失われる夜汽車の光景

寝台特急「なは・あかつき」の記事から始まったこの連載も早2年近く。この連載がここまで続いたのも、みなさまのあたたかい励ましがあったから。もっと、書きたいことや紹介したいことがたくさんあったのだが、タイミングが合わなかったものもあり、筆者としては、少々消化不良なところもある。

「北陸」。客車を先頭に進む「推進回送」で入ってくる

そこで、新しい2010年を迎える前に、これまでを少し振り返ってみたいと思う。この2年間、さまざまな列車がなくなった。寝台特急「なは・あかつき」「富士・はやぶさ」、寝台急行「銀河」、夜行特急「まりも」が廃止され、夜行快速「ムーンライトながら」「ムーンライトえちご」の定期運行も終了になった。

そして2010年3月には、上野から金沢まで結ぶ夜行急行「能登」と寝台特急「北陸」の定期運行も終了されるとのこと。「北陸新幹線開業までは廃止されないのでは……」と予想されていたが、不景気や高速道路1,000円問題、車両の老朽化などで、2010年3月での廃止、定期運行終了となったのだろう。日本では、夜汽車の光景はもはや消滅寸前である。

3月で廃止と報道された「能登」。ボンネット型の489系の車体がキュートである。写真は高岡駅にて(2008年5月撮影)

上野・長岡間はEF64が「北陸」を受け持つ。長岡駅は運転停車のみで下車は不可。また、進行方向が反対方向になる

長岡・金沢間はEF81が「北陸」を受け持つ。写真は回送として停車する「北陸」(2008年5月撮影)。そのためヘッドマークは見えない。まだ発車まで1時間以上ある。いったんホームを出て、隣のホームに入線する

「北陸」は上野駅13番線ホームから発車する。日本海側で大雪が降った12月20日、21日は「北陸」「能登」をはじめ、「あけぼの」「ムーンライトえちご」などが運休。雪に弱いというところも、寝台列車のデメリットか。写真は13番線の入口で運休を知らせる掲示板

「能登」の車両は、平日に限り「ホームライナー鴻巣3号」「ホームライナー古河3号」に使用される。写真は「ホームライナー古河3号」。列車に、「特急」とか「急行」というような表示があるのはなぜ?

「富士・はやぶさ」も今年2009年に廃止された。2008年春から廃止がうわさされていたために、東京駅には発車の模様を写すファンが早くからおとずれていた(2009年6月撮影)

「ムーンライトながら」の定期運行がなくなり、東京駅10番線は寂しくなった。臨時の場合、現在はこの車両が使われていないらしい

車両形式がなくなったものや、廃止寸前のものも

クモハ113形3800番。運転席がなかったところに、付けたのがこれ。コストダウンの象徴の顔だったが……

この連載で訪れたところで、すでに運行されていない車両形式や、廃止寸前のものもある。例えば2008年4月、餘部鉄橋を見に福知山駅から豊岡駅まで、クモハ113形3800番台に乗った。この3800番台は、運転台が豆腐のように平になったユニークなものだったが、すでに福知山電車区内で運行されていない。また、山陰本線を走る特急型気動車キハ181系「はまかぜ」だが、すでに2011年(平成23年)には新型車両に置き換わることが発表されている。

キハ181系で運行される特急「はまかぜ」。昭和っぽいところが魅力の気動車だ。廃止直前は国鉄色に塗り替えられて、また賑わうのでは

2009年を振り返ると

最後に、2009年の「鉄」の出来事を振り返ると……。モスクワで市電に轢かれそうになりました。雪のため、音が聞こえなかったのだ。上海では、トロリーバスがよかった。中でも世界初といわれる「充電式トロリーバス」があって、バス停に留まると、トロリーバスの車体から、パンタグラフが上がり充電する。ま、その分だけ停車時間が長いのだが。上海では皆既日食の前日、あまりにも暑く、熱中症になりかけた。翌日は大雨だったのに。

上海の充電式トロリーバス。一見なんの変哲もないようだが、留まるとパンタグラフが出てきて充電。普通のトロリーバスも、少なくなったとはいえ走っている

それにしても、神奈川近郊の廃線めぐりばっかりしていたような感じの1年でした。来年も皆さんどうぞ宜しくお願いいたします。