日産自動車にとって久々の全面刷新モデルとなった新型「ノート」。何もかも変わっているが、大きな違いは新しいプラットフォームを採用していることだ。クルマの土台ともいえる部分を変更したことで、ノートの走りはどう変わるのか。基礎の基礎から考えてみよう。
クルマのプラットフォームとは何か
歴代ノートはユーテリティと広さを重視したトールワゴンスタイルであったが、意外にも、新型ではダウンサイズを断行している。全長で55mm、全高で15mmも抑えて、よりコンパクトカーらしい姿とした。その狙いは、第2世代となった新しい「e-POWER」の走りの良さを視覚的に訴えることにほかならない。
しかし、走りの良さをe-POWERの進化だけで追求するのは難しい。大幅な成長を望むなら、根本から変える必要がある。その役目を担うのがプラットフォームの刷新だ。
プラットフォームとは、住宅でいえば基礎に当たる部分。クルマの底面であり、土台となる大切なものだ。
クルマはもともと、「フレーム」と呼ばれる車体にエンジンやトランスミッション、足回りなどを装備し、その上にキャビン(ボディ)を載せていた。この形式は頑丈であり、ボディの付け替えも可能であることから、今もトラックやバス、一部のSUVなどで使われている。ただ、このタイプだと、車両重量や乗り心地などの面で不利になる。そこで、軽さと高剛性を両立させるべく、フレームとボディが一体となった「モノコックボディ」が開発された。
モノコックボディがどういうものかは、卵を思い浮かべるとわかりやすい。卵の殻は丈夫な割に軽い。これは、殻全体で力を受け止めるからだ。クルマの場合は黄身が乗員、殻がボディと思えばいい。ボディ全体で入力を受け止めることで、衝撃を受け止めながらもしなやかな走りを可能とする。現代の乗用車は、ほとんどがモノコックボディを採用している。
フレームとボディが一体となっているとはいえ、プラットフォーム形式でもセダンからワゴン、SUVまで多様なボディを作り出すことは可能だ。ただ、そのためには多様性に対応できるプラットフォームの開発が重要となる。だからこそ、最近は新型車と共にプラットフォームのことが話題に上がるのだ。
最新世代のプラットフォームには、かなり大幅な設計変更にも対応できるものがある。例えば、ホンダであればコンパクトカーの「フィット」とSUVの「ヴェゼル」は同じプラットフォームだ。それでも、車幅については調整幅に制約があるため、いくつかのプラットフォームを用意し、ボディサイズによって使い分けているメーカーが多い。時代が求める先進の安全運転支援機能や電動化に対応するためにも、プラットフォームの進化は欠かせない。
土台が変われば大きく変わる!
さて、ノートに話を戻そう。新型ノートは最新のプラットフォーム「CMF-B」を採用している。このプラットフォームは、日産とルノーが共同開発するアライアンスのコンパクトカーに今後広く使われていくものだ。
「CMF」のプラットフォームはボディサイズに合わせて数タイプ存在するが、それらの車格を超え、幅広い車種で共有する部品を持たせることで、コストダウンや生産性の向上を図るのも目的のひとつとなっている。これはトヨタ自動車の「TNGA」やフォルクスワーゲンの「MQB」なども同様だ。ただし、同じプラットフォームだからといって、何から何まで同じであるとは限らない。車種により柔軟に変化させる部分もあるので、あくまで共通性が高いものと思ってもらえばいい。基本的な構造で素性が決まるので、新しいほど高性能であることに変わりはない。
次世代小型車向けのプラットフォーム「CMF-B」を採用した新型ノートは、ボディ剛性が前型に比べ30%向上している。操縦安定性を左右するステアリング剛性は、なんと90%も高まった。さらに、質感を高めるべく構造的に遮音性を高めているのも特徴のひとつだ。
プラットフォームの刷新には、莫大な費用だけでなく、生産設備の改修も必要となるため、一般的には同じものを数世代にわたって使用する。なので、刷新時の進化の幅は劇的なものがある。つまり、新型ノートの走りには期待していいということだ。
実は、CMF-Bを採用するクルマはノートが最初ではない。先に発売となったルノーのコンパクトカー「ルーテシア」も、この土台を使っているのだ。
ルーテシアは2019年に欧州のコンパクトカー市場で最も売れた実力派だ。新型に試乗してみたが、しっかりとしたボディからくる走りの良さは、日本でも人気のドイツ車コンパクトを脅かすほどだと感じた。日産が同じプラットフォームをどう料理したのか、非常に気になるところだ。