昨年登場したクルマの中でインサイト、プリウスに続く注目車種が、トヨタブランドのミドルサイズ・ハイブリッドカーのサイ(SAI)。発売前にはネーミングについていろいろなウワサがあったが、最近のトヨタ車にしては珍しく頭文字にSが付く(セッテは正式にはパッソセッテ)車名が正式名になった。

デザインは異なるものの基本メカは、先に登場したレクサスHS250hと同じだ

クリアレンズのコンビライトやトヨタブランドのマークがブルー化されていることで、ハイブリッドカーであることが分かるようになっている

市販車はきっと違う一般的なネーミングになると予想していたがサイのままで登場した。車名の由来は、開発キーワード。「才」と「彩」がそれで、才は優れた環境・安全性能を有する「才能」。彩は上質感をオシャレ・シックに演出する「彩り」を表しているという。

サイを簡単に紹介するなら、レクサスHS250hのトヨタブランド版ということ。こう表現することをトヨタのエンジニアは嫌っている。試乗会でもレクサスと同じというと必ず反撃。ときには資料を取りだして違いを事細かに説明してくれた。スペックやデザインは確かに異なるクルマだが、エンジニアがいうほどレクサスと違っていない。

とりあえずスペックから。全長はHSより95mm短い4605mm、全幅は15mm狭い1770mm、全高は10mm低い1495mmだから、ほんの少しだけサイのほうが小ぶりになっている。バンパーなどのデザインが異なるため寸法が違っているが、もちろんプラットフォームなどの基本構成は同じなのだ。エンジニアが同じといわれて嫌がるほどの差はない。むしろプレミアムブランドのレクサスと同じだというのだから、喜んでもいいはずだが、やはりエンジニア魂がそれを許さないようだ。レクサス開発チームとトヨタブランドの開発チームはまったく別で、似ているのは開発エンジニアに提供される素材が同じだからということらしい。レクサスのエンジニアがサイと同じということを否定するならわかる気もするが……。

メカニズムも基本的にHS250hと同一だ。搭載するハイブレッドシステムは2.4Lエンジンに2JM型交流同期モーターを組み合わせている。サイのほうが車両重量は50kgから70kgほど軽くなっているが、10・15モード燃費もHS250hの23.0km/L、JC08モードの19.8km/Lと変わらない。

グレード展開はHSが標準車とバージョーンS、I、Lという実質4グレード。サイは上級グレードのGとSだが、それぞれにASパッケージを設定しているのでグレード展開もよく似ている。サイのSは装着タイヤが205/60R16と細いため、最小回転半径が5.2mと小さくなっているが、これはタイヤサイズの違いによるものだ。サイGはHSと同じ5.6mになっているので、狭い場所での取りまわしの面でいえば、サイのSグレードのほうが若干有利だ。

デザイン面を見るとやはりトヨタブランドのクルマであることがよくわかる。基本的な造形はHSと同じで、ウエストラインの高い位置にほぼ水平なキャラクターラインが一本通る。これはグリーンハウスとの兼ね合いで似たものにならざるをえないのだが、細部の処理は違っている。

フロントはHSのメタル調の大胆なグリルに比べ、おとなしい普通のグリルデザイン。上部にメタル調のカバーを付けるという手法は同じだが、迫力や質感で差を付けている。サイドはメタル調のウインドーモールでガラスを囲むのは同じだが、HSはリヤドアにレクサス共通のLフィネスデザインを使う。サイのデザインはクリーンな感じはするが、プレミアム感は薄い。これは意図的にデザインに差を付けたわけで、レクサスとトヨタブランドの違いを、デザイン面で明確にしなければならないということだ。同じメカニズムを使う以上、差を付けるのにはデザインと質感を変えるしかない。

