今回は夜の北陸線の様子をお伝えする予定だったが、東京で副都心線が開業したこともあって、その模様をお届けすることにした。しかしネタ探しに苦労する。というのも、最近担当編集者であるH嬢が冷たいからだ。「副都心線の事前取材を」と言ってみても、「それはもう他のライターさんにお願いしてるから、いらんわ。上杉さんは、自分でネタさがしてや」と、そっけない。格差問題が世の中の話題になっているが、三流ライターの私には、事前情報も教えてくれない。くすん。というわけで、地べたを這ってネタさがしなのである。
特ダネは落としません!!
あの日、私は渋谷にいた。そう、6月13日である。この日の23時を過ぎた頃、私はなんと渋谷にいたのである!! 知らない方には何のことやらわからないかもしれないが、この日は副都心線開業の1日前。半蔵門線のホームを見ると、副都心線への乗り換え口はビニールで覆われており、地下の通路には案内版や台車がこっそり見える。一方、地上はというと、鉄ちゃんたちが一番列車に乗ろうと列をつくって並んでいた。
ところがである。カメラはあるが、コンパクトフラッシュの空き容量がないということに突然気が付いた。しかし、今あるデータは取材したデータなので、消去できない。「どうする? どうする、俺!!」。ビックカメラは閉まってしまったし、渋谷駅前にそびえ立つTSUTAYAに行ってもCDやDVDはあるけれども、コンパクトフラッシュは置いていないだろう。「もう知らない! このまま家に帰ってふて寝してしまおう」と一瞬思ったが、そこは百戦練磨(?)の上杉である。思い起こせば、ビジネスクラスでパリに行っちゃったり、白タクに騙されながらニューヨークで取材したり、当局に通報されつつポーランドで電車の写真を撮ったり、自衛隊のゴムボートに乗りながら、掃海艇を撮影したり……。数々の試練をくぐりぬけて来た(ビジネスクラスは自慢)私にとって、コンパクトフラッシュの1枚や2枚探すくらい、どうってことはないハズである。
といいつつ、あてのないまま人の流れに沿うように歩いていくと、いつの間にか東急百貨店の前の「ドン・キホーテ」へ。結局ここの2階にある電化製品コーナーでコンパクトフラッシュを入手したのである。なんともあっけない幕切れである。……いや、まだ終わってない! これからだ!!
「副都心線開業日となる14日の朝には、セレモニーぐらいやるだろう」と13日の夜から待機していたが、全然その気配はない(昼頃からは、何かしらの関連セレモニーは行われるのだが)。地下鉄半蔵門線の駅で聞いても、「もう関係者を集めたセレモニーは今日(13日)の朝、終わったよ」との返答が。トホホ、関係者や名の知れた媒体の記者や編集者は呼ばれても、三流ライターは招待されないのだ。
開業を待つマニアたち(渋谷駅にて。6月13日23:40) |
しかしここで、「新宿三丁目で何かが起こる」という情報を耳にし、とりあえず新宿三丁目駅に行くことにした。もちろん、電車でね。新宿三丁目駅出口には、鉄ちゃんたちが行儀よく並んでいる。おお、なんて行儀がいいのだろう。まだ夜明けには時間があるので、ゴールデン街のほうに食べにいく。途中、「あら、お兄さんお暇~? 」と60代くらいののスカートを履いた方に声をかけられたが、遠慮しておいた。
食事を済ませ、一旦鉄ちゃんたちの列に戻ったが、階段でゴロンと寝てしまう。1時間ほど仮眠をとって、また夜明けの新宿の街を彷徨する。ビルの陰では三毛猫が寒さに震えて鳴いていた。4時半をまわると、新宿三丁目の駅に入ることができる。すでに、報道陣のカメラが。しかし、観客というか、乗客の数は思ったほど多くはない。前のほうには、早稲田大学のサークルが陣取っている。どうやら、大学近くに新駅ができるそうで、友人同士で押しかけたようだ。
新宿三丁目発渋谷行きの初電は5時10分。最初はそれに乗るつもりだったが、手書きの特別補助券をゲットする列に並んでいるうちに乗り遅れてしまった、1人で10枚ずつ駅員に書かせている人もいたりで、なかなか自分の番がまわってこなかったからである。「まあ、いいか」と思いながら満員の3番列車に乗って、渋谷まで行ったのであった。
副都心線の車内は早朝というのに大混雑(新宿三丁目→渋谷間。6月14日5:36) |