ソニーグループは、2025年1月6日(現地時間)、米ネバダ州ラスベガスで開催中のCES 2025において、プレスカンファレンスを行った。
会見の冒頭に、ソニーグループの十時裕樹社長 COO兼CFOは、「ソニーの目的は、クリエイティブなエンタテインメント企業として、世界をKANDO(感動)で満たすことである。クリエイティビティとテクノロジーの力で、人々を結びつけ、心を動かすような新しいアイデアを実現したい」と切り出し、新たな移動体撮影システムや、空間コンテンツ制作の最新ソリューションなどを発表。
ゲームIPの映像作品化や、音楽アーティストとの共創などを紹介した。また、「ほぼ最終版」とするソニー・ホンダモビリティのAFEELAの最新モデル「AFEELA 1」をステージ上で披露し、2025年から販売を開始することを発表。8万9900ドルと、10万2900ドルの2トリムを発売することを明らかにした。
ソニーグループでは、10年後のありたい姿を描いた長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を発表しており、今回のプレスカンファレンスの発表も、同ビジョンに則り、クリエイターの創造性を解き放ち、IPの価値最大化を進めるソニーの最新技術の取り組みなどを紹介する内容となった。
十時社長 COO兼CFOは、「Creative Entertainment Visionのもと、クリエイターをはじめとした社内外の仲間とともに、人々の創造力を刺激し、無限の感動を生み出していきたい」と述べた。
最初に紹介したのは、NFL(National Football League)およびディズニー、ESPNとの協業によって実現したToy Story Funday Footballの取り組みだ。アメフトの試合を、トイ・ストーリーの完全アニメーションの世界のなかでリアルタイムに視聴できるというものだ。登壇したNFLの ロジャー・グッデルコミッショナーは、「ファンのエンゲージメントを高め、新しい視聴者にリーチするための新しい方法になる。スポーツ放送の未来につながる足がかりになる」と述べた。さらに、NFLと共同で開発しているコーチ用ヘッドセットのプロトタイプを公開。2025年シーズンから採用することを発表した。ソニーのノイズキャンセリング技術を採用するとともに、ベライゾンの5Gネットワークによって通信が可能になる。
次に紹介したのが、ソニー・ホンダモビリティのAFEELAである。ソニー・ホンダモビリティの水野泰秀会長兼CEOは、「2年以内にここまでこれたのは、多くの仲間のサポートによるもの」と前置きし、「人とモビリティの関係を再定義するという私たちのビジョンを代表する最初の製品になる」と位置づけた。
独自のADASであるAFEELA Intelligent Driveは、カメラやLiDAR、レーダーなど40のセンサーが周囲をセンシングしてデータを収集し、最大800 TOPSの計算能力を持つ電子制御ユニット(ECU)により、AI技術を活用して、認識、予測、行動計画の各工程で高度な運転支援を提供するのが特徴だ。さらに、対話型パーソナルエージェントであるAFEELA Personal Agentとの自然な対話を通じて、様々な車載機能を音声でコントロールしたり、会話を楽しんだり、行動計画の提案を受けたりすることができる。
「AFEELA Personal Agentは、車両の設定を制御するだけでなく、積極的に話しかけ、移動時間を最大限に活用するためのニーズに基づいた有用な情報を提供することができる」とした。
8万9900ドルの「AFEELA 1 Origin」と、10万2900ドルの「AFEELA 1 Signature」の2トリムを用意。両トリムともにAFEELA Intelligent Drive、AFEELA Personal Agent、厳選されたエンタテインメントコンテンツ、車両をデジタルでカスタマイズできる様々なテーマセットおよび5Gデータ通信を、3年間無料のサブスクリプションで利用できる。
エクステリアカラーは、Tidal Gray、Calm White、Core Blackの3色を用意。充電は、テスラのスーパーチャージャーネットワークを利用でき、航続距離は最大300マイルを目標にしている。また、全額払い戻しが可能な予約金200ドルでのオンライン予約受付を開始したことも発表した。まずは米カルフォルニア州で予約を受け付ける。
