決まった住所を持たず、日本中を旅しながら生活しているカメラマンの南谷有美(なんや・ゆみ)さん。訪れた地域では人々とどのように交流し、どんな仕事をしてきたのか。それぞれの地域の魅力についても綴っていただきます。
新型コロナウィルスの蔓延により、多くの企業が営業自粛を余儀なくされました。出口の見えない経済活動の中で、事業者の方々は日々葛藤されています。そんな中、自らその幕を降ろされる方もいらっしゃいます。良いサービスや愛情を持って作られたものがなくなってしまうのは、とても悲しいことです。
今回は、私が応援している事業者さん「ココラック」と、手掛けているブランド「NANAseNANAche」(ナナセナナチェ)についてご紹介します。新型コロナウイルスの感染拡大により、事業はどのような影響を受けたのか、また今後の展望は? ココラックの佐橋俊彦さん、ブランドマネージャーの夏目芳邦さんにお話を聞きました。
新型コロナで国内卸しが完全ストップ
和柄を取り入れた商品の企画・製造を行っている、ココラック。観光庁が選定している「おみやげグランプリ」で毎年上位の成績を収めており、2020年には「和柄の猫のバンダナ」がグッズ・ノベルティ部門の準グランプリを受賞しました。
また2019年に新しく誕生したブランド「NANAseNANAche」も順調に走り出していました。
NANAseは「seven sence」(第七感)、NANAcheは「seven change」(七変化)を意味しており、新しいものを生み出して、着るだけで全く違う新しい自分に出会える、という思いが込められたブランドとのこと。
ポケットチーフやネクタイなどを展開していますが、「これ、どこのネクタイ?」と思わず聞いてしまいそうな、個性あふれる商品ばかりです。イベント出店や口コミ、SNSを中心に、その名はどんどん広まっていました。
そんな流れもあり、順調に事業を進めていたココラックでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、徐々に陰りが見られるように。外国人観光客が減少したことで、2月の売り上げは前年度の半分、3月は3分の1、さらに緊急事態宣言が発令されると国内での卸しは完全にストップしました。
現在は、ネットショップとアメリカに卸しているところのみの稼働。緊急事態宣言が解除された現在も、依然として厳しい状況が続いています。
「和柄のマスク」誕生で地域との交流も
私から見ても相当過酷な状況ですが、取材を受けてくださった佐橋さんと夏目さんはどこか楽しそう。この状況を「事業について考え直す、良い機会だった」とポジティブに捉えていました。
ウィズコロナ、アフターコロナをどのように生き抜いていくか。取り組みの1つとして紹介してくださったのは、和柄の布を使った布マスクの製作・販売です。和柄以外にも、星柄や果物柄などのガーリーなもの、迷彩柄や唐草模様など攻めたデザインのものまで、豊富な種類を取りそろえています。
現在は、ネットショップや愛知県稲沢市にある本社で購入可能。メディアへの露出もあり、現在は注文が殺到しているほか、店頭販売が地域の方とのコミュニケーションの場ともなり、「改めて人と関わることの大切さを感じた」と話されていました。
商品を通して人の心を明るく
また「NANAseNANAche」も、商品に使われている和柄の布に思いを込めて、世の中にメッセージを伝えていきたいと奮闘しています。
彼らによると、和柄の布にはそれぞれ意味があり、例えば「舞桜」という柄は、花吹雪のような桜模様で新たな門出を祝福していたり、「龍」は天に昇るイメージから「栄光」や「発展」を象徴していたりするそうです。
願いや祈り、希望……今の自分をより良い方向に連れて行ってくれる、まるでお守りのような存在の商品たち。佐橋さんは「商品を通して、人の心を明るくしていきたい」と意気込みを語られていました。
日本古来の和柄を現代に伝えている、ココラックとその新規ブランド「NANAseNANAche」。その商品に隠された想いが、1人でも多くの方に伝わることを願っています。
南谷有美(なんや・ゆみ)
カメラマン/ライター
2018年4月に認可外保育園の園長を退いてから、各地を巡る旅人に。リモートで仕事をしながら、好きな場所で好きなことをして生活しています。