パナソニックコネクトは、モバイルパソコン「Let's note SR3」の法人向けモデルのラインアップを強化。2月下旬から順次発売する。そのなかでも特徴的なのが、国内PCメーカーとして、初めてDFCI(デバイス ファームウェア構成インターフェイス)に対応した点だ。企業のIT担当者の負担を大きく低減し、利用者にとってもメリットを生むDFCI対応によって、Let's noteの法人市場における強みが、さらに発揮されることになりそうだ。
パナソニックコネクトのLet's noteは、出荷台数の8割強が、法人での利用となっている。そして、1996年の発売以来、ユーザーの声を聞きながら進化を遂げ、日本の企業ユーザーが求めるモバイルパソコンとして高い評価を得ている。
また、コロナ禍においては、オフィスワークとリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークが普及し、自宅やカフェ、営業先など、オフィス以外でのパソコン利用も増加。そこでもLet's noteは高い評価を得ている。
パナソニックコネクト モバイルソリューションズ事業部テクノロジーセンターソフト開発1部 主任技師の森部美沙子氏は、「それぞれの時代において、いま必要とされる機能を備えたビジネス用モバイルパソコンとして高い評価を得てきたのがLet's noteである。日々、IT管理者と会話をし、その要望に応えてきた。コロナ禍ではIT管理者の働き方も大きく変わり、ハイブリッドワークの環境に合わせたPC管理の検討が急務になっている。いまのLet's noteは、それにあわせた進化を遂げている」と語る。
テレワーク・ハイブリッドワーク普及で新たな課題が
日本生産性本部の調査によると、テレワークを行いたいとする人は、2022年10月の調査で76.7%に達し、2020年5月調査の62.7%よりも増加している。その一方で、東京商工リサーチの調べによると、ウイルス感染や不正アクセスによる情報漏洩や紛失事故の発生件数は、2021年には3年前に比べて約2.7倍に増加。これは、テレワークの広がりに伴う新たな課題となっている。
こうしたなか、Let's noteでは、ビジネス現場を想定したセキュリティソリューションを搭載。ハイブリッドワーク環境でのセキュリティの強化に取り組んできた。
具体的には、運用中のPCのセキュリティを守る「TRUST DELETE Biz」、PC廃棄時の情報漏洩対策ができる「TRUST WIPE」を搭載しているほか、なりすましを防止し、高いセキュリティを確保する「Windows Hello Enhanced Sign in Security」への対応、マイクロソフトが提唱するセキュリティ要件である「Secured-core PC」への標準対応、ハードウェアレベルで外部からの攻撃を防御し、セキュアなリモート管理を実現するインテルによる「Intel vPro プラットフォーム」に対応している。
「TRUST DELETE Bizは、パソコンが盗難にあったり、紛失したりした場合に、電源がオフの状態やスリープ中であっても、パソコン内に保存されている個人情報や機密データを遠隔から消去できる。パナソニックコネクトのBIOS開発チームが独自にカスタマイズを行っており、ハードウェアもBIOSも社内で開発している成果のひとつである。セキュリティ意識が高い企業での活用が進んでいる」とする。
また、「Secured-core PC」では、OS起動前のBIOSによる初期化中からスリープ時を含む稼働時まで、OSが主体となってセキュリティを確保。 「Windows Hello Enhanced Sign-in Security」では、顔認証と指紋認証の認証データを分離して保護し、そのデータが通信されるチャネルをセキュリティで保護することで、セキュリティレベルをさらに向上させている。
実は、ここ数年、Let's noteは、セキュリティ分野に限らず、ソフトウェアの強化に力を注いでいる。Let's noteの使用状況をモニタリングして、問題が発生する前に解決を支援する「Panasonic PC快適NAVI」の標準搭載や、バッテリーの満充電容量の低下を自動で検知し、PC画面上で知らせて、PC利用者自身でバッテリーを交換し長時間駆動パフォーマンスを維持することができる「バッテリーライフサイクルNAVI」のほか、独自に用意した各種ユーティリティソフトによる使い勝手の向上、業務内容や予定を自動で見える化し、業務の状況を把握することで働き方改革を支援する「しごとコンパス」の提供など、Let's noteをビジネスに活用したり、快適に利用したりするためのソフトウェア群を揃えてきた。
こうしたソフトウェア強化の取り組みも、ハイブリッドワークが浸透する社会変化にあわせたLet's noteの進化だといえる。
Let's note SR3で国内メーカー初の「DFCI」対応
2023年2月下旬からラインアップを強化する「Let's note SR3」の法人向けモデルでは、国内PCメーカーとしては初めてDFCIに対応したことが大きな特徴となる。これも、ハイブリッドワークの広がりにあわせたLet's noteの新たな取り組みだといえる。
DFCIは、Windows Autopilotと、Microsoft Intuneを利用し、ハードウェアの制御を行うためのBIOS設定を可能にするもので、IT担当者は、個々の企業が必要とするセキュリティ設定などを、クラウドを通じて行えるようになる。
Windows Autopilotは、PCをインターネットに接続するだけでOSの初期設定や設定変更が可能になる機能であり、企業がWindowsのイメージをクラウド経由で展開することで、IT管理者のキッティング工数を大幅に削減できる。パナソニックコネクトでは、同社神戸工場において、Windows Autopilotの利用に必要なデバイスIDの登録を代行するサービスを提供。企業におけるWindows Autopilotの利用を促進する環境を提供してきた経緯がある。
