社会人になると、どこからともなく保険会社の勧誘員がやってきて、加入を勧められることが多いものです。

  • 新社会人も保険に入るべき?(写真:マイナビニュース)

    新社会人も保険に入るべき?

先輩社員も入っていると聞くと、社会人なら保険に入って当たり前と思ってしまう人もいるかもしれません。しかし保険は必要だから入るもの。逆に言えば、必要なければ入らなくてもいいものです。ところが必要かどうかは人それぞれに異なるもの。社会人になったからという理由だけで保険が必要になるとは限りません。

保険に入る目的は?

まずは保険の基本的な仕組みを理解しておきましょう。ひとくちに保険といっても生命保険、医療保険、がん保険などさまざまな種類があります。どの場合にも基本的に、契約で定められた支払事由が生じた時に保険会社から保険金や給付金が支払われます。たとえば、死亡したときには死亡保険金、病気やケガで入院したときには入院給付金、手術したときには手術給付金などがあります。

一般的に、死亡や入院などがあると多額のお金が必要になりますし、それがいつ、どのような状態で起こるかは誰にもわかりません。不意に多額の出費が必要になっても、保険会社から保険金や給付金を受け取ることができれば、経済的な備えとなります。

たとえば、収入のない妻と子どもを養っている夫がいるとしましょう。この家庭では万一、夫が死亡してしまうと収入が途絶えてしまいます。遺された家族が生活し続け、子どもが進学していくためにはお金が必要です。最低でも子どもが独立するまでの生活費や教育費に充てられるだけの貯金がなければ、遺された家族が経済的に困ることになりますから、生命保険に加入し経済的な備えをするのがいいとされています。

このように、「自分に何かが起こると経済的に困る状態」であれば、保険に加入したほうがいいですし、困ることがないなら加入しなくてもいいと言えます。

新社会人が検討したい保険

  • 病気やケガに備えて……

もうひとつ、保険に入るときには、自分に何かが起こると「誰が困るか」という視点があります。この視点からざっくり分けると「家族を守る保険」と「自分を守る保険」の2つがあります。前述のケースでは家族を守るための加入ということになります。新社会人では誰も養っていない場合がほとんどですから、その場合は「自分を守る保険」を検討することになります。

自分に何かが起こって経済的に困るケースには、病気やケガで治療費や入院費が多くかかってしまうことや、働けなくなって収入が途絶えてしまうことなどがあるでしょう。このようなときの自分を守る保険には、医療保険や就業不能保険などがあります。

最近では医療技術が進み、入院の短期化や日帰り手術など医療費が少なくて済むケースも増えています。しかし、働き始めて間がない新社会人は、突発的な出費に対応できるほどの貯金ができていない場合も多いものです。

また、就業不能保険は病気やケガで働けなくなったときに給付金が支払われる保険ですが、休業中に給料支払いが途絶えたり、減ったりする可能性を考えると、休業中の生活費に対応できるほどの貯金ができていない場合が多いでしょう。

必要以上に加入する必要はありませんが、貯金で対応できない分は保険での備えを検討するのがいいでしょう。

加入する前に公的保障と会社の保障を知っておこう

保険加入を検討するなら、言われるままに加入するのではなく、まずは公的保障や会社からの保障があることを理解しておきましょう。

社会人になって健康保険証をもらったと思います。この健康保険には「高額療養費」という制度があります。これは、1カ月あたりの本人負担分に上限を設け、治療・入院・手術などでいくら医療費が高額になっても、その上限を超える部分は健康保険が支払いを肩代わりしてくれるというものです。

1カ月あたりの上限額は所得金額によって異なりますが、たとえば年収が約370万円までの人の上限額は5万7,600円とされています。新社会人の多くはこの所得水準に該当しそうですから、もしも病気やケガで医療費がかかかっても自分で負担するのは1カ月あたり5万7,600円程度だと理解しておくといいでしょう。

勤務先によっては健康保険組合があり、さらに上乗せで保障してくれるところもあります。その場合は自己負担額がさらに少なくてすみますので、会社で確認してみましょう。

また、病気やケガで休業する場合には、健康保険から「傷病手当金」を支払ってもらえる場合があります。療養のために続けて3日以上会社を休むなど、支給のための条件はありますが、給与日給の約6割が支払われます。休業しても会社から給料が支払われる場合はこの傷病手当金は受け取れませんが、休業してもこのような公的保障があることを知っておくと、自分で加入すべき保険への考え方も違ってきます。

「若いうちに加入すると保険料が安い」とよく言われますが、安くても、加入すると保険料を払い続けることになります。必要性に応じて自分で保険に入るのは大切なことですが、お金のやり場の優先順位をつけることも大切です。健康上のリスクは誰にも予測できませんが、健康上の不安度が低いうちは貯金を優先するのもいいでしょう。

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著者プロフィール: 續 恵美子

女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。