NTT東日本とNTT西日本は、高齢者を対象に、ナンバー・ディスプレイやナンバー・リクエストの無料化などを開始する。
AIやクラウドを活用して、特殊詐欺犯罪であることを判定する特殊詐欺対策サービスも、契約数を限定しながらも無償で提供することになる。
具体的には、2023年4月以降、「ナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストの高齢者無償化」、「特殊詐欺対策サービスの無償化」、「電話番号の変更に関する工事費の無償化」を順次開始する。
NTT東日本の北村亮太副社長は、「特殊詐欺犯罪は、深刻な社会課題となっているとともに、固定電話の利用が被害を受ける場合が多いという残念な状況にある。犯罪防止に貢献するために、これまでにも特殊詐欺対策サービスの提供、警察や自治体と連携した被害防止の周知活動などに取り組んできた。また、固定電話サービスを安心、安全に利用できるための強化策も検討してきた。3月17日に、政府が特殊詐欺事案に関する緊急対策プランが公表されたことを踏まえて、新たな施策を前倒しで実施していくことにした」と述べた。
特殊詐欺犯罪は、2022年には認知件数が1万7,520件、被害額は361億円となり、深刻な社会課題となっている。「特殊詐欺対策は、通信事業者として本腰で対応していかなくてはならない。ただし、1社だけでは限界がある。防止については、社会全体で協力しながら取り組んでいきたい」と語った。
「ナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストの高齢者無償化」では、70歳以上の契約者や、70歳以上の家族などと同居している契約者の回線を対象として、ナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストの月額利用料および工事費を無料にする。
ナンバー・リクエストは、ナンバー・ディスプレイのオプションサービスであり、利用には、ナンバー・ディスプレイの契約が必要である。
現在、ナンバー・ディスプレイの月額利用料は400円、ナンバー・リクエストは追加で月額200円。工事費はナンバー・ディスプレイが2,000円、ナンバー・リクエストをセットで申し込むと3,000円となり、今回の施策によって、これらが無償になる。いずれも税別の料金。
「特殊詐欺被害にあった人の9割が70歳以上になっている。ナンバー・ディスプレイを利用することで、知らない電話番号からの不審な電話に対して注意を払ってもらうことができる。また、ナンバー・リクエストにより、番号を通知しない電話には、音声でかけ直すように応答するといった対応が可能になる。最近は、番号非通知でかかってくる特殊詐欺のコールが増加しており、ナンバー・リクエストと組みあわせて利用することで犯罪に巻き込まれる可能性を減少させることができる」とした。
2023年5月1日から受付を開始する予定であるが、「前倒しで受付ができるように検討をしている」という。適用開始は5月1日となっている。
NTT東日本およびNTT西日本によると、全国での固定電話契約数は約2,000万人となっており、70歳以上の契約者世帯は3~4割と見ている。また、ナンバー・ディスプレイは約750万契約(東日本が約400万契約、西日本が約350万契約)、ナンバー・リクエストは、約10万契約(東日本が約5万契約、西日本が約5万契約)となっている。
2つめの「特殊詐欺対策サービスの無償化」では、通話録音データをAIで解析し、特殊詐欺の疑いがある場合は、事前に登録した連絡先に通知することで、詐欺の危険性を察知することができる特殊詐欺対策サービスを月額無償で利用できるほか、工事費も無償化する。
だが、特殊詐欺対策サービス向けの端末装置を導入する必要があり、その調達台数に影響を受けることから、割引適用期間を2023年5月1日から2025年3月31日までの約2年間に限定したほか、受付期間は、2023年5月10日~10月31日までとする。NTT東日本およびNTT西日本でそれぞれ5,000人に到達した時点で受付を終了する。すでに特殊詐欺対策サービスを利用している場合、福祉割引が適用されていれば、無償化の対象となる。
NTT東日本 経営企画部 営業企画部門 部門長の井上暁彦氏は、「特殊詐欺対策アダプタ(通話録音機能付き端末)を設置することで、かかってきた電話を録音することができる。そのデータをクラウドに転送し、特殊詐欺解析サーバーで、特殊詐欺犯罪の可能性があるかどうかを、AIにより、リアルタイムに判定することができる。特殊詐欺の可能性があると判定した場合には、あらかじめ登録している電話番号やメールに、アラームを発信する仕組みになっている」と述べた。
特殊詐欺解析サーバーでは、音声認識エンジンにより、録音した音声データをテキスト化。また、言語分析エンジンで特殊詐欺かどうかを判定する。録音データのなかから、「振り込み」、「銀行口座」、「送金」などのワードを抽出し、特殊詐欺の疑いがあると判定した場合には、電話やメールなどで、「○日○時○分の電話は犯罪の疑いがあります」と、本人や家族に通知し、注意喚起する。解析する内容については、警察機関などと協力し、新たな手口にも対応できるように最新化しているという。
また、通話開始前には、音声を録音することをガイダンスとして相手に通知してから、通話ができるようにしているため、特殊詐欺などの迷惑電話を事前に抑制できる。拒否リスト機能により、登録された電話番号を迷惑電話として設定。ガイダンスを流して着信を拒否することも可能だ。
特殊詐欺対策アダプタは、電話回線を接続し、自宅の電話機を接続するだけで、すぐに利用することができる。
「特殊詐欺対策アダプタを使用して、犯人の検挙につながったケースや、犯罪を未然に防止できた事例がある。特殊詐欺対策サービスの利用はまだ少ないのが実態であり、その理由のひとつとして、工事費があるためにサービス利用に二の足を踏んでいることがあげられる。工事費の無償化により、利用が増加することを目指している」という。
3つめの「電話番号の変更に関する工事費の無償化」では、特殊詐欺等の犯罪被害を受けた場合、または受けるおそれがある場合は、申し出により、電話番号変更の工事費(2,750円)を無料とする。電話番号を変更することで、犯罪目的の電話が繰り返しかかってくるような被害を抑止することができる。2023年4月1日から、受付、適用を開始する。
なお、今回の無償化に関する申し込み、問い合わせ先は、NTT東日本の特殊詐欺対策ダイヤル(0120-722-455)、NTT西日本 特殊詐欺対策ダイヤル(0120-931-965)となっている。