だが、「Windows Autopilotでは、OSの展開やセットアップなどの作業負荷を低減できるが、PC本体のハードウェアの管理や制御を担うBIOS設定は対象外となっていた。この部分はIT管理者が出社して、1台ずつ開梱して、手作業で設定をする必要があった。DFCI対応となったことで、OSおよびBIOSの設定もクラウド上で行える。企業のIT管理者やセキュリティ担当者の負担を軽減できる」とする。
DFCIでは、企業の情報システム部門やIT担当者が、通常は手動で行ってきた内蔵カメラや Bluetoothの設定、USBポートからの起動の可否などを、Microsoft Intuneを使ってリモートで行うことができるため、企業が設定しているセキュリティポリシーなどへの対応が容易になり、リモートワークの普及や高まるセキュリティニーズなどにも柔軟に対応できるようになる。
「DFCIを利用することによって、IT担当者は、Windows Autopilotにプロファイルを設定し、従業員向けにPCの配送手配を行うだけで済む。また、従業員も、PCのセットアップのためにオフィスに出社する必要はなくなり、PCの電源を入れて、ネットワークにつなぎ、ログインするだけで、自動的に設定が反映され、すぐに使えるようになる。企業のIT担当者の負担を大きく低減し、従業員も作業負荷がなく、すぐにPCを利用できる」とする。
さらに、社内のセキュリティポリシーなどが変更になり、運用中のPCのBIOS設定を変更する必要が起きた場合にも、IT担当者はリモートで対応することができる。
たとえば、従来のセキュリティポリシーでは内蔵カメラは使わないようにしていたが、ハイブリッドワークの浸透によって、内蔵カメラを利用できるように変更するといった場合も、IT担当者が出社して、1台ずつの設定を変更する作業を行ったり、従業員もPCを会社に持ち込むといったことが不要になり、柔軟に、工数をかけずに設定変更ができるようになる。
同社によると、運用中のPCを手動で設定を変更する場合、1台あたりの作業時間は約10分となるが、DFCIを利用することによって、IT管理者の実作業をゼロにできる。
DFCIで設定が可能なのは、「カメラの有効/無効」、「Wi-FiおよびBluetoothの有効/無効」、「USBポートからの起動の有効/無効」、「有線LANからの起動の有効/無効」、「Hyper Threadingの有効/無効」(インテルTrusted Execution Technology無効時のみ設定が可能)、「インテルVirtualization Technology for Directed I/Oの有効」(インテルTrusted Execution Technology無効時に有効の設定が可能)の6点だ。
コロナ禍で働き方が多様化し、出社せずに仕事用の新たなPCを設定するといったケースが増加し、企業のIT担当者からは、Windows Autopilotに対する問い合わせが増加するなど、この分野に対する関心が高まっていたという。そうしたなかにおいて、他社に先駆けたDFCIへの対応は、ハイブリッドワーク時代のPCの設定や配布、運用などにおいて、大きなメリットを生むことになる。
パナソニックコネクトでは、「DFCIは、IT管理者の現状と課題に対応した新たな取り組みになる」と位置づけている。
まずは、Let's note SR3での対応となるが、Let's note FV3にも対応。今後、発売する法人向けLet's noteでは、DFCI対応を図っていくことになる。
ビジネスモバイルに特化したLet's noteらしい進化
もうひとつ、今回の法人向けLet's note SR3では、個人向けモデルに用意していたタッチパネル搭載モデルをラインアップ。「Let's noteのクラムシェア型モデルでは、タッチパネルの購入比率は高くはないが、様々な利用シーンに対応できるように選択肢を広げた」(パナソニックコネクト モバイルソリューションズ事業部テクノロジーセンター レッツノートプロジェクトリーダーの白神和弘氏)とする。
さらに、5G対応モデルを追加。受信時には最大4.14Gbps、送信時には最大0.66Gbpsの高速データ通信を実現する。ローカル5Gにも対応し、ノンスタンドアローン (NSA)方式に加えて、スタンドアローン (SA)方式にも対応している。また、SIMカードに加えて、eSIMにも対応しており、1台で5G/LTE、ローカル5Gネットワークを切り換えて使用できる。「eSIMを利用すれば、SIMカードの故障リスクも軽減できるほか、PCおよびSIMカードとユーザーの紐づけが不要となり、IT担当者の管理工数を減らすことができる。また、簡単な手続きで利用でき、出張の時だけ契約するといった柔軟性もある。仕事とプライベートの使い分けが可能など、豊富な用途にも対応できる」とする。
2022年秋のLet's note SR3の発表時には4機種の品揃えだけだったが、今回のラインアップ強化で15機種へと拡大。「タッチパネル、5G、指紋認証、軽量バッテリーなど、個人向けに展開していた仕様を法人向けに展開した」という。
標準バッテリーを搭載したモデルは939gであるのに対して、5Gを搭載しても969gに抑え、軽量バッテリー搭載モデルは859gとしている。
Let's note SR3は、A4 サイズよりも小さいフットプリントに、画面比率が3:2の12.4型液晶ディスプレイを搭載。ビジネス文書を見やすく表示し、高いモビリティと処理性能を両立したのが特徴だ。
「Let's note SR3のコンセプトは、『働くを自由にする究極のコンパクトモバイル』である。片手でも持ち運べるコンパクトさを持っており、モバイル利用時の衝撃や長時間使用時の安定運用を支える頑丈性能、軽量バッテリーの採用や16時間の長時間使用を実現。また、独自のMaxperformer(マックスパフォーマー)技術により、高い性能を引き出している」とし、「Let's noteは、自社開発、自社国内生産にこだわり、今後も進化を続けていく」とした。
国内PCメーカーとして先行したDFCI対応や、法人向けモデルへのタッチパネルや5G対応へのラインアップ強化により、利用シーンが拡大し、多様化するビジネスモバイルパソコンへのニーズに応えられるようにしている。ビジネスモバイルに特化したLet's noteらしい進化を遂げたといえる。