この4月から、新たに数十万人単位の若者が社会人となり、「職場デビュー」を果たすことになる。新たな人生のステージを迎えるにあたり、期待に胸を膨らませている人もいるだろうが、これまで慣れ親しんだ「学生」から「社会人」になることに対し、希望以上に不安を抱いている人もいるはずだ。
「勉強とは勝手が違う仕事への不安」「遅刻が許されないプレッシャー」「上司や同僚との人間関係」など、さまざまな心配事があるだろうが、「身だしなみ」という項目もそのひとつに含まれるだろう。
個性的な身なりが許された学生時代とは違い、社会人はTPOに見合った服装や持ち物が求められる。例えばスーツはその最たる例だが、これまでスーツを着る機会が限定されていた人にとっては、「正直何を選べばいいのかわからない」というのが本音のはずだ。
そこで今回、スタイルアドバイザーでタカギ&アソシエイツ代表でもあるたかぎこういち氏に、社会人としての必須アイテムを選ぶ際のポイントをうかがった。社会人として恥をかくことがないよう、ぜひとも参考にしてほしい。今回のテーマは「ビジネスバッグ」だ。
ビジネスバッグを選ぶ際の基準
新社会人の皆様、人生の新しいステージに進まれることを心よりお祝い致します。今まではバックパック1つですみましたが、社会人となればそうはいきません。ビジネスパーソンであれば、きちんとしたビジネスバッグが不可欠な場面が必ずあります。
職種によって仕事上、持ち運ぶ量も千差万別です。ネット上での資料提供が定着したとはいえ、依然として会議やプレゼンでは紙資料もなくなりません。営業用のパンフレットを持ち歩かれる方もいます。
そこで今回は、収納容量・デザイン・カラーと多様化するビジネスバッグを紹介したいと思います。バッグをセレクトする際には、以下の5つに気をつけましょう。
1.バッグ自身が軽い
2.過剰なデザインでない
3.色使いもシンプル(黒1色でなくても大丈夫です)
4.取手が自分の手になじむ
5.収納容量が自分に適している(PCや書類・パンフレット類も収納できるサイズです)
今回は皆さんの大きな夢を入れるのに相応しい、若さにあふれるバッグを紹介します。
1.ace.(エース) ELV-3.5 2WAYバックパック
最初にご紹介するのは、やはり定番スタイルの進歩系ビジネスバッグです。昭和15年の創業から日本におけるビジネスバッグの歴史を刻んできたブランド。今回はエースが社名を冠したブランド「ace.」の新商品です。
近年、議論があったビジネスリュックはもはや定番です。日本では電車通勤が日常の風景ですが、ご紹介する「EVL-3.5 2WAYバックパック」は電車通勤にフォーカスして開発された2ウェイバッグ。車内で邪魔になりにくいスクエア型の薄マチ(バッグの厚さ)型です。
網棚に上げ下げしやすいサイドハンドル付きで、向きを変えたときにも中身が飛び出さないフラップが内装ポケットにも完備されています。カラーは基本のブラックのみ。サイズは14L(リットル)と12Lの2サイズです。身長にあわせて選んでください。
2.ポール・スミス ユーティリティポケット2WAYブリーフケース
高級感のある素材と深みのあるカラーナイロンで表現された2つのカラーブロック。英国スタイルを基本としながら、上質感と実用性を兼ね備え、遊び心を忘れないポール・スミスらしさをプラスしたビジネスバッグです。
愛用すると艶を増す上質なレザーを組み合わせたジップ部分のディテールが、モダンな印象を与えます。裏地はヴィヴィッドな情熱あふれるオレンジカラーがアクセント。ビジネスシーンはもちろん、タウンでも持てる汎用性の高さも魅力のひとつです。カラーブロックはネイビーとブラウンの2色展開。若い皆さんによく似合うと思います。
取り外しできるストラップ付きなので、ショルダーバッグとしてもカジュアルスタイルに使用可能です。
3.AS2OV(アッソブ) エクスクルーシブ バリスティックナイロン 3ウェイ バックパック
