ソニーグループは、5月26日、27日の2日間、主要6事業に取り組みについて、各事業部門のトップが説明する「事業説明会」を開催した。
昨年まで、投資家やアナリストを対象に開催していた「IR Day」を、より幅広いステークホルダーに向けて、各事業の成長ストーリーを中心に説明する場として「事業説明会」に変更。午前8時からのスタートとし、時差がある海外からも参加しやすい形で実施した。
ソニーグループの十時裕樹副社長兼CFOは、「2014年にIR Dayをスタートした当時は、業績が低迷するなかで、経営の透明性の向上が課題となっており、CEOやCFOだけでなく、事業責任者も直接対話し、事業に対する理解を深めてもらうことが目的だった。8年を経過し、当初の目的は一定の成果をあげることができた。そこで、幅広いステークホルダーに向けて事業説明を行うことにした。外部環境の変化に適切に対応していくことが求められるなかで、中長期視点に立った成長ストーリーを示す場になる」と位置づけた。
1日目となる5月26日は、ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長 CEOが、「人の心を動かす」事業と位置づけるゲーム、音楽、映画の各事業について、約3時間20分に渡って説明した。
PS5を「史上最大のプラットフォーム」と言う理由
ゲーム&ネットワークサービス分野については、ソニー・インタラクティブエンタテインメント 社長兼CEOであり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの代表取締役社長も務めるジム・ライアン氏が説明を行った。
ゲーム&ネットワークサービス分野の2021年度業績は売上高が2兆7,400億円、営業利益が3,460億円に達したことに触れ、「過去を振り返ると、プラットフォームの移行期は業績が急激に低迷していたが、PS5への移行期は過去とはまったく異なり、移行期にも関わらず、過去最高の売上高、営業利益を達成した。新たなプラットフォームにおける強固なビジネス構造、PS4コミュニティの規模やエンゲージメント、サービスビジネスからの売上げが貢献している」と述べた。
ライアン氏は、PS5を「史上最大のプラットフォーム」と表現し、その理由として、6つの要因をあげた。
ひとつめは、「過去に類を見ない需要」があることだ。昨年のIR Dayでは、発売から半年を経過した時点でも完売状況が続いていたことを示したが、「18カ月を経過したいまでも同じ状況が続いている。購買意欲はPS4の同時期と比べて2倍に達しており、コンソールの販売台数も高いパフォーマンスを発揮している」とし、米国においてはPS4では、1分間に6台のペースで販売されていたものが、PS5では1分間に1,000台のペースで販売されたこと、これが世界中で同様の傾向が見られていること、とくに中国市場では強い需要があり、PS4では11位だった市場規模が、PS5では6位の市場規模にまで拡大していることを示した。
2つめは、「カテゴリー別成長率」である。過去2年間のコロン禍でゲーム業界全体が高い成長を遂げていることや、コンソールゲーム機も2025年度までの年平均成長率が4%という継続的な成長が見込まれていること、そのなかでPS5のシェアが拡大する見込んでいることを示した。
そして、「強いブランド力」、「魅力的なゲームラインアップ」、「過去最高のエンゲージメントを達成」の3点もあげた。
ライアン氏は、「私たちは、ブランド、ゲーム、コミュニティが、3つの主要なアセットであると考えている」とし、グローバルでのブランドランキングでは7位に上昇し、確固たる地位を築いていることや、PS5世代においても高いブランド力を維持していることを強調。ゲームでは、初期ステージでありながらも、高品質のゲームを数多く提供していること、PlayStation Studiosのタイトルが高い評価を得ていることなどを示した。また、エンゲージメントでは、ゲームプレイのアタッチレートをはじめとする7つの主要な指標において、PS4を上回るパフォーマンスとなっており、これらが予想を上回る水準であることに触れた。
これらにより、コンソール1台あたりの平均支出額はPS4を15%上回っている実績を示し、とくにライブゲームサービスの成長が牽引していると説明した。
6つめが、「PS5供給課題への取り組み」である。PS5は、発売以来、コロナ禍でのサプライチェーンの混乱もあり、部品調達の遅れが影響。品薄状態が続いている。「状況は改善しつつあるが、新型コロナウイルス関連の不確実性は残っている。とくに上海などで続いているロックダウンの影響は予測できない部分がある。3年目となる2022年度は、PS5の生産数を大幅に拡大する予定であり、PS4の3年目と比べて供給量の差を縮め、2023年度内には、PS4の4年目のインストールベースを超えることが可能になる。その後は、コンソールの生産数を過去になかったレベルにまで大幅に増加させる」と述べた。
