世界的な金融不安の中、日本の株式市場も大幅な下落局面を迎え、さらに激しい乱高下を繰り返しています。このような市場の中では、現物株の取引で短期的に収益を上げるのは非常に難しい状況といえます。
株価が下がっているときも収益を上げられる取引には、信用取引や先物取引などで売りから入る方法があります。ネット証券ではどちらも比較的少額の委託証拠金で始めることが可能です。最近注目を浴び始めた証券CFDも信用取引などと同様に相場が下落局面でも収益を上げられる新しい金融商品です。証券CFDとは差金決済取引のこと。FXの株式版ともいえる仕組みの商品です。
通常の株式取引の場合、1日に何度も売買する場合、売買した分だけの資金(買付余力)が必要です。たとえば100万円の買付余力がある人が、A株を100万円で買って105万円で売り、その日のうちにもう一度A株を102万円で買うといったことは禁止です。A株を買って売ったあと別の銘柄をその日のうちに買うということは証券会社によってはOKのところもありますが、基本的には1日に買える(売れる)のは手持ちの資金(買付余力)の範囲まで。買付余力がないのにそれ以上の売買をして差損益だけもらったり払ったりするのはNGとされていました。そのため資金的に余裕がない人は、1日に何度も取引することは実質的に難しい状況でした。
証券CFDは名前からもわかるように差金決済ができる取引なので、1日の売買回数の制限はナシ。同じ資金で1日に何度も取引ができます。しかも保証金の20倍~100倍の取引ができ、少ない資金でレバレッジの効いた取引が可能となります。もちろんそのぶんハイリスクとなり、レバレッジを効かせるほどリスクも大きくなります。FX取引を行ったことのある人ならわかると思いますが、仮に10万円の証拠金で100倍なら1,000万円の取引が可能ということです。この場合、1株100円の株を10万株、1,000万円買ったとしたら1円値下がりしただけで証拠金はゼロとなります。証拠金が不足すると強制的に決済されるなど不利益をこうむることもあるので、注意が必要です。
また、証券CFDは個別の株以外に日経平均などの指標、ダウなどの海外市場の指標や個別銘柄、金や原油など商品相場の指標などにも投資できます。実際の取り扱い銘柄種類や数は、証券会社によって異なります。
さらにFX取引などではおなじみのスワップ金利が証券CFDでも生じます。ただFXとは違い、証券CFDでは買いから入って(ショートポジション)翌日以降までポジションを持ち続けるとスワップ金利がもらえます(ただし証券会社によってはマイナス金利になる投資通貨もある)。逆に買いから入ってポジションを持ち続けるとスワップ金利を支払うことになります。
証券CFDの取引単位は1株~。ミニ株よりも少額から取引ができます。また、手数料は証券会社により異なりますが、たとえばひまわり証券の場合は手数料無料。ただし、買値と売値に違いがあり、その差(スプレッド)が生じます。
現在、国内でCFDを取り扱っているのはひまわり証券など3社ですが、12月よりオリックス証券をはじめとしたネット証券大手も続々参入予定です。
CFD取引を扱っている証券会社一覧
執筆者紹介 : 堀内玲子氏
主な略歴 : ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。
FPとして、金融・マネー記事などの執筆・監修、セミナー講師、家計相談などを行う。
著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)などがある。