パナソニック コンシューマーマーケティングは、家電事業における「新たな『商売』の基準」について発表。「『くらしを守る。地球・社会を想う』が新たな商売の基準。お客様とつながり続けることを商売の基準に据え、暮らしを支えるベストパーナーの実現に取り組む」(パナソニック 執行役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部長兼くらしアプライアンス社 副社長 国内マーケティング担当兼パナソニック コンシューマーマーケティング 代表取締役社長の宮地晋治氏)と述べた。
IoT家電を活用し、データをもとにしたサービス提供などを通じて、顧客とつながり続けることが、今回、同社が打ち出した「新たな商売の基準」となる。
同社では、2024年度を目標に、家電全体におけるIoT化率を6割に拡大するとともに、1,000万人とつながる計画を打ち出している。新たな商売の基準では、アプリやデータの活用を積極化。現在、800万人のつながる顧客をより前倒しする形で1,000万人に到達させるほか、IoT家電率も前倒しする形で目標達成に挑む考えだ。
「これまでは家電のハードウェアの機能価値を基準に、商品の購入時点がピークとなるような売り切り型モデルとなっており、経年とともに満足度が減少していた。今後は、アプリ接続により、お客様とつながりつづけることを大切にし、ソフトウェアのアップデートなど、購入後の接点を広げることにより、暮らしの変化に適用し、購入後も満足度を高める体験価値を提供しつづける」と述べた。
同社では、購入時、使いこなし、メンテナンス、サポートの4つの領域から、「新たな商売の基準」について説明した。
ひとつめの購入時では、1年のメーカー保証に加えて、2年の延長保証を無料で適用する「IoT延長保証」サービスを、4月21日から本格展開する。
購入したIoT対応商品を専用アプリにつなぎ、マイ家電登録(商品登録)を行い、サービスに申し込むと、合計で3年間の保証サービスを提供する。
すでに、2023年2月からIoT対応冷蔵庫でサービスの提供を開始しており、今後、エアコン、ドラム式洗濯乾燥機、スチームオーブンレンジ、自動調理鍋、テレビ、レコーダーのIoT対応商品にサービスを拡大。まずは、7カテゴリー、274品番が対象になる。今後、LED照明やドアホンなどにサービス対象機種を増やす予定だ。
2つめの使いこなしでは、アプリの進化によるサービスの向上をあげる。
「専用アプリにより、暮らしの変化にあわせて求められる機能やサービスを最適な形で利用できる。エアコンのエオリア向けアプリでは、遠隔操作や切り忘れ防止通知などを新たなサービスとして付加したほか、2023年2月からは、住んでいる地域で使われているエオリアの稼働率や、最も多く設定されている温度を確認できる機能を追加。暑くなったと感じたときにはほかの人の様子を見て、自分も無理をせずにエアコンをつけてみたり、他の人の暖房の設定温度が意外と低めであることを知り、設定温度を下げて見たりといった使い方ができる」という。
エオリアアプリは、AppStoreにおいて、ユーザー評価が4.5となり、国内のエアコン操作アプリのなかで最高評価を得ているという。
また、使いこなしにおいては、2021年10月から開始した音声プッシュ通知サービスにより、エアコンが設置されている部屋が高温になっていることを、連携しているテレビが知らせ、快適な環境づくりをサポートできるといった活用が可能であるほか、2022年4月からはヤマト運輸との連携により、荷物のお届け予定をパナソニックのスピーカーを通じて通知するサービスを追加した。音声プッシュ通知サービスの登録者数は、2022年度には1万登録に達しているという。
パナソニックでは、環境省の「サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業」に参画。埼玉県熊谷市と栃木県鹿沼市において、350人が参加し、エアクンの環境データと使用状況の関連分析などに取り組んでいるという。