読者の方は初めて聞くブランド名でしょう。新社会人の方々には、既存ブランドだけでなく注目ブランドもご紹介いたします。2013年に元マスターピースのディレクターと仲間達で立ち上げられたブランドです。社名が「UNBY(あんばい)」で、"ええ塩梅"が由来という遊び心あふれる若い企業です。メイドインジャパンにこだわり、その設計は細部にまでわたっています。本体の素材や付属金具もオリジナルです。
ビジネスバッグといえども、アッソブらしいアウトドアテイストを残しています。スーツを必要としない職種なら、このテイストはピッタリかと思います。たっぷりの収容量で、ショルダーストラップまで付いた3ウェイ使いが可能。カラーはブラックと写真のベージュの2色を展開しています。
4.Orobianco(オロビアンコ)
若いビジネスマンから強い支持があるのは、スタイルはもちろん、カラー展開の豊富さ、シンプルながら職人技の凝ったディテールといった要素も特徴的で、お洒落な自己表現ができるからでしょう。スーツでもジャケットスタイルでも似合うスタイリッシュなバッグをご紹介します。
「PRIGOLO L-G」は無駄な装飾を一切除いたデザインのビジネスブリーフバッグ。収容量は少なくていいビジネスマン向けです。天(上部)ファスナーに、背面にはマグネット止めのポケット、内部は仕分けポケット2つとファスナーポケットという仕様になっています。カラー展開はレッドを含む6色。付属に調整可能なショルダーストラップと2本のハンドルを1つにする巻革が付きます。
5.無印良品 PC収納ポケット内装ビジネスブリーフバッグ
MUJI(無印良品)はいまや日本を代表するグローバルブランドのひとつです。意外と知られていないのですが、無印良品もビジネスバッグを販売しています。他のバッグ専業ブランドと違い、無印らしい絞り込んだ提案です。コストパフォーマンスは抜群で、最初のビジネスバッグならありです。
デザインは基本のブリーフタイプ。内部にはPC用の収納部分があります。本体は撥水加工のナイロンに合皮を付属に使用しながらも、しっかりとしたビジネスバッグとしての縫製になっています。サイズやカラーは選べませんが、このレベルの商品で5,000円を切っているのは驚きです。さすが無印良品。気に入れば財布が喜びます。ショルダーストラップ付きです。
「やる気スイッチ付き」のバッグを見つけよう
今回はキャラクターの違うブランドを紹介しました。皆さんがこれから就航する新しいステージは甘くありません。仕事や人間関係で必ず落ち込むときがあります。そんなときでも会社に向かう際、最後に手にするのがバッグです。取手を握る際にぐっと力が入る「やる気スイッチ付き」のお気に入りバッグを見つけてください。
今は見えないでしょうが、必ずやすばらしい未来が皆さんを待っています。その未来に向かって前に進むことを「成長」と呼びます。このバッグの選び方の記事が皆さんの成長に寄与できたら幸いです。そして、新社会人の方々の成長スピードを加速度的に高めるため、ソクラテスの言葉を最後に。
「本をよく読むことで自分を成長させていきなさい。本は著者がとても苦労して身に付けたことを、たやすく手に入れさせてくれるのだ」
筆者プロフィール: たかぎこういち
スタイルアドバイザー。タカギ&アソシエイツ代表。1952年大阪生まれ。若くして輸入服飾雑貨卸業を大阪で起業。その後1998年現フォリフォリジャパングループとの合弁会社取締役に就任して以来、アニヤ・ハインドマーチ、オロビアンコ、リモワ、マンハッタンポーテージ等の海外ファッションブランドを日本市場に紹介、成功させる。
また、「東京ガールズコレクション」「デザイナーズ&エージェント」など国内外のファッションイベントにも参画。現在は日本のビジネスパーソンのファッションリテラシー向上を目指して体系化したオリジナルの「6ポインツ・メソッド」を伝えるべく、「日経DUAL」「WEDGE Infinity」などへの記事執筆や文化服装学院、東京モード学園での講師経験を持つ。
著書に「オロビアンコの奇跡」「LIKABLE GUY STYLING FILE」共に繊研新聞社刊「一流に見える服装術」日本実業出版社他。