「いくら自分のキャリアプランを考えたところで、結局あまり意味がないんです」と、女性の同僚や、部下などから半分グチのように言われることがある。こういう「ホンネ」の話はなかなか聞くことができないので、私は思わず私は食いついてしまう。
「仕事と育児」はできても、「キャリアと育児」の両立は難しい
「恋愛」「結婚」「出産」「育児」…など、自分の将来の転職や昇進などを見据えて、どんなに長期的な視点でキャリアプランを考えてみても、結局は現実に起こる出来事にどうしても振り回されてしまうという。
そういえば、かつての部下が、産休を取得して出産した後、すぐに職場復帰するはずだったが、待機児童の問題で子どもを預けることができず、大幅に当初の職場復帰の予定からズレこんでしまい本人が悩んでいたこともあった。
もちろん彼女たちの悩みを私がすぐに解決することができるわけもない。相談にのるというよりは、グチを聞くくらいのことしか私にはできない。一般論としては、「男性がもっと育児参加できる制度になれば…」「子育てにやさしい社会になれば…」などいくらでも言えるのだが、実際に彼女たちはそんな返事を私に求めているわけではないことはわかっている。もっと個別的、具体的に困っているから、わざわざグチる(相談する)しているのだ。
「仕事と育児」の両立はできたとしても、「キャリアと育児」の両立は難しい。そんな時、正直、女性のキャリアプランというのは本当に大変だなと思う。
もっとも、だからといって全く自身のキャリアプランを持たないというのも、必ずしも良いことではない。現実に起こる出来事に合わせて「対処する」という受け身の姿勢だけではいけない。何より「今、現在、私はこのようにしたいと思っている」という「思うこと」が大切なことになる。
もちろん、容赦なく現実に起こることに対しては、自分の思う通りにはいかないことも多い。その時々の判断で、自分の考えていたキャリアプランよりも、現実の方を優先せざるをえないことになるだろう。ただ、仮にそうだとしても「今、現在、私はこのようにしたいと思っている(思っていた)」というイメージがある場合と、全くない場合とでは明らかにその先のプランが変わってくる。
キャリアプランを「旅」と思って考えてみると?
全く初めての国を旅で訪れたとする。事前に地図やガイドブックなどで、だいたいの土地勘やその国の情報を頭にインプットしておいてから現地に旅だった人、全く事前に現地のことを自分では調べずにその国を訪れた人。仮に訪問した国で、何か予想外の「現実」が起こり、地図もガイドブックも役に立たない状況になった時に、どちらの人がよりうまく(前向きに)その「現実」を乗り越えて、少しでも自分の目指すゴールにたどり着くことができるか? その答えは明白だ。
とかく「結婚」「出産」「育児」の話になると、男性としてはどうしても自分では経験したことのない世界の話なので、アドバイスも抽象的になってしまう。そのこと自体はしょうがないと私は思っている。ならばと思って、よくこの「旅」の話をする。
女性であれ男性であれ、「キャリア」の本質は、「旅先」に到着する前に、どれだけ「現地」を具体的にイメージすることができるか。そのためにどのような努力を事前にすれば良いのか。仮に予期せぬ「出来事」が起こってしまった時には、これまで積み重ねてきた準備(イメージ)をいかに利用するか。
たとえ今は「キャリアプランには意味がない」と思ったとしても、いつか「意味があった」と思う時が、必ず来るのではないかと思うのです。
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<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。