クボタは、大阪府堺市に、研究開発である「グローバル技術研究所」(Kubota Global Institute of Technology=KGIT)を開設している。約3000人のエンジニアが勤務。技術部門だけでなく、研究開発に関連する全部門が入居し、農業機械や建設機械などの製品開発、電動化や自動化への取り組み、基盤技術の開発などを行っている。大形農機の走行試験が可能な一周1.5kmの広大なテストコースも備えている施設だ。このほど、グローバル技術研究所を見学する機会を得た。その様子をレポートする。
クボタのグローバル技術研究所は、2022年9月に、大阪府堺市に開設した。
同社では、世界各地の状況やニーズに合った製品の開発を強化するため、タイ、フランス、米国にも研究開発拠点を開設し、グローバルでの研究開発体制を構築しているが、グローバル技術研究所は、これらの研究開発拠点の連携強化のためのハブとしての役割を果たすのに加えて、さらなる事業拡大に向けた製品開発や先端技術開発の強化を目的として設置した施設だ。
従来は、同じ堺市にある同社堺製造所で、農業機械や建設機械などの製品開発を行ってきたが、この機能をグローバル技術研究所に統合するなど、農業機械や建設機械を中心に国内の研究開発に関連する部門の大部分を集約し、食料、水、環境の各分野で必要とされる製品の開発や、製品のベースとなる基幹部品の開発、それらを支える材料や素材の研究、解析など、基盤技術の強化にも取り組んでいる。
さらに、電動化をはじめとしたカーボンニュートラルの実現に貢献する製品や技術の開発もグローバル技術研究所の重要な役割になっている。同社では、2024年3月に、水素燃料電池トラクタ(FCトラクタ)の新たな試作機を公開。グローバル技術研究所で記者会見を行った経緯があるが、FCトラクタの実用化も、カーボンニュートラルの貢献につながる取り組みのひとつだ。
また、クボタの農機は、先進的な自動運転技術を搭載していることでも知られているが、グローバル技術研究所でも、IoTやICT、AIに関する先端技術の強化と、製品やソリューションへの実装を進めており、農機の自動化においても重要な役割を担っている。
クボタは、堺市内に、1937年に操業した農機や建機のマザー工場である堺製造所、1985年に操業し、エンジンの生産を行う堺製造所臨海工場の2つの製造拠点を持っており、グローバル技術研究所は、同社にとって堺市内では3つめの拠点となる。
グローバル技術研究所は、南海堺駅から車で約20分。大阪湾に面した埋め立て地にあり、2009年にシャープが開設した「グリーンフロント堺」の一角だった場所だ。シャープでは、当初、液晶パネル工場の2期棟をこの場所に設置する予定だったが、大きな市場変化のなかで、1期棟の稼働率が高まらず、2期棟の建設計画を撤回。この未使用地に、クボタがグローバル技術研究所を建設した。
投資額は約840億円で、敷地面積は約34万6000平方メートル、延床面積は約13万8000平方メートルを誇る。国内では、筑波工場、京葉工場といった生産拠点に続く、3番目の広さを持つ。敷地が広いため、社員が構内を移動するために利用する専用自転車が用意されているという。
設計・研究棟は、「CROSS INNOVATION FIELD-あらゆる分野が交差するイノベーションが生まれる場」をコンセプトに設計しており、ワンフロアで約1万8000平方メートルという広い空間に、エンジニアが集結。部門間の活発な交流によって、新たなイノベーションを創出することを目指している。また、個別集中ブースやコミュニケーション機会を増やせるカフェテリアなどを設置したオフィスレイアウトや、太陽光パネルの設置や高効率空調の導入、効果的な照明を採用した環境にやさしい建築設計になっている点も特徴だ。
もうひとつの特徴は、広大な敷地を利用して、テストコースや多くの実験設備を設置している点である。
テストコースは、一周1.5kmという規模を誇り、大形農機の走行試験も可能だ。そのほかに、従来比2倍に増設した24時間連続自動運転が可能な試験装置、機械の多種多様な動作テストがすぐに行えるテストフィールド(実験圃場)も設置している。芝圃場や水稲圃場など、19種類27カ所の圃場があり、田植機や芝刈りなどの性能や耐久性が確認できる。
これらの施設は、設計・研究棟に隣接しているため、エンジニアは必要な応じて、すぐに実験を行うことが可能であり、開発の効率化にもつながっている。
グローバル技術研究所の様子をレポート
では、クボタのグローバル技術研究所の様子を写真で見てみよう。