一方、PS4については、「多くのパブリッシャーがPS4向けに新たなコンテンツをリリースしており、私たちは、過去最長のライフサイクルを持つプラットフォームであり続けられるように取り組んでいく」と述べた。現在、PS4の利用者数は8,400万人となっている。ライフサイクルで見た場合に、PS3の同時期の利用者数は3,610万人であり、2倍以上の利用者数になっているほか、現時点でもPS Storeで販売されているコンテンツの65%がPS4向けであり、PlayStation Plusでは69%がPS4ユーザーだという。
ゲーム分野の成長、PS PlusやPS VR2、積極M&Aなどで拡大
ゲーム分野における成長戦略については、「サービスの拡大・強化」、「ポートフォリオの拡大」、「顧客基盤の拡大」の3点から説明した。
「サービスの拡大・強化」では、2022年5月からスタートした新たなPlayStation Plusについて触れ、「PlayStation PlusとPlayStation Nowを統合した。2つのサービスは、これまでにもそれぞれに高い評価を得ていたが、PlayStation Now加入者の4分の3がPlayStation Plusにも加入しているなど、コミュニティのために改善の余地があると感じていた」と背景を説明。既存PlayStation Plusと同様のサービスを提供する「エッセンシャル」、400以上のPS4およびPS5タイトルをダウンロードしてプレイできるのに加えて、発売日からプレイ可能なタイトルを提供する「エクストラ」、クラウドストリーミングサービスを利用できたり、購入前の試遊が可能であったり、定番ゲームをプレイできる「プレミアム」の3つのプランを用意。「プレミアムは、過去の世代のコンソール向けの旧作タイトルをプレイすることが可能になるため、最も熱心なプレイヤー向けのプランとなる。魅力的なサービスを提供できる」としたほか、「日本などで開始した新サービスの反応はポジティブある。PlayStation Plusのビジネスを拡大でき、1人当たりの平均支出額も増やすことができる」と自信をみせた。
新たなPlayStation Plusは、グローバルに順次サービスを拡大。日本およびアジアでのサービス開始に続き、米国、欧州にも展開する。2022年度には5,000万人以上の加入者数を目指すという。
「消費者にとっても、私たちのビジネスにおいても様々なメリットがあり、誰にとってもWin-Winになる」とした。
また、米国に続き、2021年末からは欧州6カ国でサービスを開始したオンラインストアのPlayStation Directは、2023年の早い時期に欧州全体への展開を完了する予定であり、2022年度の売上高は前年比3倍増の15億ドルを見込むという。
さらにPlayStation VR2の発売と同時に、20作以上の主要タイトルを発売。VR体験の場を広げることができると述べた。
「ポートフォリオの拡大」では、積極的なM&Aを進めていることを示し、「これらの投資の目的はPlayStation Studiosのコアとなる強みをさらに拡大していくことに加えて、これまで十分にプレゼンスが発揮できなかった領域において、ゲーム開発の知見や技術を取り込むことにある。とくに、世界中でライブゲームサービスを提供しているBungieとのパートナーシップによって、私たちがライブゲームサービス分野における戦略を推進することができる」とし、「終わりのないゲームといわれるライブゲームは、今後のゲーム市場を牽引していくことになる。2025年度までにPlayStation Studiosに対する投資の55%がライブゲームサービスになる。ポートフォリオのバランスも大きく変化することになる。2025年度には12タイトルのライブゲームをリリースする予定であり、ライブゲームサービスに向けた投資は今後も増やしていく」という。
M&Aについては、「戦略が完了したわけではない。PlayStation Studiosの進化もこれからである。戦略に合うターゲットを模索し、戦略を達成していく。経営チームのエネルギーをM&Aにしっかりと投下していく」と述べた。
また、新規IPへの投資を拡大し、これらを映画やグッズ、テレビシリーズなどのゲーム以外のビジネスにも展開することも示した。
3つめの「顧客基盤の拡大」では、「最大の機会であると同時に、最大のチャレンジである」と位置づけ、PC向けタイトルを大幅に強化に乗り出す考えを示した。PC向けビジネスではね2022年度には前年比3.8倍となる3億ドル以上の売上げを計画。2022年1月にリリースした「God of War」が高い評価を得ているほか、2023年度以降は、ライブサービス戦略により、PCの売上高を大幅に増加させる考えを示した。
