新4K8K衛星放送の視聴可能機器の累計出荷台数が、2021年8月には、1,000万台に到達した模様だ。

一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が、最新データとした発表した2021年7月までの累計出荷台数は975万1,000台となっており、8月中に約25万台を出荷すれば、1,000万台に到達する。

2021年7月には34万4,000台を出荷。2020年6月以降は、1年間に渡って、毎月30万台以上を出荷しており、この実績から見ても、8月には1,000万台を突破するのは間違いないといっていい。

  • 国内1,000万台達成は何を意味する? 新4K8Kテレビの普及シナリオは次の段階へ

    新4K8K衛星放送視聴可能機器台数推移

新4K8K衛星放送が普及の好循環入り

業界にとって、1,000万台突破は大きな意味を持つ。

世帯普及率では20%近くなるため、テレビ放送としての影響力が拡大。民放各社は新4K8K衛星放送におけるテレビCMを獲得しやすくなる。新4K8K衛星放送での収益が拡大すれば、撮影機材や番組制作への投資が拡大し、ピュア4K放送の番組が増加。視聴者に対して、高画質のメリットをより訴求しやすくなり、番組をより楽しむことができる。その結果、4Kテレビの視聴者や販売台数の増加にさらに拍車がかかるという好循環が生まれる土壌が作られることにもつながるからだ。

また、イノベータ理論では、普及率が20%近くに達することで、イノベータおよびアーリーアダプターの段階から、アーリーマジョリティの段階へと入ることになり、普及が促進されるフェーズになる。

その点でも、1,000万台という節目に到達することは、新4K8K衛星放送の広がりに弾みがつくきっかけとしては重要だ。

A-PABでは、東京オリンピックの開催までに1,000万台到達を見込んでいたが、それでも8月中に1,000万台を達成すれば、東京パラリンピック開催期間中には累計1,000万台を達成したということになりそうだ。

先に触れたように、A-PABによると、2021年7月の新4K8K衛星放送視聴可能機器の出荷台数は34万4,000台。内訳は、新チューナー内蔵テレビが24万4,000台、外付け新チューナーが1,000台、新チューナー内蔵録画機が4万5,000台、CATV向け新チューナー内蔵セットトップボックスが5万4,000台となっている。

また、2021年7月までの累計では、全体が975万1,000台。新チューナー内蔵テレビが676万5,000台、外付け新チューナーが25万7,000台、新チューナー内蔵録画機が110万7,000台、CATV向け新チューナー内蔵セットトップボックスが162万2,000台となっている。

  • 新4K8K衛星放送視聴可能設置台数

例えオリパラ不発でも、プラス要素は多かった

では、東京オリンピック/パラリンピックの需要という点では、どれぐらいのインパクトがあったのだろうか。

その観点でみると、やや迫力に欠けたと言わざるを得ない。

A-PABの調査では、前年7月の新4K8K衛星放送視聴可能機器の出荷台数は40万1,000台。それに比べると、2021年7月の実績は、前年同月比14%減と2桁のマイナスになっているのだ。

この背景には、前年同期には、1人あたり10万円を給付した特別定額給付金を活用して薄型テレビを購入した人が増加。想定外の需要が生まれたことが影響しており、オリンピック需要はそれを超えることができなかったともいえる。また、2021年6月には、45万9,000台と、コロナ禍においては、最大の出荷台数を記録していたことは見逃せない。ここでも、6月に需要が集中した反動が、7月に見られたというわけだ。

東京オリンピック開催前までは、有観客での開催、無観客での開催のほか、一部では中止や再延期といったことも想定されていたが、テレビ業界にとっては、最も多くのテレビ視聴が期待される無観客開催となったことはプラス要素だっただろう。

実際、ビデオリサーチによると、7月23日にNHK総合で放送された開会式の平均世帯視聴率(関東)は56.4%となり、1964年の東京オリンピックの61.2%に次ぐ、歴代2位の高視聴率を達成。BS放送では、NHKで4Kと8Kによるオリンピック放送が初めて行われ、民放BS各局でも一部の競技を4Kで放送。これまでにないオリンピックの臨場感を、自宅のテレビで楽しむことができるようになっていた。

高画質化と大画面化へのニーズは健在か

薄型テレビの販売動向のなかで注目しておきたい点がある。それは、有機ELテレビと大画面テレビの売れ行きの良さだ。

量販店などの販売状況を調査しているBCNによると、2021年7月の薄型テレビ全体の販売台数は、前年同月比5.1%減だった。だが、この内訳を見ると、液晶テレビは前年同月比9.9%減と2桁減に近いマイナスとなったが、有機ELテレビは前年同月比49.1%増と、1.5倍に伸びている。有機ELテレビは、黒色の表現をはじめとした高画質に加えて、応答速度が速いこと、視野角が広いといつたメリットがあり、スポーツ観戦に適している。各社から製品ラインアップが揃ったことや、実売価格が低下していることも有機ELテレビの販売増加につながったといえる。

また、大画面テレビの販売も伸びている。BCNの調査では、40型未満は全体で13.6%減とマイナスになり、40型台の13.5%減となっているが、50型台は7.8%増、60型は21.9%増、70型以上は49.1%増と軒並み、前年実績を上回っており、しかも大画面化するほど伸び率が高くなっている。

これもスポーツ観戦に適していたり、高画質の映像を大画面で見たいというニーズが顕在化したものだといえるだろう。

薄型TV サイズ帯別販売台数前年同月比 2021年7月(月次)
サイズ 販売台数 前年同月比
~20型 63.9%
20型台 92.6%
30型台 89.9%
40型台 86.5%
50型台 107.8%
60型台 121.9%
70型以上 149.1%

新4K8K衛星放送視聴可能機器の出荷台数が、1,000万台に到達したとみられるなかで、今後、テレビの需要にどんな形で弾みがつくのかが注目される。