しかし、インテリアを見るとHSと基本デザインが同一であることがわかる。エクステリアと同様にもっと違うデザインにしてくると思ってから意外だ。フライングバットレスのデザインも同じで、シフトの位置や操作も同じ。うれしいことにリモートタッチをトヨタブランドとして初採用。これはパソコンのマウスのようなインターフェイスで、優れた操作性とクリック感を持っているのが特徴。レクサスではRXからすでに採用が始まっていたが、ようやくトヨタブランドまでこの機能が降りてきたわけだ。サイは指が触れる場所を人差し指と中指ではさむようなデザインになっているため、さらに操作性が向上している。ボタンサイドに付けられている決定ボタンのスイッチの位置もよく、RXから採用が始まったこのインターフェイスの中でもっとも操作性がいい。

オプティトロンメーターは美しくてシンプルなデザイン。メーターフードの近くにパワーメーターとハイブリッドのモードを表示。メーター中央にはマルチインフォメーションをセットしていて、かなり見やすく仕上がっている。内装にもリサイクル素材を多用するなどサイは新しい試みも行っている。

実際に走らせてみるとスタートのスムーズさから乗り心地までHS250hによく似ている。ハイブリッドらしい静粛性を保ちながら、モータースタートならではのスムーズな発進はサイでも共通。パワーユニットが同じだから同じフィーリングになるのは当然で、とくにモーター走行はプログラムが似ていればドライバーが感じ取れるほどの差が現れないのだ。サイはプレミアムブランドのレクサスに似ているのだから喜ぶべきだが、こうしたモーターユニットを共用する場合は、レクサスは味付けに苦労することになるだろう。EVになればなるほどパワーユニットによる差別化がしにくく、プログラムの変更で味わいを出していくことになる。

コンビライトはもちろん省電力のLEDタイプだ

セダンということで控えめなデザインのスポイラーを装着

もちろんエコカー減税と補助金の対象車だ。このクルマも人気で納車待ちが長くなりそうだ

フロントグリルを含め、フロント周りのデザインには高級感がある。HS250hとの価格差を考えると買い得感がある

Gグレードはトヨタの最新ハイブリッドカーらしく、LEDヘッドライトを装備

トヨタのコーポレートマークの奥にはプリクラッシュセーフティシステム用のミリ波レーダーをGグレードに標準装備。レーンキーピングアシストも標準で最新安全装備が充実しているのもサイの特徴だ。マーク下のカメラは、見通しの悪い交差点などで190度のワイドな左右視界をナビ画面に表示するワイドビューフロントモニター用

エンジン、ミッションともにHS250hと同一のため燃費性能も同じだ。エンジンルームの風景も同じで、エキゾーストがむき出しで見える

トランクスペースは標準的なサイズ。奥や左右に出っ張りがあるためスペース効率はそれほどよくない

触感と座り心地がよく、見た目の高級感もある本革シートはGにオプション。シートヒーターの快適温熱シート付きで22万5750円

リヤシートのスペースは十分で足下も結構広い。大人4人でのロングドライブも楽にこなせそうだ

シンプルかつモダンなデザインのインパネ。残念なのはポップアップ式のナビ画面だ。ポップアップ式はチープな感じがするし、デザイン的にスマートさがない。開発時には別デザインもあっが、部品の共通化でこのデザインに落ち着いたようだ

カーソルを動かすボタンは指ではさむタイプでとても使いやすい。決定ボタンの位置も適切だ

フライングバットレスのデザインもHS250hと共通。ユニークなデザインだが小物入れなどのスペースを取りにくく、サイドウオークスルーもしにくい

センターのパネルを開けるとオーディオなどの操作部がある

現行プリウスとよく似たデザインのシフトノブを採用している

メーターデザインはシンプルで視認性が高い。センターには燃費情報などを表示するマルチインフォメーションディスプレイをレイアウト

雪化粧した美しい富士山をバックするとサイのデザインがより際立つように感じる

ドライブ結果をG-BOOKセンターに送信して、エコドライブ度をポイント化するのがESPO。エコドライブで貯まったESPOポイントは、Gazooの森プロジェクトの植樹活動に還元される