パナソニックは、白物家電事業などに関する下期戦略について説明した。

パナソニックの品田正弘CEOは、「これまでの経営改革の成果を、収益につなげことができる段階に入ってきた」と、今後の成長戦略に自信をみせた。

  • 商品力と収益構造に手応え、パナソニックが白物家電の成長戦略に自信見せる

    パナソニック CEOの品田正弘氏

業績開示セグメントであるくらし事業は、パナソニック株式会社が担当している領域で、白物家電事業を行う「くらしアプライアンス社」、エアコンや空気清浄機、A2W(Air to Water=ヒートポンプ式温水給湯暖房機)などを扱う「空質空調社」、電材やエネルギーソリューションなどを担当する「エレクトリックワークス社」、ショーケースや冷凍機、厨房システムなどの「コールドチェーンソリューションズ社」で構成。さらに、地域軸の観点から、中国市場を担当する「中国・北東アジア社」がある。

くらし事業の2024年度上期(2024年4月~9月)の売上高は前年同期比5%増の1兆7440億円、調整後営業利益が同198億円減の483億円。そのうち、くらしアプライアンス社は売上高が前年並の4103億円、調整後営業利益は74億円減の163億円、空質空調社は売上高が同12%増の4735億円、調整後営業利益は89億円減の49億円、コールドチェーンソリューションズ社は売上高が同7%増の2086億円、調整後営業利益は1億円増の120億円、エレクトリックワークス社は売上高が同2%増の4945億円、調整後営業利益は2億円減の287億円となった。また、中国・北東アジア社は、売上高が同4%増の4028億円、調整後営業利益は77億円減の191億円となった。

これに対して、2024年度通期業績見通しは、売上高が前年比3%増の3兆5500億円、調整後営業利益が12億円増の1350億円と、増収増益の目標としており、「上期は、くらしアプライアンス社が中国の市況悪化の影響を受けたことに加えて、空質空調社が欧州で苦戦したが、下期はこれらの事業が増益に反転し、年間公表値を達成できる見通しである。エレクトリックワークス社とコールドチェーンソリューションズ社は、中期計画の目標値を前倒しで達成しており、この成長を継続させていく」と述べた。通期の売上高見通しは、10月時点で100億円上方修正している。

  • くらし事業 2024年度業績見通し

白物家電事業を担当するくらしアプライアンス社では、国内白物家電のシェアが上期に1.6ポイント上昇。下期も新製品投入などにより、この勢いが継続すると見込んでいるほか、コスト削減や課題事業の改善が寄与し、下期の調整後営業利益は前年同期比93億円増の337億円を見込んでいる。増益の半分が国内、残り半分が中国を除く海外。中国はフラットとしている。また、上期に大幅な減益になった中国市場でも、10月、11月は政府による消費の喚起策もあり、需要の悪化が和らいでいるというプラス効果がある。さらに双十一商戦においても好調な結果となり、パナソニックの実績は、市場全体を上回る前年同期比21%増(市場全体では11%増)になったという。中国では、最終販売価格の15%を補助するといった消費喚起策が進められており、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電の販売拡大を後押しすることになりそうだ。さらに、アジアでは、最大市場となるベトナムでは増収増益を見込んでおり、明るい材料が増えている。

また、課題事業となっている調理機器事業では、これまで進めてきた経営改革の刈り取りが下期に本格化し、収益を改善できることを強調。中国勢と戦えるコスト競争力に加えて、拠点集約、人員シフトによる固定費の適正化、新製品投入による増販といった開製販に渡る構造改革効果が、日本を中心に、中国、アジアでも発揮されており、10月、11月も黒字化したという。

くらしアプライアンス社全体では、下期の調整後営業利益率は、前年同期の5.3%から7.3%に回復する見込みで、「下期は、重要な半年間になる。着実に刈り取りを進めたい」との決意を示した。

  • 下期は前年同期比93億円増の337億円を見込んでいる。増益の半分が国内、残り半分が中国を除く海外

国内白物家電事業については、詳細に説明した。

調整後営業利益は、上期はシェア向上を果たしたことからもわかるように増販益があったものの、それだけでは、海外生産による為替のマイナス影響、一時費用の影響をカバーすることができなかった。だが、第2四半期だけをみると、増販益だけで為替の悪化をカバーし、前年並みの水準を達成。さらに下期は、第2四半期の収益構造を維持し、ここに新製品の効果が加わることを想定している。「シェアアップと合理化によって、利益を持ち上げ、増益に転じる」と説明した。