また、モバイル領域では、「水面下の活動がようやく形になってきた」とし、モバイル業界を代表する企業とのコラボレーション、社内開発の専門性を活用できる独自のネットワークの確立、トップクラスのモバイル向けパブリッシングチームを構築することに取り組むとした。その上で、ライアン氏は、「2025年度までに、私たちがリリースする新作タイトルのほぼ半分がPCおよびモバイルになる。これは、ビジネス構造を変革するものであり、これまでの歴史において、最も劇的な変化になる」とし、「これまでは、コンソールという狭いゲーム市場に制限してビジネスを行っていた。PCおよびモバイルに拡大することによって、より大きな市場でビジネスができる。ライブゲームサービスのビジネス拡大にもつなげることができる。この分野に対して、正しい知識を持ち、正しく実行することができれば、大きな成長の機会がある。私たちのゲームを楽しむ人の数が大きなものになるだろう」と語った。
さらに、「コンソールのプラットフォームや、PCやモバイルに留まらず、バーチャルリアリティやクラウド、メタバースなど、PlayStationのゲーム体験を楽しめるように未来を構築する決意である。メタバースについては、将来どのような形になるかは誰もわからないが、既存のゲームをすべて置き換えるものにはならないだろう。ただ、大きな成長の機会であることは間違いない」とした。
また、ソニーグループ内の連携についても説明し、具体的な事例として、映画「Uncharted」におけるソニー・ピクチャーズエンタテインメントとのコラボレーションの実績をあげ、「PlayStationの様々なアセットを効果的な手法で活用していく。グループ内のコンテンツやサービスの相互活用、共同プロモーション、ブラント強化活動にも取り組む」と述べた。
音楽分野はストリーミング会員数の増加、新興市場にも意欲
音楽分野は、国内事業と海外事業にわけて、説明が行われた。
海外事業については、ソニー・ミュージックグループ チェアマンであり、ソニー・ミュージックエンタテインメント CEOのロブ・ストリンガー氏が説明した。
2021年度のソニー・ミュージックグループの業績は過去最高を更新。5年連続で売上高、営業利益、営業利益率を更新し続けていることや、ストリーミング売上げ成長率が業界全体を上回っていることなどを示し、「この成功はクリエイティブを中心とした判断や、アーティストのための健全な原則によって成り立っている。そして、今後も多大な利益を創出するための体制が整っていることを示している」と切り出した。
音楽制作では、アデルのアルバム「30」が全世界アルバム売上げトップとなるなど、グローバルチャートにおけるシェアが劇的に改善。Spotifyのグローバル楽曲ランキング上位100曲における各週の平均シェアは36.1%となり、3年間でシェアが15%も増加したという。「この1年で多くのヒット曲を生み出したことを示す数字である。とくに、ラップ、ヒップホップ、ポップといった主要ジャンルで市場シェアを大幅に伸ばしている」とした。
音楽出版のソニー・ミュージック。パブリッシングも、2021年以降、トップシェアを維持していることも強調した。
ストリンガー氏は、「アーティストやソングライターとの契約の拡大、コンテンツを保有する会社の戦略的買収などを通じて、タレントへの積極的な投資を行い、事業を加速させている」とし、ヒップホップの有名なレーベルであるAlamo Recordが持つカタログや将来の楽曲の権利の過半を獲得したこと、エレトクロニックダンスミュージックのレーベルであるUltra Recordsを完全子会社化したこと、さらにはAWALやSom Livreの買収や、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンの音源と楽曲の権利を永久に保有するなど、50年以上に渡るパートナーシップを持つアーティストとの連携も強化している。
一方、音楽制作業界や音楽出版業界は、世界的なストリーミング会員数の増加やARPUの改善により、継続的な拡大をみせ、新興市場においても力強い拡大がみられていると指摘する。
「市場全体では、ストリーミングの有料サービス会員数が20%増加しており、その成長を支えているのが新興市場である。また、オーディオやビデオの広告ベースのサービス収入は31%増となっており、ストリーミング市場において、音楽をベースとしたコンテンツが強い需要にあることを示している」とする。Spotifyには、前年比17%増となる8,200万曲が提供され、全世界で聴かれている音楽のうち、75%がカタログ楽曲で占められているという。こうした動きは投資家からも注目を集めており、カタログ売買が流動化。ソニー・ミュージックグループでは、これらの資産を守る活動にも力を入れており、音楽配給事業や著作隣接権管理事業も強化してきたと述べたほか、2万7,000の独立系レーベルと契約して音楽配信を行っているOrchardとの事業連携も強化していることを強調した。
