決まった住所を持たず、日本中を旅しながら生活しているカメラマンの南谷有美(なんや・ゆみ)さん。訪れた地域では人々とどのように交流し、どんな仕事をしてきたのか。それぞれの地域の魅力についても綴っていただきます。
お子さんが誕生して、自分の時間がなくなってしまった……という方も多いのではないでしょうか。私が保育園で働いていたとき、子どもを預ける理由として仕事に次いで多かったのは、お母さんのリフレッシュのためでした。
美容院や映画鑑賞、ネイルや習い事などその内容はさまざまでしたが、共通するのは「子どもと一緒にはできない」ということ。中には子どもと一緒というだけで入店を断られてしまったという方もいらっしゃって、社会的な配慮や支援がまだまだ行き届いていない分野だと感じています。
今回は、子育て中のお母さん方に学びと憩いの場所を提供している、ちょっと変わった英会話スクールをご紹介します。
子連れOKクラスができたワケ
愛知県長久手市と東浦町に店舗を構える「サチフル英会話クラブ」。お子さんと一緒に通える英会話スクールとして、話題を集めています。
建築デザイナーが作った、天然素材のこだわりの建物。長久手本校の中に入ると、創始者の松岡幸江さんが笑顔で迎えてくれました。
松岡さんが英会話スクールを始めたのは、5年前のこと。初めは子どものみを対象とした一般的な英会話スクールと変わらない形で運営されていました。
しかし「これやりたい」「これやってほしい」というお客さまの想いに応えていくうちに、英検クラスが増え、大人クラスが増え、子連れOKの大人クラスが増え……現在の形にたどり着いたといいます。
その中でも、近年問い合わせが多いという親子の英会話レッスン。どんなことが行われているのか、特別にのぞかせてもらいました。
子どもと一緒に学べる人気のレッスンをのぞいてみた
サチフル英会話には、お子さんもお母さんもワクワクしてしまうような仕掛けがいっぱい! 人気の2つのレッスンを、ご紹介します。
まず、0~3歳が対象のベビークラス。音楽や映像を取り入れ、五感を通して英語を学ぶスタイルをとっています。子どもたちは、保護者の方と一緒に安心して楽しみながらレッスンを受けていました。
そして、初・中級専門の大人クラス。英会話の最初の1歩に最適なレッスンとカリキュラムになっていて、火曜・木曜の第1レッスンはなんと0~3歳のお子さまの同伴が可能です。産休・育休中に、自分のスキルアップのために英語力を高めたいと通う方が増えているそうです。
レッスンの前後は、スクール内でゆったりと過ごす親子の姿が多くみられました。中にはレッスンの開始時間より少し早めに来て、ごはんを食べている子も。
英会話スクールとしてみると少しびっくりしてしまいますが、子どもとお母さんにとっての憩いの場所ともなっているようです。
幸せを届ける存在に
最後に、サチフル英会話クラブの創始者である松岡さんに今後のビジョンをお伺いしたところ、「1人ひとりの可能性や人間性を広げていきたい」とおっしゃっていました。
昨今、成績や資格が重視される風潮にありますが、言葉はあくまでもツール。それぞれの人生でどう使いこなしていくかなど、学びの先にあるものが大事なのだそうです。
また、家や学校、職場以外に、自分らしくいられる場所を提供することも役割の1つだとおっしゃっていました。
その取り組みの1つ、月2回のペースで開催している「カードゲーム会」というイベントは、何とテレビで取り上げられたことも。参加される方は小学生からシニアまで、みなさん笑顔で帰られるそうです。
この活動、実は不登校や引きこもり等を経験した方へのサポートや、就労支援にもつながっています。英会話もカードゲームも1人では楽しめません。人と人との心をつなぐ場所ともなっています。
サチフルには、2つの意味があります。1つは、幸せが降ってくる「幸降る」。もう1つは、 幸せがいっぱい「幸full」。
これからもたくさんの方々に、幸せを届けていく存在となっていきそうです。
南谷有美(なんや・ゆみ)
カメラマン/ライター
2018年4月に認可外保育園の園長を退いてから、各地を巡る旅人に。リモートで仕事をしながら、好きな場所で好きなことをして生活しています。