  • 国内白物家電の収益改善。下期は新製品の商品力でシェア向上を目指す

国内白物家電の下期のシェアアップに向けては、商品力を強化。高価格帯では、パームインシェーバーやナノケア Ultimateのほか、新たな調理機能を搭載したBistroオーブンレンジ、花王との協業によって新たなコースを用意したドラム式洗濯乾燥機、マイクロミスト方式の掃除機など、これまでにない価値提供を行える商品群がシェア向上に貢献しているという。さらに、年末商戦に向けても新製品を投入しており、「新たに発表したドラム式洗濯乾燥機は、都心のマンションの狭小さに対応したコンパクトサイズで、機能を絞り込み、19万7000円の手頃な価格を設定した。この商品では、年間を通じてワンプライスで提供するという戦略も実施することになる。新たなチャレンジになる」と位置づけた。 また、国内白物家電における合理化施策としては、「グローバル標準コスト」戦略を推進。機能を絞り込んだ引き算の商品企画、設計の見直しによる部品の共有化、部品点数の削減などによる新たな原価構築により、グローバルに戦えるレベルのコスト力を持つ商品を2024年度から投入していることを強調した。

  • ラムダッシュ パームイン(ES-PV6A)。手のひらサイズの電気シェーバーという新機軸でヒット

  • ナノケア アルティメイト(EH-NC80)。高付加価値路線を極めたへアドライアーだ

  • セパレート型コードレススティック掃除機(MC-NX810KM)。微細なゴミを取り除くマイクロミスト搭載

たとえば、2024年9月に発売したオーブンレンジのBistroのエントリーモデルは、グローバル標準コストの採用により、直材費を約2割削減し、シェア向上に貢献しているという。また、20万円以下の価格設定を実現したコンパクトサイズのドラム式洗濯乾燥機も年末商戦に間にあうタイミングで市場投入し、縦型洗濯機からのアップセルに貢献すると見込んでいる。

「白物家電事業は、マーケットでの存在感を高めることが重要な要素である。商品力によるシェア向上、グローバル標準コストによる合理化の成果を刈り取れる時期に入ってきたという実感がある」と、手応えを示した。

  • 品田氏は「商品力によるシェア向上、グローバル標準コストによる合理化の成果を刈り取れる時期に入ってきたという実感がある」と、手応えを示す

なお、パナソニックでは、流通向けプライベートブランド製品の提供を開始することを明らかにしているが、「商談の途上にあり、詳細を語ることができない。だが、複数の案件を、複数の法人と商談を進めている。プライベートブランドに対しても、アフターサービスを提供できる点が、パナソニックの強みになる」と語った。

一方、空質空調社は、2024年度上期に大幅な減益になったが、下期は増益に転換する見通しを示した。「下期の増益要因の最大のドライバーはA2Wである。上期は欧州でのA2Wの市況が悪化し、減販影響があったが、第1四半期を底に市況は改善傾向にあり、第2四半期からは月を追うごとに改善。10月は金額ベースで前年同期比20%増となり、11月も15~20%増となった。国ごとに濃淡はあるが、金利の引き下げやガス価格が適正レベルまで上昇し、外部環境も改善。流通在庫の消化も進んでいる。実需を喚起する販売施策の効果も生まれている。第4四半期からは生産体制も回復し、下期は増収増益に転じることになる。改善の兆しが見え、先手を打ってきた差別化による競争力強化の取り組みが、いよいよ加速していくことになる」とした。

また、上期に増益だったルームエアコンは、下期もアジア、欧州を中心に増益を見込んでいるほか、環境エンジニアリング事業やデバイス事業は顧客への密着支援に加えて、成長市場の開拓により、受注拡大を見込んでいるという。とくに投資増強が著しい車載電池案件で、環境エンジニアリング事業を加速するという。

2025年度から始まる次期中期経営戦略に向けて、品田CEOは、「2024年度下期において、これまでの経営改革の成果を収益として実現できる感触を得ている。その成果を確実なものとして、次期中計のできるだけ早い段階に、EBITDA10%と、ROIC10%を達成することを目指す。経営課題と真摯に向き合いながら変革を進めていく」と意気込みを語った。

  • 2025年度から始まる次期中期経営戦略でEBITDA10%とROIC10%を目指す

パナソニックグループでは、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)以下の事業を課題事業と位置づけ、2026年度までに課題事業をゼロにする方針を打ち出している。くらし事業のなかでは、空質空調社が、課題事業の水準にある。

「空質空調事業の改革のリミットは、2026年度である。それに向けては、2025年度にどれだけジャンプできるかがポイントになり、2025年第1四半期にどれぐらいの数字ができていないといけないか、ということが重要になる」と、まったなしで改革に取り組む姿勢を強調した。

空質空調社は、設立の経緯を辿れば、松下電器産業と三洋電機、松下精工の3社の流れがあり、2022年4月の空質空調社の設立以降、他社に勝てる技術や商材を武器に、新たな融合価値を作り、リーンな体質によって、経営を強化していくフェーズにあると位置づける。

「異なるカルチャーを持つ会社が合体していることもあり、固定費の構造や、組織内の融合においては、まだファットな部分がある。空質空調社では、限界利益をあげる差別化製品と、重点領域にフォーカスした戦略で成長させていく」と述べた

空質空調社の体質改善を進めながら、くらし事業全体で、下期業績をどこまで回復できるのか。その結果が、2025年度から始まる次期中期計画の発射台の位置と、そこからの角度を決めるベースとなるだけに、この下期は、まさに重要な時期だといえる。