お笑いコンビ「ジョイマン」の高木晋哉が、ちょっぴりほろ苦く、そしてどこかほっこりする文章で綴るこの連載。読者のお悩みにジョイマン高木ならではの視点で答えてもらいます。

今回のお悩み

去年の4月に就職で上京してきたのですが、仕事はずっとリモートワークで同僚との交流も少なく、東京に友達がほとんどいません。高木さんは友達たくさんいますか?(20代女性)

  • 絵:ジョイマン高木

はじめまして。ジョイマンの高木晋哉です。

僕は友達が少ないです。

何でしょう、この「友達が少ない」と言う時のやるせなさ。たまに芸能人などでも、友達が全然いないということを堂々と言っている人を見かけますが、僕はまだその境地に達することが出来ていません。やっぱちょっと恥ずかしい。

本当に友達が少ない人は、「友達が少ない」とは率先して言わないんじゃないかなあと思ってしまいます。人間は本当のことを言う時には口が重くなるものです。本当は友達がいるから「友達が少ない」と気軽に言えるんじゃないかかなあ? と勘ぐってしまいます。

ただ、僕も40才。たしかに40才のおじさんになると、友達が少ないことでそこまで深く悩むことはないですし、友達作らなきゃと意気込むことも流石にないのですが、やはり世間一般的には、友達が多い方が社会的に洗練された魅力ある人間に映るように感じます。

そこが何だか恥ずかしい。あと、自分達のネタで「ヒウィゴーカモン♪」と明るくステップを踏んでいるのにも関わらず、友達が少ないことも何だか恥ずかしいし、そして40才にもなってそういう周りの目を少し気にしている自分も恥ずかしい。“恥ずかしい”の負の連鎖です。

申し訳ありません。自分の友達事情を書き連ね過ぎてしまいました。20代女性さんは友達がほとんどいないことを悩んでいらっしゃるようですが、なるほど、リモートワーク中心のお仕事となってくると、そういうことも起こるのですね。大学などでも、せっかく入学したのに授業がリモートだから友達が作りづらいなんてことがあるようですし。希望を胸に新しい環境に飛び込んだのに友達が出来ない状況ということは、“恥ずかしさ”というよりは“寂しさ”を感じているのでしょうか。

僕が思うのは、今、コロナ禍で皆が同じ状況の中、もちろん皆が寂しいと感じているだろうということです。20代女性さんの状況もそうですし、街を歩けば目の前に広がる、マスクで口を塞がれた群衆達。どこもかしこも新しい出会いは明らかに少なくなっていると思います。

だからこそ、少ない日常会話のチャンスを、いつも以上に大切にしてみてはどうでしょうか。毎日のように通っているのに、顔を合わせるだけで必要以上の会話をしなかったコンビニの店員さんに「いつもありがとう」とお礼を言ってみる。いつも道端ですれ違うあばあちゃんに「おはようございます」と言ってみる。

そういった、普段から口にしても良かったのに、何となく面倒で口にしてこなかった言葉達。今こそ、その小さな言葉達は、20代女性さんの気持ちを明るくさせる大きな力を持っているように思います。皆が少なからず寂しいと感じている状況。人と人との距離を取らないといけない今の状況だからこそ、ふと言葉をかけられる側も嬉しいと思うのですが、いかがでしょうか。もちろんソーシャルディスタンスは取りつつの話ではありますが。

相手は人間でなくても良いかもしれません。道端の猫に「調子はどう? 」と声をかけてみる。部屋の観葉植物に「今日はイケメンだね」と声をかけてみる。アレクサに「良い枕ないかなあ」と些細な相談をしてみる。アレクサは少し喋れますが、観葉植物のように言葉を持たぬ存在であっても、20代女性さんが言葉を発する行為自体で、少し寂しさは緩和されるかもしれません。子供の頃に友達と遊べない日はボールを壁に当てて何とか楽しみを創り出していたイメージです。

現在のコロナ禍の中、皆で泣く泣く作り出したルールを守りつつ、あとは僕達が知恵を絞って、日々をなるべく幸せにしようと今は努力するしかないように思います。これから、小さな会話から、些細な言葉から、20代女性さんに素敵な御縁が生まれることをジョイマン高木は祈っています。人間か動物か植物か、はたまたマシーンか、どんな友達が出来るかは分かりませんが。

筆者プロフィール: 高木晋哉

お笑い芸人。早稲田大学を中退後、2003年に相方の池谷と「ジョイマン」を結成。吉本興業所属。趣味は詩を書くことで、自身のTwitterでの詩的なツイートが話題となっている。