長 技術担当の小川理子氏

そして、「太古の時代から、人は音と触れ合ってきた。その長い関係性を大切にしたい。世の中には、いい音と悪い音があり、悪い音は小さくし、いい音は様々なところで人に影響を及ぼすことができるように設計したい。テクニクスは、常にいい音を出すことを考え、それを実現する専門家集団である。エンジニアに言っているのは、生命力があふれる音、長く聞き続けられる音を同時に達成することを目指すという点。これがいい音の条件であり、人にポジティブな影響を与えることになる」とする。

  • 2014年に復活したテクニクス。現在ではくらし空間への展開にも取り組んでいる

テクニクスでは、約4年前からパナソックホームズと、個人住宅を対象にしたくらし空間での音の共同研究を実施。自然界のように全身が包み込まれるサウンドや、どこにいても心地よく聴き疲れしないサウンド、くらし空間に溶け込むノイズレスデザインの実現に取り組み、現在、全国14カ所のモデルルームに設置している。

「それぞれの住宅に向けたチューニングを行うことで、リビングでも、キッチンでも、空間全体がコンサートトホールのようになり、音を楽しめる空間が実現できている」と自信をみせる。

今回のコモレビズとの協業は、これらの実績をもとに、テクニクス製品をオフィス空間にも展開していくものとなる。

「ホームオーディオの機器開発で蓄積してきたテクニクスの空間音響設計技術を活用し、集中して、リラックスできる環境を実現したい」とし、空間の特性にあわせた最適音響設計を行う「音響シミュレーション技術」、音の聴こえ方が自然界と同じ位置関係になるように最適なチューニングを行う「音方向の響き測定・分析技術」、超低音から超高音までの自然音を高音質で再生する「高音質信号処理技術」を活用するという。

  • 音響シミュレーション技術

  • 音方向の響き測定・分析技術

  • 高音質信号処理技術

小川副社長は、「集中して、リラックスできる環境」の例えとして、読売ジャイアンツの長嶋茂雄終身名誉監督が、現役時代にバッターボックスでボールを打つ瞬間を挙げ、「集中しても肩に力がはいると、自分の力が100%発揮できない。適度に力を抜くことが、人間の潜在力を引き出すことができる」とし、「テクニクスの技術をあますことなく、コモレビズに注ぎ込む。ハイレゾによって実現することができる自然界のような音に包み込まれ、リラックスしながら集中できる環境をつくり、人の聴覚に働きかけ、生産性向上が図れるワークプレースを実現したい」と語った。

実際にパナソニック社内でも、オープンミーティングエリアやリフレッシュフロア、集中フロアにおいて、鳥のさえずりや川のせせらぎといった自然音を高音質で再生するといったことを行っており、仕事効率の向上につなげているという。

2020年度中に販売、トヨタとの共同研究も

PBSとパナソニックの両社はこれまで、東京・天王洲の複合施設「TENNOZ Rim」において、仕事空間に適したソリューションの提案に向けて共同で研究、開発を進めてきた。

「TENNOZ Rimに、オリジナルビルトインプランターを設置したところ、利用者が最も気に入ったのが自然音であり、63%を占めた」(小川副社長)と、テクニクスの音に対する高い評価が出ているという。

TENNOZ Rimは、今後も同ソリューションを体験できる場として活用するという。

すでにJX金属、オーク情報システム、矢作建設工業が、オリジナルビルトインプランターの導入を決定しており、2020年度中には20社への販売を計画。2022年度までに累計90社への導入を目指す。

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、働き方や働く場所にもニューノーマルが求められている。PBSでは急遽進められた在宅ワークで露呈した課題も踏まえ、ワークプレースの変革に取り組む

精神科医の鈴木航太氏は、「メンタル領域の研究では、自然のなかで五感に働きかけるようなアプローチが、精神状態の改善や癒しの効果があるとされている。そのなかでも、とくに聴覚への働きかけは大切で、1/fゆらぎといわれる川のせせらぎや小鳥のさえずりに含まれる音はリラックス効果や集中力を高める効果があると言われている。今回のハイレゾ 音響と緑を活用した取り組みは、都会のオフィスのなかにあっても、あたかも自然のなかで過ごしているかのような心安らぐ空間を構築することを期待している」と述べている。

PBSの「コモレビズ」は、2017年度から事業を開始。ワークプレース(職場環境)を、ライトプレース(人間に最適な自然環境)に近づけるための「バイオフィリア」理論で健康経営を促進する取り組みとなる。この理論を具現化するバイオフィリックデザインとは、人工的な環境下において、人と自然のつながりを創造し、人の健康と幸福を向上させる空間デザインだと位置づけられている。

指標として「緑視率」を用いるほか、独自のデータベースに基づいて、顧客企業のニーズに応じたオフィス空間をデザインし、導入後の効果測定をストレスの数値化により提供。働く人のストレスを軽減し、心身ともに良好な状態に保つウェルビーイングの実現に貢献するとともに、生産性の向上を促進するという。

PBSの岩月副社長は、「ストレス削減効果のエビデンスと、効果を最大限にする空間デザイン、導入した効果の見える化によって、コモレビズを実現している」としたほか、PBSでは、トヨタ自動車とも共同で研究を進めており、植物と共生する空間が、人間にもたらす効果の科学的解明を目指していることにも触れた。

  • ウェルビーイングの実現に、トヨタ自動車との共同研究も進めている

PBSは、総務およびマーケティング関連のBPOソリューションを提供する企業で、1987年にパナオフィスサービスとして設立。2015年にパソナが株式の66.6%を資本参加して、現在の社名となっている。