塩漬け株の有効利用法として注目
手持ちの株を売るに売れずに塩漬けにしたままの人や、相続などでもらった株を持っているがそのままにしている人など証券会社に株を放置している人も多いのではないでしょうか。そんな塩漬け株にもお金を増やす方法があるのをご存じですか? 貸株サービスといって保有している株式を証券会社に貸し出すことで貸株料を受け取ることができます。ちょうど銀行にお金を預けるのと同じような仕組みです。
貸し出した株は証券会社が貸株市場で機関投資家などに株を貸し出します。株を保有している人は、貸株サービスを利用して手持ちの株を貸し出す代わりに、貸株金利を受け取ることができるというわけです。売却するつもりがない株がある人は、証券会社に貸すだけで貸し出した期間に応じた貸株料がもらえます。
貸株料(貸株金利と呼ぶ会社もある)は取り扱い証券会社により異なります。貸株市場の動向などにより定期的に見直すところと不定期に見直すところがあります。ちなみに09年1月現在の貸株料はマネックス証券で年0.2%~1%(銘柄により異なる)となっています。
保有している株式を貸株にした場合、基本的に配当や株主優待は受けることができなくなります。しかし、貸株サービスを実施している証券会社の多くは、配当相当額を支払う形にしています。つまり本来保有している株の企業から受け取る配当がもらえない代わりに、相当額を証券会社から受け取るというわけです。
貸株をしながら優待を受ける方法も
また「優待目当てで株を長期保有している」という人はカブドットコム証券やマネックス証券が行っている株主優待を自動取得するサービスを利用すれば株を貸しつつ優待などが受けられる権利確定の時だけ自動的に貸株をいったん外してもらえます。それにより優待などもしっかりもらえつつ、それ以外の時には貸株により有効に保有株を活用することが可能です。
信用取引は貸株サービス利用ができないなどの注意点も
さらにいくつか注意点があります。その一つは信用取引などの保証金や証拠金に差し出している株式は貸株にできないという点。ただし信用取引などを行っていても証拠金に差し出していなければOKとのこと。
また貸し出し中の株式は売却できないため、急いで売りたい場合などに対応できないこともあります。貸し出した株は返却の申し出をすれば基本的にいつでも返却に応じてくれることになっていますが、思い立ってすぐに売却とはいかないので注意が必要です。
さらに証券会社の健全性にも注意を払う必要があります。証券会社に預けた顧客の資産は基本的に分別管理されることになっていますが、貸株はこの対象外。そのため証券会社が破綻した場合でも投資者保護基金による保護もされないことも理解したうえで利用することが必要です。
現在、ネット証券ではSBI証券、松井証券、カブドットコム証券、マネックス証券などがこのサービスを行っています。
このうちカブドットコム証券では、貸株サービスはスーパー証券口座のなかの一つのサービスとなっています。このスーパー証券口座は三菱東京UFJ銀行カブドットコム支店の預金口座との間で資金の移動が無料で簡単にできるようになるほか、時間外取引で投資資金が足りない場合もすぐに銀行口座からの資金移動ができるなど便利なサービスも利用できます。
貸株サービスの仕組み
※カブドットコム証券の場合 ※2008年6月30日現在の貸株料 |
預貯金金利も低く株式市場も回復の兆しが見えない中、今ある資産を有効に活用できる機会は少しでも逃したくないものです。たくさんの株式を保有したままになっている人は、少しでも金利を稼いでもらえるこのようなサービスも検討してみるといいでしょう。
執筆者紹介 : 堀内玲子氏
主な略歴 : ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。
FPとして、金融・マネー記事などの執筆・監修、セミナー講師、家計相談などを行う。
著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)などがある。