水野会長兼CEOは、「予約金は、みなさんが昨夜、テーブルで失ったものよりも少なくてすむ」と、ラスベガスならではのジョークで会場を沸かせた。
なお、日本でのAFEELA 1の納車開始時期は2026年内を予定しているという。
クリエイター向けの新たなプロダクトとして最初に紹介したのが、バーチャルプロダクションを活用した新たな移動体撮影システム「PXO AKIRA(ピクソ アキラ)」だ。ソニーが買収したPixomondo(ピクソモンド)の技術を活用したもので、高度なロボットカメラクレーンや、独自設計したモーションプラットフォーム、LEDウォールを統合したデジタルツインツールを組み合わせて、車両やその他の乗り物などの移動体が登場するシーンなどで、バーチャルプロダクションを活用した撮影が可能になる。安全性と低コストを実現しながら、自由度の高いクリエイションを可能にするという。
Pixomondoのジョニー・スローCEOは、「車から宇宙船まで、何でも扱えるオーダーメイドのモーションベースのプラットフォームであり、360度回転し、車体が沈み込みといった動きも可能になる。LEDスクリーンの仮想的な背景により、リアルな乗り物の撮影が可能になる」とした。
次に紹介したのが。「XYN(ジン)」である。空間コンテンツ制作支援を行うソリューションで、イメージングやセンシング、ディスプレイなどの技術に加え、独自アルゴリズムを用いることで、現実空間のオブジェクトや、人の動き、背景を正確に捉えて、3DCG制作環境で効率的に再現することができ、柔軟なワークフローを実現する。ソニーが開発中のヘッドセットと組み合わせることで、バーチャル空間での制作作業も実現できるようになるという。
ソニーグループにとって、重要なビジネスになっているのがアニメである。
登壇したアニプレックスの岩上敦宏プレジデントは、2020年に日本で公開された劇場版「鬼滅の刃 」無限列車編が、日本史上最高の興行収入を記録し、米国をはじめとした45以上の国と地域で公開されたことを報告。劇場版「鬼滅の刃」無限城編の三部作の一作目が、2025年に全世界で劇場公開されることを紹介した。「三部作は、アニメーション技術の限界を追求しており、スリリングなストーリーと息をのむようなビジュアルを特徴としている」と自信をみせた。
また、「アニメはメディアであり、ジャンルではない。ロマンスやコメディ、SFなど、多くの要素がある。さらに、アニメは最も急速に成長しているセクターのひとつであり、日本と中国を除いた市場規模は、2030年までに15億人になると見込まれている。そして、アニメは、Z世代やα世代に深く共鳴するものになる。ソニーの強みは、ストリーミングを中心に、映画、イベント、ゲーム、eコマース、音楽、グッズなど、360度体験のアプローチが可能であることだ。アニメファンとのタッチポイントを強化していく」と述べた。
プレスカンファレンスのなかでは、人気ゲーム「Ghost of Tsushima」をベースにしたテレビアニメシリーズを展開することや、「HELLDIVERS 2」および「Horizon Zero Dawn」の映画化を発表。日本の多くの出版社と協力して、マンガアプリ「Crunchyroll Manga」を追加することを発表したほか、「The Last of Us」のシーズン2が2025年4月からストリーミング配信されることも発表。続けて、アクションRPG「Horizon」シリーズの世界をレゴブロックで再現したゲーム「LEGO ホライゾン アドベンチャー」についても説明。同ゲームでは、テーマソングをmxmtoonが制作し、ミュージックビデオを先行公開することを発表した。ミュージックビデオの制作では、Epic GamesのUnreal Engineを活用。ゲームのアセットをアニメーションへ活用し、コンテンツを拡張している点が特徴だとした。
また、新たにソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの社長兼CEOに就任したラヴィ・アフジャ氏が登壇。「ソニー・ピクチャーズは、年間15本以上の映画と、世界中のあらゆるジャンル、あらゆるプラットフォームで、200本以上のテレビ番組を制作し、配給している。私たちは単にゲームを映画やテレビ番組に採用しているわけではない。ゲームのファンを称え、スリルを満点にし、ソニーのテクノロジーを活用して、これらの物語を、比類のない品質で生き生きとさせている。これが、エンタテインメントの未来である」と強調した。