また、ソニー・ミュージックグループの契約アーティストは、5年間で30%増加し、クリエイティブスタッフは85%増加したという。さらに、新興市場での音楽事業のポジションを強化、ブラジルやインドではナンバーワンとなっているほか、中国ではポートフォリオを拡大、アフリカや中近東における事業体制の強化にも取り組んでいるという。
「音楽市場に対して行ってきた支援は、音楽コンテンツの新たな利用機会を生み出し、アーティストやソングライターの収益拡大につながっている。ソーシャル、ゲーム、フィットネスなどのカテゴリーからは年間約5億ドルを創出し、新たなマネタイズ手段としてWeb 3市場にも積極的に参入ていく。また、NFT分野にも投資をしている。オーディオ/ビジュアルコンテンツに対して、消費者が関与るするところには深く取り組んでいく。ソニーグループの各事業との連携を含めて、競合他社とは一線を画した事業体制を構築しており、音楽業界において、最もクリエイターに優しい企業を目指している」などとした。
音楽・アニメの総合エンタメ、海外収入がドライバーに
国内での音楽事業については、ソニー・ミュージックエンタテインメント 代表取締役社長 CEOの村松俊亮氏が説明した。
「ソニー・ミュージックは、50年前に音楽事業からスタートし、現在では、音楽とアニメ、ソリューションのポートフォリオを軸とした総合エンタテインメント企業として、ファンエンゲージメントの創出と最大化を目指している」と、同社の方向性を示した。
2021年度は、コロナ禍において、ライブ開催や劇場公開そのものの制限、入場キャパシティの制限などの影響を受けたが、優里やYOASOBIなどの所属アーティストの楽曲が、ストリーミングにおいて大ヒットし、熱狂的なファンコミュニティを意味する「ファンダム」を形成するといった成果もあがっているという。また、「鬼滅の刃」では、歴史的ヒットとなった劇場公開の勢いを維持しながら、ビデオやゲーム、新テレビシリーズのヒットにつなげたことも示した。さらに、ソリューション事業では、ソードアート・オンラインやデビルマンの展示会を仮想空間で展開。Stagecrowd では新たに電子チケットサービスを導入し、ファンクラブサービスの拡充を進めたという。「パートナトーとの協業を強化するとともに、テクノロジーをファンサービスに取り込むことで、新たなエンタテインメントの楽しみ方を提案することができた1年だった」と振り返った。
一方で、日本の音楽市場の規模は世界で2位となっているものの、フィジカル市場が約7割を占める特殊な構造となっているため、ストリーミング市場の成長が限定的であり、全体としてはフラットになっていることを指摘。「今後は、デジタル市場を拡大させる必要があり、そのためには、ファンダムによる経済圏の取り込むことが重要となる。ファンダムこそがヒットを創出するという原点に立ち返り、ライブ、ファンクラブ、グッズなどの領域を意識したファンダムアーティストの開発と強化、マーケティング強化とソリューションによるファンサービスの拡充に取り組む」とした。
日本のアニメ市場は、マネタイズの幅が広いのが特徴であり、国内市場の成長とともに、様々な商品化および海外収入が全体の70%以上を占める構造になっている。とくに海外収入は今後の成長ドライバーに位置づけているという。
ソニー・ミュージックエンタテインメントでは、制作する作品の多様性、展開するチャンネルの多様化に向けて、自社アニメ制作スタジオに加えて、パートナーシップによるクリエイティブの強化、商品企画力とライセンス機能の強化、Crunchyrollを中心としたグローバル配信の拡大、IPのライフタイムバリューの最大化に取り組むという。
「『鬼滅の刃』では、3年前のテレビ放送開始時に、漫画ファンからアニメファンにまで支持を広げ、一昨年の劇場作品のヒットで多くの人に広く認知された。さらに、海外ファンの獲得にあわせて、テレビ新シリーズでは海外配信を開始し、成長を遂げるという成功例がある。こうしたライフタイムバリューが大きな作品を積み重ねて、サステナブルな事業成長の基盤にしたい」と語った。
モバイルゲーム市場は、足元の成長は緩やかになり、レッドオーシャン化していることを指摘しながら、既存のヒットタイトルのゲーム運営の強化、アニメ化、リアルイベントの開催などによるファンエンゲージメントの向上による長期的運営を目指すほか、映像表現やゲームのクオリティの高さにこだわったゲームの開発体制の強化を進めるとした。