3つめのメンテナンスでは、経過年数や運転状況など、エアコンから蓄積したデータをもとに、クリーニングの目安を通知。クリーニング実施の判断がしやすくなるととともに、それをもとに、有償で提供するクリーニングサービスも利用できる。「適切なメンテナンスを行うことで、商品が持つパフォーマンスを最大限に発揮できる。モノづくり側では、メンテナンスしやすい商品設計へと変更し、長く使ってもらうためには部品保有年数も長期化する必要がある。現在、保守部品の保有期間は、エアコンは10年、ドラム式洗濯機では6年だが、お客様の使用状況を見ながら、長くメンテナンスできるように、商品ごとに最適な保有年数はどれぐらいかを捉えながら検討したい。あわせてSKUの削減にも取り組みたい」とした。
4つめのサポートでは、故障時の対応として、IoTによる運転状況や稼働時間などの蓄積データを活用することで、問い合わせ時、修理依頼時、出張修理時のそれぞれのシーンで原因特定から修理まで迅速に対応。利用者のストレスを軽減することができるという。現在は、エアコンだけのサービスだが、2023年4月からは、冷蔵庫にも対象を広げる。
家電事業を担当するパナソニックでは、2021年9月に、「一人ひとりに“ちょうどいい”くらしへ」というコンセプトを発表。それにあわせて、IoTを活用した新製品の投入や、プッシュ発話通知などの新サービスを発表している。
「アプリや新サービスを利用したお客様からは、外出時の遠隔操作などが便利、エアコンや冷蔵庫の電気代がアプリで見える化でき節電意識が高まった、アプリの通知機能により日常の暮らしの習慣化につながったなど、暮らしにおける行動や意識の変化といった新たなアクションにつながっているという声を多数もらっている。エアコンと洗濯機のアプリの利用者は、利用していないユーザーよりも相対的に満足度が高い」などとする。
また、節約や節電、長く大切に使いたいといったニーズが生まれていることを指摘。「一人ひとりの変化にしっかりと向き合い、テクノロジーで、暮らし、社会、地球に貢献できることはなにかを追求してきた。パナソニックほど、生活の様々なシーンや、多くの居住空間に接点を持っているメーカーはない。ひとつひとつの接点をIoTでつなげることにより、線にして、暮らしの変化に合わせて、求められるソリューションを最適な形で提供できる。さらに、電気代高騰などの社会課題にもしっかりと向き合い、パナソニックの家電を選ぶことが、持続可能なアクションにつながるといった役割を担いたい」と述べた。
同社では、2023年4月から、マーケティング組織を新体制を刷新。パナソニックコンシューママーケティングを、パナソニックマーケティングジャパンに社名変更し、これまでの専門店や量販店といった商流軸の体制から、全国7社のエリア会社体制に移行。地域への密着度を高めていくという。
この新体制について、「従来は、量販店を得意先とするCE社、専門店を対象とするLE社、業態店を対象とするVE社により、事業を進めてきたが、新体制ではエリアごとに社長を配置し、量販営業部、専門営業部といった形に再編した。エリアではディビジョンの垣根を超えて、営業推進センターとして、横で連携を図るとともに、エリアという観点から人材交流や店舗へのお役立ちを果たしていく」と説明し、「政府から省エネに対しする施策が発表されても、その執行は自治体ごとにタイミングが異なり、中身も違う。エリア体制とすることで、地域で施策が出た場合には、その地域の販売店やお客様にどう発信するかといったことに取り組めるようになる。また、エアコンを稼働させるタイミングも地域によって異なる。エアコンの事前テストをしてもらうタイミングも、地域のデータを見ながら提案していく。地域ごとの食文化が違うため、エリアにあわせたマーケティング施策が必要であり、そこにもチャネル軸から、エリア軸に変えた理由がある。暮らしのお役立ちを、エリアごとにきっちりと果たしていきたい」と述べた。
「新たな商売の基準」は、アプリやデータを活用することなるが、ここでは、地域ごとの特性を捉えたデータの利用など、地域軸での成果が出やすいともいえる。新体制はそうしたことも視野に入れた再編だというそうだ。