「『Fate/Grand Order』は、2015年の発売以来、7年目を迎えたが、いまでも多くの熱狂的ファンに支えられている。この事業をラセングルが継承し、今後、開発、運営体制の連携が強固なものになる。アニメ企画などとの連動も期待でき、ライフタイムバリューを最大化できる」とした。
そして、「音楽、アニメ、ソリューションの事業間連携を通じて、IPの価値を最大化してきたが、成功体系をさらに推し進めるためにソニーグループの連携を強化。Crunchyrollを通じて世界中のファンに、数々のアニメ作品を直接届ける。アニメファンコミュニティへのさらなる展開を模索していく。ジャパンカルチャーの海外展開に結びつけたい」などと述べた。
コロナ禍に苦しんだ映画事業、戦場は「ストリーミング」へ
映画分野については、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 会長兼CEOのトニー・ヴィンシクエラ氏が説明した。
ヴィンシクエラ氏は、「昨年のこの時期は、すべての映画スタジオがコロナ禍に起因する無数の課題と不確実性に苦しんでいた。だが、業界は立ち直りつつある。劇場の入場者数が増え、プロダクションのシャットダウンが減り、スタジオには社員が集まって知識や創造力をフルに発揮できるようになった」とし、「2021年度は、予想を大きく上回り、史上最も好調な業績を達成するとともに、将来に向けたM&Aも実行することができ、素晴らしい1年になった」と振り返った。
好調な業績の理由として、戦略的に強みを持つ分野への投資、中核ではない事業からの撤退、強力なIPへの継続的な投資、劇場公開へのコミットメントなどをあげた。
「Venom: Let There Be Carnage」や「Ghostbusters: Afterlife」などが高い興行成績を残し、「Spider-Man: No Way Home」は米国で歴代3位の興行収入を達成して、現時点で19億ドルに達していることを報告。また、ストリーミング向けライセンスも収益に貢献し、「The Mitchells vs. the Machines」は、配信開始時にはNetflix最大のアニメ映画になったという。また、テレビ番組の制作でも成果をあげ、「SPT」はプライムタイム・エミー賞で37部門にノミネートされ、12部門を受賞したという。
さらに、2021年夏に買収を完了したCrunchyrollは、Funimationとのサービス統合を進め、アニメ作品を配信するグローバルプラットフォームとして強化。1万6,000時間以上、4万以上の作品にアクセスできるようになっており、会員数も着実に増加しているという。
一方で、「メディアとエンタテインメントの世界は、消費行動の変化によって、驚異的なスピードが変わっている。ストリーミング戦争が進行中であり、多くの企業が、そこに大量のリソースを割いている。また、、劇場興行収入がパンデミック以前の水準には戻っていないのは、新型コロナの影響だけでなく、ストリーミングプラットフォームを優先しているスタジオが増えていることも影響している」と指摘。「ソニー・ビクチャーズは独立系プロバイダーであり、あらゆるコンテンツ配信事業者と連携できる自由度があり、ストリーミング競争は好都合である。また、ソニー・ピクチャーズは、プレミアム作品の劇場公開に100%コミットする唯一のメジャースタジオであり、従来通りの劇場公開を望むトップタレントやクリエイターにとって魅力的なスタジオになっている。エンタテインメント性の高い作品を維持し、ストリーミング向けのオリジナル作品の需要にも応える体制を整えている」などとした。
さらに、ソニーグループとしての連携も強化。人気ゲームをもとにした大型長編映画である「Uncharted」は、約4億ドルの興行成績を収めただけでなく、今後のグループ内連携の可能性に向けた成功体験になっているという。現在、PlayStationと連携した映画およびテレビ番組のプロジェクトは、「The Last of US」、「Twisted Metal」、「Ghosts of Tsushima」など、10タイトルあるという。
そのほかにも、「新作映画などが視聴できるアプリ『Bravia Core』をブラビアテレビに搭載したり、CrunchyrollとAniplexがアニメを共同制作したり、バーチャルプロダクション技術を活用したりといったように連携の幅が広がっている」と述べた。
さらに、「ロケーションベースエンタテインメントの新たな機会も模索している」として、2022年後半にはタイにAquaverseをオープンし、2023年には、Wonderverseを含む新たなアトラクションをオープンするという。また、GhorstbustersやJumanjiのアトラクションをイタリアと英国で展開することを予定している。「新たなアトラクションにより、長期的な価値を最大化する」と述べた。